第5話「Save Me」
金髪の女性が、のんびりした口調であまねに問いかけた。
「あなたは、迷っちゃったのですか?」
「はい、……あ、いいえ」
「……ふんふん」
あまねの返事には、大して期待していなかったのだろう。金髪の女性はマシュマロを枝に刺す。
「今日は大判振る舞いですよ。あ、申し遅れました。私、バネッサと言います」
「み……あまねです」
「では、あまねさん。マシュマロもう一つ食べますか」
「……はい」
「えっと、自分で焼いてみますか」
「……やってみます」
マシュマロを焼いている最中、バネッサと名乗った女性は、何やら見たことが無い器具で空とか地面を色々調べている様子だった。
あまねがマシュマロのお替りを食べ終わると、バネッサは「じゃあ、寝ましょうか」と毛皮を地面に敷き直した。
バネッサとあまねは並んで横になる。見慣れない生地の毛布?が暖かかった。
「明日、大きな道路まで案内してあげますね」
「はい……お願いします」
疲労のせいだろう。あまねは夢も見ずに深く眠った。
◇ ◇ ◇
翌朝、あまねが目を覚ますと、バネッサが焚火の後始末をしていた。
炭は布袋に入れて持って帰るらしい。焚火の痕跡が完全に消えていた。
「朝ごはんです、召し上がれ」
渡された緑だか茶色の団子は、昨晩のマシュマロとは違い、ひどい味だった。
「火を先に落としてごめんなさい。出発が遅れちゃうので」
早朝の寒さに震えていたあまねに、バネッサがすまなそうに説明する。
ああ、そうか大きな道まで連れて行くって言ってたっけ。
「……大丈夫です」
じゃあ、行きますかと散歩に出かけるノリでリュックを背負うバネッサ。
こくりとうなづき、後を歩くあまね。
「キャンプが趣味で、この辺りいつも来るんですよ、安心してついてきて下さい」
何となくうさん臭いが、「ふうん」とだけ返しておいた。
確かにこの付近には慣れているようで、迷わず進んでいくのだが、たまに奇妙な道具で植物や地面を調べたりしている。
「あ、これですか、これはですね、……えっと、カメラです」
また嘘っぽいが、そういう事にしたいのだろう。特にコメントも無く会話が終わる。
水の音が聞こえ始め、しばらくすると川岸についた。あまねが落ちた川だろうが、ここはもっと上流のようだ。
丸太橋があり、バネッサが渡るときに手を貸してくれた。
何かの木の実をバネッサが採取し二人で食べる。朝食べた団子の数倍は美味しい。
見覚えのある山道を抜けると、大きな舗装道路に出た。
ここはあまねが最初に山に入った、ハイキングコースの入り口だ。
まだ、昼前だ。こんなに早く到着するなんて。
バネッサの焚火にたどり着いた時間を考えると、自分は相当迷っていたんだろう。
「さ、着きましたよ。どちらに行っても街があります。お巡りさんにお願いしてお家に送ってもらってください」
「……はい、……ありがとうございました」
山に来たものの、迷った挙句に元の場所に戻ってきた。
あまねは、次にどこに向かえば良いのか分からない。




