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狩に出かけよう

「タルミさま~、エルルもくまさんとお話したいの~」


 指定した場所を自然の洞窟風に変更することができるというオプションを500DPで購入し、ダンジョンの入り口からブラッディベアのいる部屋までを改造していく。

 階段も削除し、なだらかなスロープへと付け替える。

 ブラッディベアにそこを巣みたいにするように話していたらエルルが割って入ってきた。


「今のうちの財政事情を知ってるか? 残りDPは2865なんだぞ。配下のモンスターと話ができるスキルは3000DPなんだ。残念だが無理だ」

「ぶ~」


 そんなにほっぺを膨らませるなよ。あ~、はいはい、なんとか考えてみるよ。

 気分はお父さん? いやいや、断じて違う。頼れるお兄さんってとこかな。

  



「主様、そこです。あ、危ない! 後ろ! 今度は右です!」


 頭の上に乗ったハムマルの声を耳にしつつ足元の攻撃を避け、ナイフを穂先に取り付けた手製の槍で牽制していく。


「お見事でございます」


 どうにか1匹に傷を負わせ、その場を離れて大きな岩の上へとよじ登った。


「さすがにここまでは追ってこれないよな」


 大岩の下では体長1メートルくらいの大きさのトカゲが四匹、俺の方を睨み威嚇している。

 砂と同じような色をしており、体の重心は低く、当たるとたぶん大怪我を負ってしまうだろう凶暴そうな鉤爪が見てとれる。

 そう、以前テレビでみたコモドオオトカゲのような感じだ。


「これじゃぁ、身動きも取れないし、ブラッディベアを呼んできてくれないか」


 俺の言葉に頭から飛び降りたハムマルがトカゲ、いやサンドリザードの合間を縫ってあの小ささからは信じられないような速さで駆けていく。


 ここは森を抜け、少し行ったところにある荒地だ。

 ブラッディベアに修理した馬車の荷車部分を引かせ、俺とハムマル、そしてゴブリン二匹を連れてきていた。

 目的はこいつ、サンドリザードだ。

 当初はブラッディベアにやらせる予定だったが、近づいただけでサンドリザードが逃げ出すため、仕方なく俺が囮役をやっている。


 おっ、来たか。

 砂煙をあげてブラッディベアがこっちに来るが、サンドリザードは俺を威嚇するのに夢中なのか気付いていない。


「主様、お待たせいたしました。ベア、できるだけ殺さず、血も流させないように倒しなさい。わかりましたね」

「わかったガウ」


 体長2.5メートルの巨体から繰り出す殴りつけ攻撃はサンドリザードを吹き飛ばし、岩に叩きつける。

 別のサンドリザードからの爪による引っ掻きは剛毛に覆われた筋肉の鎧には効かず、ベアの体重を乗せた前足による押しつぶしにあえなく戦闘不能となる。

 一匹は戦意を喪失したらしく逃げていくが、俺に手傷を負わされたやつはベアの隙をつき、回り込んで後ろ足に噛み付く。


「邪魔ガウよ」


 そのまま力任せに振りほどき、ベアは爪で思いっきり引っ掻いた。


 あ~あ、あれは駄目だな。

 体は半分に千切れかけてるし、間違いなく死んでるよな。

 おっ、やっと来たか。


 ブラッディベアに大分遅れてやってきた荷車を引くゴブリン二匹に気絶しているサンドリザード二匹を縛らせ、荷車に乗せさせる。もちろんあの凶悪そうな口も縛らせることを忘れはしない。

 俺は監督だ、急に動き出すかもしれないやつに近付く勇気は当然ない。


 


「お帰りなさいませ。ご無事で何よりですわ」

「みんな、おかえり~」


 ダンジョン入ってすぐの中部屋にベアの引いてきた荷車を止めてサンドリザードを降ろしているときに、奥からサシャとエルルが走ってきて出迎えてくれた。


「大成功だったみたいですわね」

「あぁ、誰も怪我をすることなく無事帰ってくることができた。それにほら」


 動けないようにぐるぐる巻きに縛られたサンドリザード二匹を顎で指し示す。


「おっきなとかげ~」

「エルルの好きなくまさんが大活躍だったんたぞ」


「くまさんすご~い」

「二人のお父さんは猟師だったんだよな。サシャはこいつをさばいて、皮をなめすことってできる?」

「硬そうですけど解体するのはたぶんできると思いますが、なめすのは私にはできませんわ。いつも皮はそのまま買い取ってもらってましたから」


 ちょっと予定が狂ってくるな。町までは遠いしどうしよっか。


「とりあえず、エルルは部屋に戻っていてくれ。これからこいつらの息の根を止めることになるから」

「どうしてですか?」

「どうして~」


 小さな子供にはこういう残酷なものは見せないほうがいいかと思ったが、この世界ではそんな心配は無用だったみたいだ。

 聞いたところによると、サシャだけではなく、エルルも父親が狩ってきた獲物の処理を手伝っていたらしい。


 どういうことだ?

 サンドリザードの血抜きをおこない、ダンジョンの地面に流れる血を全部吸わせたはずなのに、どうして入手したのは235DPと239DPなんだ?


「人間の場合はレベル×100DPが手に入りますが、モンスターはその半分ということです。余すことなく、全ての血がダンジョンに注がれますと250DPが入ったはずですが、少し残ったのでしょう。人間の場合は死体がダンジョンに吸収されますので全てがポイントになりますが、モンスターの場合は死体が吸収されないため全ての血を回収するのは無理なようです」


 俺の呟きにハムマルが答える。


「そういうわけか、半分というのは分かったが鶏が1DPだったのはどういうことだ? 鶏がレベル1だったとしても約50DPが入らないとおかしいじゃないか」

「それについてはわたくしもはっきりとはお答えできかねますが、家畜というのが原因なのではないでしょうか」


 そっか、だとすると豚とか牛とかも貰えるポイントは極端に少ないかもしれないな。



 その日のメニューはトカゲの肉を焼いたものとパンだった。

 肉には塩を少しふり、サシャが森で採ってきたというハーブらしきもの刻んだもので下味をつけ、焼いてある。

 シンプルだが、少し噛み応えがある鶏肉のような感じで悪くはない。

 そしてパンにそこから出た肉汁をつけて食べる。硬いパンも柔らかくなり、味が染みていい感じだった。


 ちなみに大量にあるトカゲ肉は一部はスープに、残りは干し肉になる予定らしい。

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