《 period 2 NEXT 》 釜の中で煮えたぎる
とても短いですが、period1の最終話であり、period2の予告みたいな内容になります。
────『ソレ』は、歩き廻る。
人が行き交う賑やかな街道のど真ん中を……修道者が祈りを捧げる教会の中を……動物たちが生息する大自然の中を……残酷な戦争が繰り広げられる血みどろな戦場の中を……。
しかし、人々は誰も『ソレ』を気に掛けない。
まるで気付いてすらいないかのように、『ソレ』の往来を、見向きすらもしない。
それでも、『ソレ』は歩き続ける。
世界の流れに身を任せるように……世界の形状に同調するかのように。
そして。
世界の何処かに『歪み』が起こった時……。
『ソレ』は、衝動にかられ、狂ったかのように────行動を起こし始めるのだ。
それが何の為か、それが誰の為か……その事実は、『ソレ』ですら認識していない。
ただ、仮に人が何らかの要因で、『ソレ』を目撃してしまった場合────その者は、正気を保つことは出来ないだろう。
─※─※─※─※─※─※─※─※─※─
妖族の代闘者と魔族の代闘者。
両者の代理戦争勃発から、二週間後。
日の光が一切差し込まない薄汚れた牢獄の中に、頭から角の生えた鬼娘が、鎖で四肢を石壁にくくりつけられている。
既に酷く衰弱した様子の彼女は、目の前に立つ男に対して、殺意の込めた瞳を向けていた。
「──ハーッ……ハーッ…………これ、が……こんなのがッ、お前たちのやり方なのかッ────『代闘者』……ッ!」
すると、灯りを背後に、顔面が影で真っ黒に染まった男は、口角を上げて白い歯を見せ付けるようにニヤける。
『代闘者』……そう呼ばれた男の軽い口調は、鬼娘から見れば『嫌悪感』と、そして『狂気』のそれに満ちていた。
「あんま偉そうにイキるなって。簡単に死にたくなかったら、この俺にちゃんと媚びへつらっていた方がいいぜ、『イブキちゃん』よ?」
「誰が……ッ」
鬼娘が鋭い目付きで男を睨み上げるも、そいつは、彼女の髪を鷲掴みにして無理矢理引っ張り上げる。
「うぜぇなぁ。この俺の言うことが聞けねぇってのか?」
「ぁぐ……ッ!」
「誰も助けになんか来ねぇよ、お前の大好きな『妖族』も、お前らを守る『妖族の代闘者』も。ここは、全ての種族が忌み嫌う混沌の地────『人域』なんだからなぁ?」
それは、如何なる思想であろうと、如何なる強力な存在であろうと……横暴に、乱雑に、全てを呑み込む、混沌の象徴。
六種族の中でも、最も多くの思想が交錯する領域であり、まさに『混沌の釜』。
────それこそ、『人域』と呼ばれる地だ。
そこに足を踏み入れたが最後、あらゆる者を狂気と混沌の渦に引き込むだろう。
例え、それが『鬼』であっても……そして、『人族の代闘者』であったとしても。
PERIOD1────END
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