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楽しい夕食

 本日の夕食はサシャが作ってくれた鶏肉のスープとパンだった。

 スープには町で買ってきた玉ねぎ、人参、それに鶏肉が入っており、塩で味付けられただけのシンプルなものだ。

 それにライ麦で作られた黒パンを浸して食べる。

 黒パンは白パンに比べて値段も安く、日持ちもするのだが、硬くなってしまうため水やスープに浸して食べるのが普通だ。


「このパンって随分固いんだな」

「そうですか? これはまだ作られたばかりですから柔らかいですわよ。1ヶ月もするとカチカチで石みたいになるんですから。そうなる前に小さく切っておかないといけませんね」

「久しぶりのおねえちゃんのご飯、えへへへ~」

「わたくしは硬くなったパンでも大丈夫でございます」


 三人はスープに浸して食べていたが、ハムマルは小さくちぎってもらって黒パンをそのまま頬張っている。

 まぁ、当然だわな。


「他には鶏肉を使ってどんな料理ができるんだ?」

「そうですわね、普通に炙り焼きに、そうそう、あと鶏の中に詰め物をして蒸したりするのもできますわよ」


 手間のかかる料理ということもあり、ちょっと自慢気にサシャが答える。

 

「鶏肉を揚げたりする料理はないのか?」

「う~ん、聞いたことありませんわ」


 唐揚げってないのかな。名前からして中国っぽいけど、ヨーロッパ風なファンタジーな世界ではどうなんだろ。

 みんなと同じ食事をと思って今回はDPでご飯を買っていなかったけど、注文してみるか。

 ……どんぴしゃだ!

 今日出てきたご飯は洋風幕の内弁当だ。

 ミニハンバーグ、エビフライ、唐揚げ、他に野菜が少し、それに白いご飯に梅干が乗っている。

 二人の前にそれを出すと目を見開いて驚いている。

 

「いいにお~い」

「タルミ様、それは?」

 

「これは俺の生まれたところの料理だ。ダンジョンマスターの俺が食事に困らないようにだと思うんだが、一日に三食だけDPを使って手に入れることができる」

「いいな、いいな~、エルルもほしい~」

「失礼ですわよ、エルル。わきまえなさい」


「いや、いいんだ。包丁を持ってきてくれ。エルルとサシャ二人で食べられるよう半分に切るとしよう」

「は、はいー」


 サシャは上ずった声で返事をして厨房にすっ飛んで行った。


「それで、これが唐揚げだ。鶏肉を揚げて作っている」

「おいし~、ほっぺたがおちちゃうよ~」

「とても美味しいですわ、こんな鶏料理は初めてです。揚げるとはどういう料理法なんですか?」


 揚げものってないのかな、それとも一般的じゃないだけなんだろうか。


「熱した油の中に衣をつけた肉を入れ加熱することをいうんだ」

「油をたくさん使うのですか……するとこれは高級料理なんですね」


「まぁ、そうかもしれん」

「おねえちゃん、食べないのならエルルがもらっちゃうよ」

「こらっ、いくらエルルでも譲ってあげないわよ」


 二人の前から一人分の幕の内弁当はあっというまに消えてしまった。

 油か、今度町に行ったら探してみるとするか。


「それよりタルミ様、先ほどの血抜きの件ですが、どういった意味があったか教えて欲しいですわ」

「あぁ、あれか。考えていたよりよかったというべきか、そうでなかったというべきか」

「煮え切らないお言葉ですね、主様」


 鶏の血がダンジョンに染み込んだことにより、予想通りDP(ダンジョンポイント)はプラスされていた。2羽でわずか1DPのみだったが。

 それでも鶏が2羽で銀貨1枚で購入できており、100DPで銀貨100枚と交換していたことから収支がトントンなのは間違いない。

 

 もしかして、これを繰り返せば無限に鶏肉が手に入るんじゃねとも思ったけど、俺が買い占めをすれば鶏の相場もあがるから、実際のところそうもうまくいかないんだろうけどな。

 誤算だったのは、鶏肉だよ。

 盗賊の死体はダンジョンに吸収されたのに、鶏の死体、つまり鶏肉は一向にダンジョンに吸収される気配がない。

 これだと、鶏肉の処分に困ってしまうじゃないか。

 町に売りに行けばいいのかもしれないが、こうも距離が離れていたら痛んでしまうしなぁ。


 俺はそれらのことを皆に話した。


 


 夕食の後、町で購入した地図を前に自室で唸っていた。

 ここを二乗してこっちの二乗したものと足したのがここの二乗だろ。

 昔の算数だったか数学だったかの知識をどうにか引っ張り出してきて、この大雑把な地図から距離を計算しようとしていた。

 いや、そもそもの計算の元になる距離からして怪しいな。

 時速4キロで歩いたとして計算してみたけど、時計のように時間を計るものがないから大体1時間くらいとかって言ってるだけだしなぁ。

 ダンジョンを作るにあたって、通路の距離をどのくらいにすればいいのか、その距離だといくらDPが必要なのかを知りたかったんだが、なんともうまくいかん。


「もっと正確な地図ってないのかよ」

「DPで交換できるリストの中には無いようでございます」



 ブー ブー ブー!


 マスタールームから突然ブザーの音が鳴り響いてきた。


「どうしたんだ?」

「それより、マスタールームへ急ぎましょう」


 ハムマルの言葉に従いマスタールームへ行くと、サシャとエルルも向こうのドアから入ってきた。

 二人とも眠っていたのだろうか、目をこすりながら歩いている。


「主様、ご覧ください。侵入者です」


 壁面に映し出されているダンジョンの入り口の様子を見ると、熊がうろうろしていた。


「熊!?」

「左様でございますね。あれはブラッディベアでございます。レベルはっと……11ですね」

「くまさんだ~」

「えっと、どういうことなんですか? 教えていただけると助かりますわ」

12/16 14:21

入手DPを鶏1羽1DPから2羽1DPに変更。

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