制服だと二割増し
「制服だと二割増しにかっこよく見えるなんて、男子って不思議よね」
と、目の前の女の子が呟いた。
今はクラス全員でのランチ中。入学式当日だけは全員強制で食堂に行き、同じテーブルで昼食をとるのが決まりなんだそうだ。
それができるのは1クラスが12人という少数だかららしい。
ちなみに学院にはアンがいる魔術科、僕がいる魔法剣士科の他にも騎士科、歴史科などたくさん科があって、それぞれ最大3クラスある。最大ってのは定員が足りなかったら減るってこと。3クラスよりは増えないらしいので入学前に第三希望まで出す。魔法剣士科はそんなに人気がないのか今年は2クラスだそうだ。
まあそれはともかくとして、その女の子、シンシア=ホーンズビー子爵令嬢によると、学院の男子制服は男の子から男性になる象徴のようでとても凛々しく見えるのだそうだ。
騎士服のような詰襟は特に人気が高いと言い、今はまだぎこちない着こなしの生徒も学年が上がるにつれてこなれてくるのだと力説した。さらに言えば僕が着ている留学生の特別服は期間限定のこともあり目の栄養だとか。
僕たち男には何が何やらさっぱりでついぽかんとしてしまったが、女子には同意する者が多い。特に生徒会の方々が付ける金バッチは憧れなんだそうだ。
あれか……。
将来の糧になるからとか言う理由で王族は生徒会を手伝う義務があるんだよな。近い未来にもらえるそうだが、枷にしか感じられない。
まあ、アンとおそろいだからいいか。
キャッキャとはしゃぐ女子たちを見ていたら、なんだか和んだが、男どもは溜息をついていた。
「制服着てないと二割減るのかよー」
僕の隣でパンをかじっていたゲイブリアル=ハービーがぼやく。大きい岩みたいな男が情けない顔をするのでみんな笑った。
たしかにゲイブは制服が似合う。子どものころから第三騎士団の騎士たちにもまれているそうで、がっしりとした体躯が早くも女子に大人気だ。背も高くて胸板も厚いなんて羨ましい。
僕は自分の貧相な腕を見て小さくため息を吐いた。
「その点女子はいいな。制服でも私服でもかわいい」
同意を求めるようにぐるっと見ると、男どもは複雑な顔をし、女の子たちは吹き出しそうになっている。
「オズワルド……」
「それは……」
「さらっと言ったわ……」
「さすが王子様ね……」
え、僕、なんか間違えた?
「いや、だって、貴族の令嬢はあんな短いスカートはかないし、男性のようなジャケットも着ないだろ? 市井の女の子たちはわからないけど、よく見るのはワンピースだし」
「脚フェチ?」
「違うー!!」
どうしてそうなった!!?
「そもそも令嬢だろうが市井の娘さんだろうが、痩せていようがぽっちゃりだろうが、女の子は女の子だってだけで十分可愛いよ」
「若い子がいいと」
「年齢は基準になるの?」
「え、そりゃ、若いほうがっておじさんが言ってたよ」
「見解の相違だよ。赤ちゃんが一番可愛いのは認めるけど、老婦人には年月を重ねた落ち着きと知性があり、母上ほどのご婦人には包容力と話術があり、姉上ほどのご婦人は華やかさがある。物静かな落ち着いた女性も奔放な明るい女性も、共にいて楽しいならば問題はないと思うけどな」
「オズワルド、ストライクゾーン広すぎだろ?」
「そう? まあ、僕は外に出されるのが確定していた王子だから、どんな女性でも命じられたら結婚する義務がある。だから僕を僕として受け入れてくれるならそれでいい。要するにどんな女性でもお互いの性格が合えば外見なんて二の次だよ」
当たり前のことを言っているだけなのに、クラスの全員が涙ぐんで僕を見つめていた。謎だ。
とはいえ、短い時間で全員と打ち解けられたのは嬉しい。
「そういうのを全部ひっくるめて、アンが婚約してくれて本当によかった。僕の性格を認めてくれた上、可愛くて性格もよくて頭もよくて、ほんと、最高の婚約者だね」
にっこり笑ったら、全員が呆れた顔になった。ほんと、謎だ。
読んでいただいてありがとうございます。
扁桃炎でダウンしてましたが、再開します。
※オズの口調を修正しました。なんかワイルドになってました。熱のせいだ、きっとそう。




