魔の海域攻略編後編 貴室密訪⑥
カーター提督「アナ、お前が予想したようにバァクシン商会からアルグ海域やアルゴラ大陸までの情報を提供されている。
だからといって私はバァクシン商会に肩入れする訳にはいかない。何故か分かるか?」
アナ「...バァクシン商会と対立しているクルーシル商会がこの艦隊に同伴しているからか?」
カーター提督「そうだ、そしてクルーシル商会はバァルジモアの三大勢力である帝命ギルド、そしてミルドランの利権と複雑に絡みあっている。」
カーター提督「艦隊の航行進路を遠回りにしているのも、お前の予想通りバァクシン商会から危険な魔獣との遭遇を回避する為だ。
だがこの情報についてバァクシン商会の手柄とせず、私の判断のもとに航路を選択しているという体裁をとっている。
バァクシン商会もそれを暗黙に了承している。
何故だと思う?」
アナ「...高官や艦長クラスのバァクシン派が問題を表面化して欲しくないからか。」
アナ「...エレンが予想してた通り、大陸への到達に自信を持っているグループがバァクシン派で、疲弊しているのが何の情報を持っていないグループだ、って事の裏付けは出来たな。
...提督は軍事評議会の所属って言ってたよな。」
カーター提督「ああ、軍事評議会にも軍閥はあるが私はどれにも属していない、が、三大勢力下でみたら私は軍事評議会に所属するな。」
アナ「アルゴラ大陸到達の実績はどの勢力が得をするんだ?」
カーター提督「...まず、私の立場から見ると軍事評議会が艦隊をアルゴラ大陸に派遣した功績が認められるだろうな。」
アナ「...アルゴラ大陸って初代皇帝の出身地で、大陸到達はバァルジモアの長年の悲願なんだよな?」
カーター提督「...ああ、到達したとなれば国粋教会が国内外に実績を大々的に宣伝するだろうな。」
アナ「...大陸航路の確立は新しい事業の機会が訪れるって事だよな?」
カーター提督「...これまでの椅子取りゲームでは終わらない利権の構築、帝命ギルドが黙ってないだろうな。」
アナ「三大勢力がどれも得をするじゃねーか!」
カーター提督「...三大勢力の老人達が互いに納得して協力し合うのか、私の経験からは考えられんな。」
アナ「うーん、協力し合っているっていうか、他の勢力に先を越されるのが悔しい、って心理の方が説明しやすいと思うぜ。
きっかけはバァクシン商会のアルゴラ大陸到達だろうけどな。
三大勢力にバァクシン商会の実績が浸透して、いちいち協議しなくとも相手を出し抜こうとして、結果、艦隊派遣になったと思うぜ。」
カーター提督「...心理学には興味が無いと言う割には人間の心理と行動を把握してるじゃないか。」
アナ「まあ、カーター提督が艦長達に情報を共有しない理由は私なりに納得したよ。
艦隊の秩序が保たれている限り、アルゴラ大陸到達後の利害関係には関与しない、が提督のスタンスで良いんだよな?」
カーター提督「...ああ、恩賞関連は複雑過ぎて私が扱える事ではないが、艦隊がバァルジモアに帰還する迄の一切の艦隊の運行は何者にも口を挟ませんよ。」
アナ「私達も明確な指針が把握できたしな、次の方針に移れるってわけだ。」
アナはカーター提督のグラスに酒を注ぐ。
アナ「しかし、私のご先祖様がバァルジモアの歴史に影響を与えているなんつ初めて知ったよ。シーラ姉ちゃん、実は何か知ってるのかな?
カーター提督「シュトラバルツはバァルジモアだけに影響を与えているだけでは無い。
体系化した知識を後続の者達に伝える、という事に関しては私は人生の模範としたものだ。」
カーター提督はグラスの酒を飲む。
アナ「へーえ、シュトラバルツに憧れてたんだ。そうだ!私の婿養子になれば提督も晴れてシュトラバルツだぜ!」
カーター提督は酒を吹き出してしまう。
アナ「あーあー、もうキタネーな。」
カーター提督「...確信したよ。お前は魔女だ。」
通信官「お休みのところ失礼します!提督!緊急連絡です!」
アナ「!!?」




