魔の海域攻略編後編 弍波到来⑤
シーラ「ゾーマさんたちはカーネル騎士団の戦術兵器の訓練を受けたからご存じでしょうが、魔獣は保有している毒の多寡に影響を受けて行動します。
具体的には大型の魔獣に、さらには再生反応の際に著しく毒に対する反応を顕著にします。
この前提が小型魔獣、大型魔獣、そして中型魔獣の死骸のあり方を説明出来ます。」
シーラ「魔獣の群れが発生する環境においては淘汰圧により、まず体力が乏しい中型魔獣が死滅していきます。
他の魔獣に関心を示されない小型魔獣が中型魔獣に喰らい付き、中型魔獣はじきに再生能力を失い死亡し、小型魔獣の群れの捕食攻撃にも耐えうる大型魔獣が生き残る生態であると説明できます。
故に十番艦の行動は合理的であると評価出来ます。」
ゾーマ「ああ!?十番艦を褒めてる場合かよ!?
十番艦のヤツら大型魔獣を攻撃する能力がありながらすぐ近くの仲間を助けようとしないのが問題なんだろうが!?」
ケヴィン「...ゾーマに同意だな、、十番艦がバァクシン商会から情報を貰ったのか、あるいは自身で攻略に気づいたのか、
いずれにせよ、すぐ近くの九番艦に攻略を共有している様には見受けられないな。
...我々はこれをどう評価すればいい?」
シーラ「これから分断されている前衛との合流を踏まえれば、十番艦の処遇は我々の形式的な味方になり得るかで判断すべきです。」
ゾーマ「だからよ!!今まさに味方を裏切っているヤツをどう信用しろってんだ!?
俺たちの寝首を取られるかもしれねーんだぞ!!」
ケヴィン「...背信行為に対する処罰の必然はそこにあるだろ。
相互不信は組織の運行に支障をきたしてしまう。」
ミラド「...シーラ、お前は前衛との合流の際、どの様な構図であるべきと思い描いている?」
シーラ「まず、現在の前衛の状況予測です。
後衛の船がほとんど壊滅していない事を踏まえて前衛も損害がほとんど無いと仮定します。
すると前衛はバァクシン商会系列の探索船とバァクシン商会から情報をもらっていると予想される旗艦、二番艦、三番艦、そして非バァクシンと予想される四番艦、五番艦です。」
シーラ「ここで前衛の四番艦と五番艦はどの様な振る舞いをすると予想出来ますか?」
ミラド「...魔獣の群れに攻撃を仕掛けて最悪壊滅しているか、
あるいはバァクシン派に取り込まれているか、だな。」
シーラ「ここでは我々にとって最悪なケースであるバァクシン派に取り込まれている、を採用します。」
シーラ「もちろん、旗艦にはアナが乗り込んでカーター提督の説得を試みているでしょうが、
重要なのは前衛と後衛が合流した時の衝突のリスクを最小にすることです。」
ゾーマ「ああ!?アナの小娘が向こう側にいるのかよ!?」
シーラ「ええ、後衛は後衛で争いの姿勢をみせず、集団として安定している事で前衛に安心感を認識させる事が重要です。」
ケヴィン「...なるほど、ただ正義を掲げても混乱を招くだけなのか!」
シーラ「ゾーマさんも十番艦の処遇を今決着をつけない理由は納得出来ましたか?」
ゾーマ「...納得は全然してねーけどよ、とりあえず七番艦の魔獣を生け取りしときゃいいのか?」
シーラ「ええ、九番艦付近の小型魔獣が近くに三体も大型魔獣がいるにも関わらず、七番艦を目指すのは七番艦の大型魔獣の影響がこの周辺で最も大きい証左です。」
ゾーマ「!!?さっき七番艦の魔獣が他の大型魔獣を喰ってたな!それか!?」
シーラ「我々が七番艦の魔獣を管理する事は九番艦の救出にも繋がり、結果、十番艦への圧力に繋がります。
生き残っているクルーシル商会系列の探索船も含め、前衛と後衛の戦力バランスはどうでしょうか?」
ケヴィン「戦力の均衡が取れている!?いや、うちの船がある分後衛が有利か!?」
シーラ「ミラド船長には艦隊のバランサーになって頂きます。」
ゾーマ「なるほど!喧嘩の形としちゃあ美味しいな!」
ミラド「...可愛い、、、」
シーラ「...何かおっしゃりましたか?」
ミラド「...気にしないでくれ、子供の頃からの癖なんだ。」
ミラドは連絡用金属管を通じてカルムを呼び出した。
ミラド「...カルム聞こえるか。」
カルム「ええ、聞こえております。どうされましたか?」
ミラド「七番艦救出に急行するために今すぐ緊急駆動系を発動させろ。」
カルム「!?...先程の話しにあった異常波の圏外脱出ではなく、救出に急行する為に使用する判断ですね、、、
理解してると思いますが、仮に使用後の2日以内に湾岸に到着出来なければこの船は漂流します。それでも今使用しますか?」
ミラド「...ああ、今使うべきだ。」
カルム「...わかりました。あなたの判断に従いましょう。」




