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結果的には良かったかもしれない出来事

 結果的には良かったかもしれない出来事ってのは人生において何度あるのでしょうね。


 あの雨の日、私はなんでこの温室に来たのかしら?

 雨から逃げるなら屋敷に帰るほうがよかったはずなのに。

 あの時、私はなんであの男の子を怖がらなかったのかしら?

 普通はびしょ濡れの男の子が飛び込んできたら悲鳴をあげるわよねって言われてはじめて気づいたんだけども。

 初めて会ったオズと一緒にドレスに包まって話をした。あんなに楽しいことはなかったかもしれない。


 次の日、オズと再会した。

 オズが婚約者を探しているって聞いて、ショックだった。

 オズが私を選んでくれて嬉しかった。


 そう考えると、この温室は私にとってかけがえのない場所なのね。

 三年前に取り壊すって言われたとき、泣いて籠城したおかげでとってもきれいに作り直されちゃったけど、大きなテーブルはそのままここにある。

 今では小さく見えるけど、あの時はとっても大きくてベッドみたいに感じられた。

 まあ、大きさ的には使用人のベッドと変わらないって聞いたけどね。



 今日、オズはこの国に来る。

 今頃どこにいるのかな、考えるだけで幸せ。

 オズが私のところに来てくれる。

 会いに来るじゃなく、一緒にここにいてくれるために、こっちに向かってる。

 オズは国にいろいろなものを残してくるのに、私は何も変わらない。

 何だか申し訳ない。

 前にそう言ったら、オズは少し笑った。


「寂しくないって言ったらウソになるけどね」


 両手を組んで、遠くを見る目をする。


「でも、僕は自分が望んでしたことに後悔はしないよ。寂しいって思うのは人だから仕方ない。でも自分で断ち切ろうとしたつながり以外はそう簡単に切れないんじゃないかな? 望まなくてもつながってる者もあるけどそれはまあそれとして」


 ふふ、と笑った後、オズは私の手をぎゅっと握ってくれた。


「そういうもの全部を置いてきても僕は君といたいんだけどさ、アンはそういうのって重たい?」

「……バカ」

「ふふ、そうだね。僕は君の前だと世界一バカなんだと思うよ」


 オズの手はいつの間にか私よりだいぶ大きくなってた。

 オズの胸に額を当てる。いつの間にこんなに固くなったんだろう? そうだよね、もうすぐ15歳になるんだもんね。


「オズ、大好き」

「僕もアンが大好きだよ」


 つながれた手はとても暖かかった。






 あの日のことを思い出しながら、自分の手を重ねる。

 もうすぐ、もうすぐだ。

 もうすぐ、オズに会える。


 オズとは15歳になる少し前に会ったきりだから、もう半年くらい顔を見てない。半年じゃ顔なんて変わらない、そう思ってたんだけど、私達の時期の子どもって成長がとても早いから、会うたびに少しずつ違う気がするの。

 この間会ったときは男の子から男に変わった感じがしてびっくりした。

 長かった銀髪をバッサリ切って、顔立ちがくっきりした。背もいきなり伸びてて前に会ったときは私とそう変わらなかったのに見下ろされる感じになった。腕とか胸とかおなかとかすごく硬くなってた。騎士様みたいだった。

 声も掠れてた。声変わりするんだって言ってたけど、喉が痛そうで心配だったな。今はどんな声になってるんだろう? 手紙だと声は届かないし。録音魔法で声を送るって手もあるらしいけどさすがにそこまではね。


 私の王子様、早く会いたいな。


 ふうっ、と息を吐く。

 手先が少し冷たくなってきた。温室とはいえ春の初めはまだ寒い。そろそろ戻らないと風邪をひいてしまうねわね。


 そのとき。


 カチャリ……。


 扉が開く小さな音がした。


「ただいま、僕のお姫様」


 もちろん私はオズに飛びついた。






読んでいただいてありがとうございます。


更新が不定期になってきました。がんばります。

こんなかんじでゆるゆるしつつ、そろそろ入学式です。

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