彼の彼女は意地悪ガール
比奈に「瑞輝には近づかないで」と、言われてしまった哀華。でも、一週間近づける日がー。
「何、それー!」
家に帰って、宿題を終わらせて夕飯を食べてから、お風呂に入る間での時間、深羽と電話タイム。
比奈ちゃんのことを話したら、電話の向こうで、深羽が激怒しているのがわかる。
「でも、比奈ちゃんにああ言われると、近づきづらいな……」
あたしは、落ち込んだ声で肩を落とした。
「でも、向こうから近づいたんでしょ?哀華は何も、気にすることないって!」
「そうなんだけど……」
段々、弱気になってきてしまう。
「何、弱気になってるのよ!あたしの勘では、そんな彼女じゃ、絶対別れるね」
いつも、深羽の勘は当たる確率が高い。でも、まさかね……。
「おはよう。哀華ちゃん」
「お、おはよう!」
2、3日経ったある日のこと。
朝の通勤ラッシュの電車に乗り込んで、たまたま空いていた席に座って、まだ眠い目を擦りながら、うとうとしていたら、急に声をかけられて挨拶してから、ハッと顔を上げた。
「瑞輝君……」
あたしは、挨拶した相手が瑞輝君だと気づいて、急に恥ずかしくなった。
まだ、寝起きみたいな顔なのに、恥ずかしい!!
あたしは、慌てて俯く。
「あははー!何か眠そうだね?勉強のしすぎかな」
「まっさかー。特進クラスの子達とは違うし」
あたしは、手を左右に振った。
「特進の子、全員ががり勉じゃないんだけどなー。少なくても俺と比奈は違うし」
比奈……。瑞輝君から、彼女の名前が出てくると、少し胸が苦しくなる。
「そ、そうなんだー」
あたしは、そんな気持ちを打ち消すように、無理に笑顔を作った。
今まで、遠くから見るだけだったのに、話せるようになって、余計に辛くなるなんて思ってもみなかった。
「そ、そう言えば、比奈ちゃんは一緒じゃないんだね」
比奈ちゃんが、いないことに気づいて電車の中を見渡した。
「今日、日直みたいでさ。一本早い電車なんだ」
「そうなんだー」
比奈ちゃんがいなくて、ホッとしている自分がいる。
「何だよ、瑞輝!浮気か?彼女に言いつけちゃうぜ」
いつも、瑞輝君といる男の子が2、3人あたし達の周りに寄ってきた。
「違うって!友達友達」
瑞輝君が、慌てて否定した。
2回も友達って言われると、さすがにへこむ。
つい最近、話せるようになったばかりなのに、彼女がいる人に、それ以上のことを望むなんて考えちゃいけないのに、深羽が、電話で変なこと言うから、ついつい欲が出てしまうー。
そんな事を考えていたら、
「ーちゃん。哀華ちゃん!着いたよ」
瑞輝君に声をかけられて、あたしは、ハッとさせた。
考え事をしていたら、降りる駅に着いていたのも気づかなかった。瑞輝君の友達や同じ学校の子達もとっくに降りて、あたしと瑞輝君だけになっていた。
プルル……。
その時、発車の合図が鳴って、ドアが閉まりそうになった。
「早く、降りよう!」
瑞輝君は、あたしの腕を掴むと、急いで電車から降りたその時、ドアがゆっくりと閉まった。
「あ、ごめん……」
電車から降りた後、瑞輝君があたしの腕を掴んでいることに気がついて、慌てて手を離した。
「ううん」
あたしの腕に、瑞輝君の温かい手の感触が、残っている。
「あ、ありがとう。また、助けてもらっちゃった……」
あたしは、深々とお辞儀をした。
瑞輝君の前で、いつもへましている自分が恥ずかしい。
「ぷっ!あははー」
あたしが落ち込んでいるというのに、瑞輝君がいきなり笑い出した。
「ごめんごめん。いつも、君に会うときは、ハプニングの連続だなと思ったら、何だか可笑しくなって」
「酷い……」
あたしは、子供みたいにぷくっと頬を膨らませた。
「ごめん。でも、良かったね。降りられて」
「うん。瑞輝君のお陰」
こんな、瑞輝君の優しい所も含めて、好きになったけど、お年寄りから子供まで優しいから、あたしもその中に含まれているのかも知れない。
「確かに、それは言えてるよ。誰にでも優しいんじゃ、その中の独りだね」
学校に着いて教室に入ると、深羽に瑞輝君のことを話したら、納得した顔で頷いた。
「やっ
ぱり……」
あたしは、がっかりと肩を落とした。
「それより、あれから彼女。何か言ってきてなあい?」
「うん、大丈夫。今日も、会わなかったし」
「でも、今日から一週間は、会う確率、高いかもよ」
今日から一週間、1年生から3年生まで特進クラスも一緒に、自分達の好きな教科を選択して、合同で勉強することになっている。
あたしと深羽は、英語と理科を選択しているので、早速、教室を移動する。
「あれ?哀華」
英語の授業をする教室に行くと、渉が窓際の後ろの席に座っていた。
「渉……」
「何だ、哀華も英語を選択したんだ?」
「う、うん……」
あたしは、小さく頷いた。
「哀華ー。あたし達は向こうの席に座ろう!」
深羽が気を使ったのか、わざと廊下側の方の席を選んだ。
「ごめん、深羽。気を使わせちゃって」
席につくと、授業の用意をしながら、深羽にお礼を言った。
「渡部君と別れてから、一度も話してないの?」
「この前、話したよ。別れても友達でいようって言ってくれたしー」
あたしは、吹っ切れた顔で答えた。
「そうなんだ?あんなに悩んでたのに、忘れるのも呆気なかったねぇー。哀華に好きな人もできたし」
「もぅ!それを言わないでよ」
何だか、自分が移り変わりの激しいみたいに思えてしまう。
けして、そんなんじゃないのにー。
「あれ?哀華ちゃんも、英語を選択したんだ?」
瑞輝君が、教室の前の入り口から入ってきた。
ドキン!!
瑞輝君の声に、あたしの心臓が波打つ。
『ちょっと、イケメンじゃん。もしかして例の彼?』
横で、深羽が耳元で囁いた。 あたしは、小さく頷く。
「瑞輝!先に行かないでよー」
後から、比奈ちゃんも教室に入ってきた。
すぐ、比奈ちゃんと目があってしまった。
「なあんだ、あなたも一緒なの?」
比奈ちゃんは、嫌みぽく言うと、瑞輝君の腕に自分の腕を絡ませた。
比奈ちゃんの言葉に、カチンときたけど、ぐっとこらえて平然とさせた。
「瑞輝、あっちの席が空いてるよ。行こう!」
比奈ちゃんは、渉が座っている窓際の方を指差すと、瑞輝君の腕を引っ張った。
「わかったから。そう、急がなくても大丈夫だって。ごめん、哀華ちゃん。比奈、口は悪いけどいい子だから」
「……」
いい子?あたしには、そんなふうには見えない。
「あたしには、ぶりっ子にしか見えないわ」
深羽が、呆れかえっていた。
チャイムが鳴ると、すぐに先生が教室に入ってきた。
「えーと。まずは、廊下側から縦に1年生2年生3年生と座りなおして下さい」
先生に言われて、違う席に座っていた人は移動を始めた。
良かった!瑞輝君、比奈ちゃんと一緒の席じゃないんだー。
あたしは、少しホッとさせたのもつかの間、みんなの実力を試したいからと、テストをやったり、ちょっとした英語のゲームをやったりと大忙し。
「やっと終わったー」
あたしは、机の上に顔をつけた。
「哀華!休んでいる暇ないよ。教室に戻って、理科室に移動しないと」
休んでいるあたしを見て、深羽が急かした。
「うんー」
渋々、机から顔を上げる。
「お疲れー!」
瑞輝君が、ポンとあたしの頭に手を置いた。
「お疲れ様!」
あたしは、慌てて椅子から立ち上がった。
「哀華ちゃんは、あとは何を選択したの?」
「り、理科。瑞輝君は?」
「俺は、数学。残念、一緒じゃなかったね」
瑞輝君が、苦笑いをする。
本当に残念。でも、一週間は電車以外でも逢えるなんて、こんな嬉しいことはない。
でも、そんな気持ちも、理科の時間には吹っ飛んでしまった。
「どうして、渉も一緒なの……?」
一旦、教室に戻って理科室に行くと、渉がすました顔で椅子に座っていた。
「どうしてって、理科を選択したからだろ。哀華達も一緒なんだ?」
「うん……」
ぎこちなく微笑んだけど、実験グループまで一緒の班になってしまったものだから、いくら吹っ切れたと言っても、何だか少し気まずい。
「大丈夫?哀華」
あたしが、気まずそうにしていると、さすがに深羽も気づいたみたいだ。
「う、うん……」
心配かけまいと、頷いて見せた。
でも、英語の時間だけは、瑞輝君と逢えるだけで、嬉しくなる日々続いたけど、そんな日も、あっという間に過ぎて行った。
「明日で、終わりだね」
今日の理科の授業が終わると、教室に戻る準備をしながら深羽が呟いた。
いよいよ、明日で選択した授業が終わろうとしていた。
「そうだねー」
瑞輝君に逢えなくなるのは、寂しい。
「ちょっと。そのノート、渡部君のじゃないの?」
あたしが、自分のノートだと思って、持って行こうとした時、深羽がふと気がついた。
ノートを見てみると、名前の欄にでかでかと渉の名前が書いてある。
理科室の中を見渡したけど、先に教室に戻ったのか、渉の姿はなかった。
「あたしが、渡してこようか?」
「大丈夫。渡して来るだけだからー。?」
一旦、教室に戻って理科室に行くと、渉がすました顔で椅子に座っていた。
「どうしてって、理科を選択したからだろ。哀華達も一緒なんだ?」
「うん……」
ぎこちなく微笑んだけど、実験グループまで一緒の班になってしまったものだから、いくら吹っ切れたと言っても、何だか少し気まずい。
「大丈夫?哀華」
あたしが、気まずそうにしていると、さすがに深羽も気づいたみたいだ。
「う、うん……」 心配かけまいと、頷いて見せた。
でも、英語の時間だけは、瑞輝君と逢えるだけで、嬉しくなる日々が続いた。
「明日で、終わりだね」
今日の理科の授業が終わると、教室に戻る準備をしながら深羽が呟いた。
明日で選択した授業が終わる。
「そうだねー」
瑞輝君に逢えなくなるのは、寂しい。
「ちょっと。そのノート、渡部君のじゃないの?」
あたしが、自分のノートだと思って、持って行こうとした時、深羽がふと気がついた。
ノートを見てみると、名前の欄にでかでかと渉の名前が書いてある。
理科室の中を見渡したけど、先に教室に戻ったのか、渉の姿はなかった。
「あたしが、渡してこようか?」
「大丈夫。渡して来るだけだからー。深羽、先に教室に行ってて」
あたしは、先に理科室を出ると、渉のクラスに向かった。
渡り廊下を渡って、階段を上って行こうとした時、階段の下のスペースで、カップルがキスをしているのが目に入った。
ちょうど、みんなの死角には入らないスペースだけど、こんな所で大胆すぎる!!見ているこっちまでが、恥ずかしくなってしまう。
でも、ちょっと待ってー。
男女とも、どこかで見たことがあるような……?
「……!?」
2人が身体を離した時、あたしは愕然となった。
その顔は、渉と比奈ちゃんだったからだ。
ど、どう言うこと?どうして、2人がキスしてるの!?
あたしは、その場から身体を翻した。




