第三十六話 ゲスな看守
読者のみなさまへ
今回、看守からリンへのセクハラが繰り返されます。
苦手な方は、大変申し訳ありませんが、
前から2/3ほどを読み飛ばし、連続10行の空行の後からお読み下さい。
私が男なわけないでしょ!
そんな私の思いも空しく、看守が私のズボンに手を掛けようとする。
「囚人にズボンは、許されていないのであ~る」
「待って。私は誘拐犯じゃないわ。間違われて捕まったのよ!」
「吾輩の仕事には関係ないのであ~る」
私は壁に吊るされたまま、足を前に出して、看守と距離を取ろうとする。
「や、止めて!」
「大人しくするのであ~る!」
加速。
看守の手が伸びてくるたびに、足をすり抜けさせる。一、二度逃れるのは簡単だ。
でも両手を縛られ、壁に吊るされていては、足を突っ張って看守を押し返すくらいしかできない。
看守の手は、ゆっくりと、でも執拗に私の足を追ってくる。
看守自身もじわじわと距離を詰めてくるので、押し返しきれない。
しばらく必死に足を動かしていたけど、まだ背中が痛いし、息もすぐに上がってしまった。
これ以上は無理。
……解除。
足をガッチリと掴まれ、ズボンが一気に引き下ろされた。
看守がいやらしい笑みを浮かべる。
「うっ」
負けるもんか。足を見られるくらい、競技の時と一緒なんだから!
そうは思っても、太ももをさらされ、慌てて両足をぎゅっと閉じた。
「おやぁ? ズボンの下は何もないのであ~る?」
それを聞いて、ハッとした。
今日のチュニックは、お尻がやっと隠れるくらいの長さしかない。
それでも、下着も布が少ないので、ほとんどチュニックの外からは見えないのだろう。
看守は少し屈むと、私のチュニックをめくった。
「コ、コラ、見るな!」
「何だこりゃ? 腰帯なのか、違うのか、法的に問題なのであ~る」
どうせミルカくらいにしか見られないと高を括って、走りやすさと作りやすさ、安さだけしか考えていなかった。
それは腰の紐に付いた布を、後ろから足の間を通して紐にかけ、前に垂らすだけのもの。
つまり、越中ふんどしだった。
今どき、コントかお祭りの中継でしか見ないような格好だ。人に見られると、すごく恥ずかしい。
看守は短剣を抜くと、刃先で腰の紐を引っ張り上げる。
「この紐を切るとどうなるか、法的判断に必要なのであ~る」
「そ、そんなの、やらなくても分かるでしょ!」
看守は刃先を紐に当てたまま、ゆっくりと持ち上げていく。変な効果音を口ずさみながら。
「プッチン、プッチン、プッチン、プッチン」
「止めてよ!」
切れる、切れる、切れちゃう!
「いや、しかし」
紐が切れる前に、看守は刃を引いた。
わざとらしくゆっくり短剣を鞘に収め、腰に戻した。
そして今度は、前に垂れた布を持ち上げた。
「この布を紐から抜いたらどうなるかも、検証が必要なのであ~る」
「それもやらなくても、分かるでしょ~が!」
看守は前垂れを引っ張って、上げたり下げたりを繰り返した。
「ペロ~ン、グ~ン、ペロ~ン、グ~ン」
「止めてってば!」
取れる、取れる、取れちゃう!
「いや、しかし」
結局、前垂れを紐から抜くことなく、看守は手を離した。コイツ、遊んでる?
「腰布かどうかは後にして、先にチュニックを没収するのであ~る」
看守はゆっくりと、チュニックをめくり上げていった。
お臍が見え、胸の下までが晒される。
「ちょっと、女はスモッグをもらえるって。こ、こんな胸で、男なわけないじゃない!」
これ以上されたら、たまらない。私は嫌々胸を張った。ほら、このふくらみを見なさいよ!
「筋肉か、腫れてるだけかもしれないのであ~る。男女の区別は、股の間で確認する規則なのであ~る」
こいつ、上を脱がせてから、確認する気?
悔しさに私が看守を睨んでいると、何やら外が騒がしくなった。
看守も私のチュニックから手を離し、振り返る。
チュニックの裾が滑り落ちて、お尻の下まで覆った。
牢の前には、ガステールと、もう一人の男が立っていた。
その男には見覚えがある気がしたけれど、思い出せない。
「釈放だ。さっさと出ていけ」
ガステールが、憎々しげに私を睨んで言った。
「えっ?」「え~~~っ?」
私と看守の声が重なった。でも、看守の方が不満そうに長い。
私は絶望から一転、希望が見えてきたけれど、看守は逆に蜘蛛の糸が切れたカンダタのような顔をしていた。
よく分からないけど、こんなところはサッサと出よう。
両手の縄が解かれると、私は素早くズボンをはいた。それから取られていた荷物を集め、牢を出る。
二人の男に先導され、私は衛兵の詰め所からも出た。
ガステールは苛立ちながらすぐに立ち去り、もう一人の男だけがその場に残った。
詰め所の前には、ミルカとカーター、それにパックが待っていた。
「リンさん、無事だったんですね!」
ミルカが抱きついてきた。私も抱きしめ返す。
ズボンを脱がされて、無事だったかと言われると、乙女として議論の余地はある。それでも、それ以上のことはされなかったのだから、マシな方だろう。
「いやいや、良かった」
カーターも嬉しそうにしている。
「私がこの子を連れて、誤解だったと申し立てたんだけどね。全然、聞いてもらえなくて」
「リン姉ちゃん。俺、すっごく心配したんだぜ」
どうやらパックがカーターと一緒に、証言に来てくれたようだ。
「絶対、太ったいやらしい看守に、あんなことや、こんなことされて……」
私はそれを聞いて、即座にパックの両頬を引っ張った。
「い、痛いれふぅ」
でも、二人でダメだったなら、私が釈放されたのは、この人のお陰?
私は、ガステールと牢に入ってきた男を見上げた。




