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 悪鬼と悪童のイタズラ


 湊本エルマは、そろそろリダウト王国に到達した頃だろうか……。


 妖域にて、ルコシャルの不審な動きを耳にしたカラルテは、【伝心】を使用して、エルマに警告という意味の連絡を飛ばしていた。万が一のことを考えて、出立の時にやり方を伝えておいて正解だったかも知れない。


「──唐突に申し訳ありません、エルマ殿。一つ、お伝えしたいことがあります」

『カラルテ? どうかしたのか?』

「あの時、無道山本殿でエルマ殿が出会った、ルコシャルという人物を覚えていらっしゃいますか?」

『…………あー』

「実はそのルコシャルが、どういう訳か人域を訪れている様子なのです」

『えーっと……理由とか、聞いていたりします?』

「何故、急に敬語を……? いえ、理由は不明です。故にこそ、くれぐれもご注意下さい。彼女は、妖族の中でも特に素行に問題があるとされる人物です。放っておいたら何をしでかすか分かりませんから……」

「なーるほど?」


 なんだろう……先程から、受け答え方が少しおかしいような……。


 そんなことを考えながら、彼の方から聞こえてくる声に耳を傾けていると……。


『────オイオイ、英雄。【伝心】受けている時は、心の中で言葉を念じるに留めておいた方がいいぜ? そうしねぇと、会話の内容が周りに筒抜けになっちまうからよ』

「………………え?」


 今、堂々と割り込んできた声に、思わず衝撃が走る。


 この声色に、エルマに対して馴れ馴れしい口調……これは、一体どういうことだ……?


『ん? つまり……今の話、お前も聞こえていたりする?』

『今のは、ちょちょいと妖力を弄って「拡散式」にしといた。これで、向こうの声もよぉく聞こえンぜ』

『そんなことも出来るのか……』

『当然、妖術に精通したモンじゃねぇと弄ることは出来ねぇし、妖力を持つモンじゃねぇと声を拾うことは出来ねぇけどな』

「────既に『居る』っ!!?」


 気付けば……喉の奥から弾け出すように、そう叫び声を上げていた。


 すると、声の向こう側から、問題の人物がウンザリした様子で注意を投げ掛けてくる。


『うっっせぇな、天狗。いきなり大声出すンじゃねぇよ』

「ぅ……こ、これは、失礼致しました。し、しかし……何故、ルコシャル殿が、エルマ殿と一緒に居るのでございますか……?」

『あン? そりゃお前────英雄と「愛の逃避行」してたに決まってンだろ』

「────はぁッ!!?」


 ど、どどどどどどどういうこと!?


 あっけらかんと放たれた衝撃的な発言に、再び頭の中がグチャグチャに掻き乱される。


 湊本エルマは、英雄だ。


 そんな偉大な肩書きを持つ殿方に、言い寄る女が多いのは、まだ納得出来る。ただ、最初は険悪的なやり取りをしていたと聞いたのに……どうして、その二人が……!? こんな短い期間の中で、一体、何がどうなって、そんな事態にまで発展したのだ……!?


 こんなに混乱するのは、私がそういった情事に詳しくないから、ではない……断じて、そういう訳ではない!


『いやいや、嘘嘘。なんだ、愛の逃避行って? それと、もう少しそっちのボリューム落として貰えるか? ちょいと頭に響く』

「も、申し訳ありませんっ、エルマ殿……! 少し、動揺してしまって……! そ、そうでございますよねっ。そもそも、エルマ殿はイブキ殿と出掛けられたのですから、ルコシャル殿とはそちらで偶々出会ったと……それだけでございますよねっ」


 そうだ、何を動揺しているのだ、私は……。


 相手は『悪童』と揶揄されるルコシャル……彼女が、こちらを動揺させる為に堂々と嘘を吐くなんて、落ち着いて考えれば分かり得ることじゃないか。


 それに、エルマと共に出掛けたのはイブキの方だ。


 仮に『愛の逃避行』とやらをやる可能性があるのは、その二人の方であって────。


『──ぁんっ…………え、英雄さん……そんなとこ弄っちゃ……んっ、ダ、ダメだよぉ……』


 直後、頭の上にピシャァァァンッと、鋭い稲妻が叩き落とされたような衝撃を覚える。


「………………エルマドノ? 我々ノ目カラ遠ク離レタ地デ、本当ニ何ヲヤッテオラレルノデゴザイマスカ?」

『──完全に誤解です』

『ンなるほど、コホンッ…………やだっ、英雄、目が怖いっ……いやっ、やめっ……やぁ……っ!』

『おーっ。押し倒される感じで攻めますかぁ。ルコシャルも、なかなかの悪女だねぇ(ヒソヒソ)』

『てめぇも大概だろ。まるで苛められ慣れているみたいな口調だったぜ(ヒソヒソ)』

『むっふっふっ。ワレがその気になれば、まだまだこんなモンじゃないよぉ? なんて言ったってこれでもワレ、鬼だからさぁ(ヒソヒソ)』

『オイオイ、そりゃ宣戦布告か? ナメんなよ、悪鬼。英雄一人落とすなんざ屁でもねぇっての、見てろよ(ヒソヒソ)』

『──いーい加減にしろ、お前ら』

『──ぁふうッ!?』

『──いでぇッ!?』


 最後、ゴチンッと鈍い音が二発響き……悪鬼と悪童の艶かしい囁きは静まり返った。


 それから、私の中で莫大に膨れ上がった妄想という名の誤解が解けるまで、およそ一時間弱の時間が掛かり……本当に、彼には迷惑を掛けてしまった。


 もう少し冷静に話をしていれば……。


 今現在、彼らが陥っている『混沌とした事態』に対して、少しは協力が出来たかも知れないのに……。










この作品に目を通して頂き、ありがとうございます!


もしも、少しでもこの作品が「面白かった」「続きが気になる」……。


または、こんなイタズラなら仕掛けられてもいいかも、と思った想像力豊かな紳士の皆さんは、


ブックマークや、広告下の『☆☆☆☆☆』をタップもしくはクリックして、続話をお待ちください!


やってませんよ? 何もやってませんからね?


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