魔の海域攻略編後編 青年立春②
ミラド青年「...大変名誉ある任務の提案を感謝いたします。
ですが先程もお伝えした通り、私はミルドランの東に旅に出ようとしております。
ミルドランの西側の軍事平定は私の目的と方角が逆といえます。」
スピリアルド伯爵「ふふ、果たしてそう言い切れるかな?」
ミラド青年「...と、申されるのは、どの様な意図でしょうか?」
スピリアルド伯爵「仮にお前が辺境伯の地位についた場合と単身で目的地を旅する場合、どちらがお前の夢に近いか、という事だ。」
ミラド青年「!?」
スピリアルド伯爵「ミルドランの貴族達には見下されているかも知れないが、ミルドラン外の要職につく者からすれば辺境伯という地位は十分交渉する価値がある存在と言える。
ミラド青年「!?」
スピリアルド伯爵「お前はバァルジモアを目的地の一つに挙げていただろう。
海洋国家のバァルジモアにとってカスケード大陸の港を平定してくれる存在は認知する順位が高いと言えるだろう。」
スピリアルド伯爵「それとこれはあくまで噂話だがな、カスケード大陸からアルゴラ大陸までの最短の航路を確保出来るかも知れない、という事だ。」
ミラド青年「!!アルグ海域を横断するという事ですか!?」
スピリアルド伯爵「うむ、かつて魔女が海に捧げられてドラゴンを生み出したとされる呪われた魔の海域だがな。」
ミラド青年「...。」
スピリアルド伯爵「迷信など恐れず、確かな情報としっかりとした船団を組めば攻略出来るやもしれぬ。
もっともこれにも莫大な金と地位が必要になるがな。」
スピリアルド伯爵「それとな、私も数える程しかないがミルドラン東方に赴いた事がある。」
ミラド青年「!!本当ですか!?」
スピリアルド伯爵「聴きたいか?」
ミラド青年「是非!!」
スピリアルド伯爵「ふふ、やっと人の助言に耳を傾けるようになったな。」
スピリアルド伯爵「話すにしても方向性が合った方が良かろうどの様な話しを聞きたい?」
ミラド青年「...魔女と聖女に関する話しをお伺いしたいです。」
スピリアルド伯爵「!?意外だな、現実主義者のお前がそんな宗教的象徴に興味を持つとはな。
まあ、良かろう。」
ミラド青年「...昔、説法に訪れた宣教師の方から聞かされた神々の祝福を受けた聖女がドラゴンを倒す、と言った類の話しはミルドランの東方にも伝わっているのでしょうか?」
スピリアルド伯爵「ふむ、文化的類似性に興味があるのかね?
私が体験したのは聖女の説法を直接聴けるとの事で大金をはたいて東方に足を運んだのだよ。
向こうの宗教組織に献金するだけで成人領民の租税千人分ぐらいだったか。
そしたら当日になって聖女の宗教的理由でキャンセルとなったのだよ。
中々いい商売をしていると当時は思ったな。」
ミラド青年「...魔女が聞いたら呆れる話しですね。」
スピリアルド伯爵「はは、全くだ。しかし、集金をする求心力は本物だと感じたよ。」
スピリアルド伯爵「ところでミラルドルフ、お前は何にだったら大金をはたく?」
ミラド青年「...私の経験から申しますと、
私にとって有益な事、
私が応援したい事、
私が敵対したく無い対象の先行投資、
...こんなところでしょうか?」
スピリアルド伯爵「うむ、聖女謁見の為に大金をはたいたのは、私にとって、お前の言う有益な事に分類出来るな。」
ミラド青年「!?どの様な意図があったのでしょうか?」
スピリアルド伯爵「当時はミルドランの王宮や議会でもギクシャクしておってな、誰が敵か味方か単純に別ける事など出来ない状況だった。
私も情報を求めたり、秘密裏に面談の段取りを取るのに躍起だったよ。」
ミラド青年「...そこで利用したのが聖女謁見を前提とした人脈の構築、と言ったところでしょうか?」
スピリアルド伯爵「そうだ、争いの関係者である貴族達や中立を装って利害を計算する商人どもの仲介より、ミルドランの外周りから誰でも知っている聖女の謁見行為を利用する事でそこで集まった人脈を利用し政争を勝ち抜く事が出来た。」




