魔の海域攻略編後編 青年立春①
ミラド青年は老執事に連れられて部屋をあとにした。
老執事「航海術の勉強ですか。
熱心なのは結構ですが、きっかけは近くの酒場で飲んだくれている小柄な中年でしょう。」
ミラド青年「...カルムさんの事でしょうか?」
老執事「そうそう、なんでもアルグ海域を一周したとホラを吹いているようですね。」
ミラド青年「...アルグ海域周回の前例は既にあり、不可能な事ではありません。」
老執事「そういう事を言っているのではありません!半生をかけた冒険の結果が酒場での体たらくであると反面教師とすべきなのです!」
ミラド青年「...。」
老執事「ミラルドルフ、よいですか、貴方の将来性は私はもちろん、ご主人様や各方面の貴族の方々にも期待されているのですよ。
生き方には'形'が存在します。
型に沿った生き方する事で味方からは尊敬され、敵対する相手からも信頼される人物になるべきです。」
ミラド青年「...必要な社会性は取り入れます。
しかし、社会が求める人物像を示す事が自分の意志で生きていると言えるでしょうか?」
老執事「貴方の言わんとしている事は分かりますよ。
自分の価値基準にもとづいて人生を謳歌する、素晴らしい生き方、と褒めたいところですが、ミラルドルフ、貴方に限って言えばそれは危険な思考であると言えます。
貴方の才能が納まる型をしていないと貴方の敵も味方も貴方に恐怖感を抱いて最悪、貴方の存在を抹消しようと働きかけるやもしれませんよ。」
ミラド青年「...そんな生き方も可愛いじゃないですか。」
老執事「か、可愛い!?なんですか!その不適切な表現は!?」
ミラド青年「...唯の独り言です。気になさらないでください。」
老執事「と、とにかく、ご主人様の配慮を無碍にはしてはなりませんよ!」
ミラド青年「...お気遣い感謝します。」
ミラド青年は伯爵の寝室に訪れた。
ミラド青年「お休みのところ、失礼致します。」
スピリアルド伯爵「お前への説教の声がここまで届いていたぞ。
お前の為の助言をもう少し素直に聴いたらどうだ?」
ミラド青年「これは大変お見苦しいところをお見せいたしました。」
スピリアルド伯爵「...お前に義務付けられた奉公の期限は18歳までだったな。」
ミラド青年「はい。18歳になり次第、旅に出るしだいです。」
スピリアルド伯爵「...既に目標が明確な様だな。
何処を目指す予定なのだ?」
ミラド青年「まずは私が幼少期を過ごした地域を訪れようと考えております。おそらく、ミルドラン東部の国境を越えた方面だと予想しております。
次に目標が達成できなければアルゴラ大陸やバァルジモア帝国を目指してみようと考えております。」
スピリアルド伯爵「はは、アルグ海域を一周するつもりか!?
酒場の酔っ払いに指南を求める訳だな。」
ミラド青年「...ご存知でしたか。」
スピリアルド伯爵は激しく咳き込む。
ミラド青年「伯爵!?すぐお薬を!!」
スピリアルド伯爵「...よい、効きもしない薬など、うんざりだ。
それよりもミラルドルフ、死に損ないの老人の提案を聞いてくれまいか。」
ミラド青年「...なんでございましょう?」
ミルドランの西にカスケード大陸があるのは知っているだろう。」
スピリアルド伯爵「カスケード大陸のミルドランの領土を治めていた辺境伯が戦死してからどれぐらいになろうか。
その間にもミルドランの中央政府から将軍が派遣されたがいずれも惨敗を喫してしまった。
ミルドランはカスケード大陸の領土を主張しても辺境伯は不在、軍事的空白が生まれまともに税も徴収出来ない有様だ。」
ミラド青年「...存じております。」
スピリアルド伯爵「単刀直入に言おう、この辺境伯不在の土地の軍事平定の任務についてみないか?」
ミラド青年「!?」




