《 Period 1 - 3 》 前世・『物の怪』の始まり編
生まれは、一般的な家庭。
一般的に見て平凡な暮らしの中で、普通に学校に通って、両手で数えられる位の友達が居て……幸せだとか、不幸だとか、そんなことを考える必要もない位に、平凡な日々を過ごしていた。
そんなある日、『戦争』が起こった。
全世界、全人類を巻き込んだ、凄惨な『世界大戦』。多くの者が次々と命を落とし、多くの都市や町村が戦火で焼け野原と化していく。それでも、一向に止む気配すら見せなかった世界大戦は、次第に……『世界滅亡の予兆』だとも比喩されるようになっていた。
俺も、その戦火の最中に居た。
命からがら宛もなく逃げ続け、家族や友達と離れ離れになりながらも、必死に生き続けた。しかし、それでも周りに居た人たちは、次々に死んでいく。兵士でもない俺たち非力な一般民たちは、戦争の猛威に蹂躙されるしかなかった。次に殺されるのは誰なのか……そうして、誰もが絶望の淵に立たされた時……。
────俺は、逃げるのを辞めた。
一度、自力で死地を乗り越えてからは……暇があればがむしゃらに身体を鍛え、幾多の戦場に身を投じて精神力や忍耐力を磨き続けた。ただ、生き残る為に……これ以上、誰も悲しませない為に……。
やがて、戦地の何処かにたった一人で戦いを鎮めている者かが居る、という噂が立ち始めた頃。
俺は、戦場に取り残された母親を助けに向かった。
その頃には、俺の武力に敵う兵士は誰もおらず、俺はいつものように、自身の力のみで戦場を制圧し、大切な肉親を救い出すことに成功。そして、ようやく母親と再会した時、彼女は俺のことをこう罵ったのだ。
「ち、近寄らないでッ!! こんなッ、『物の怪』みたいなヤツ────私の子供じゃないッ!!」
一体、どれだけの恐怖に苛まれて、そんな罵声を浴びせかけてきたのか……今となっては定かではない。
ただ、少なくとも……。
その世界において、俺のことを初めて『物の怪』と蔑んだのは────俺の、実の母親だったのである。
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「────ッ!!」
脳裏にこびり付いた記憶を消し去るように……目の前に鎮座する巨岩を殴り付け……。
────それを、粉砕。
辺りに飛び散った小さな破片を見渡してから、しっかりと握られた自身の拳に視線を向ける。
かつての自分だったら……こんな頑丈な岩を全力で殴り付けたら、逆に自分の手が、骨も、肉も、皮も、ボロボロになっていたことだろう。しかし、今はそんな気配は一切見受けられない、無傷そのものだ。
改めて【具念】の利便性を再確認し、鍛練を続けようとすると……俺の背後に立っていたイブキが、全身をプルプルと震わせながら訪ねてきた。
「ひぇぇ、痛そうぉ……それも鍛練なのぉ、英雄さん?」
「最初は普通にサンドバッグを使っていたんだけど、脆過ぎたんでこういうのを使うようになった」
「さんどばっぐ、ってのが何なのかは分かんないけどぉ……だからって岩を殴りますかねぇ、普通ぅ……?」
「この辺は殴りやすい大きさの岩が沢山あって助かる」
「辞めたげてよぉっ! 彼らも殴り砕かれる為に存在しているんじゃないと思うよぉっ! もっと岩の権利を労ってあげてよぉっ!」
「お前は岩の何を知っているんですか……?」
訳の分からないことを喚き始めるイブキを傍目に、俺は日課にしている鍛練を再開。
腕立て伏せ、五十回。腹筋、五十回。スクワット、五十回。それらを繰り返し、四セット。休憩を挟みつつ、巨岩をダンベル代わりに使ったり、大木を登り降りして全身を使ったトレーニング。
そうして鍛え上げた力は全て明確に【蓄積】されていくのだから、鍛えがいはあるものだ。
「英雄さんってさぁ、何で身体を鍛えているの?」
「強くなる必要があった、その時はな。今は……うん、ただの日課だ」
「ふぅ~ん……」
そう呟くイブキは不思議そうな表情で、先程からずっと鍛練中の俺のことを、ジッと見つめていた。
別に、「見るな」などと言うつもりはないが……彼女が、こうして俺の行動に興味を示すのは珍しいような気がする。
少しだけイブキの様子が気になり、鍛練に集中し切れずにいると……彼女の方から、このような提案が投げ掛けられた。
「ねぇ、英雄さん────一緒に、里へ遊びに行かない?」
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