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来る日も来る日も

 来る日も来る日も勉強と体力錬成に明け暮れて早9年。

 僕はやっと15歳になり、明日はいよいよアーネット王国の学院に入学するために国を出る。

 出ていったらしばらくは帰れないので僕の周りはちょっとした葬儀ムードになってる。僕まだ生きてるんだけどな。


「あの病弱でお小さかった殿下がこんなに立派になって……」

「あの悪戯ばかりしていたやんちゃな殿下が賢くなって……」

「あの勉強嫌いの殿下が他国の言語までも憶えるなんて……」


 ……、酷い言われよう。

 でもまあ、事実だから仕方ない。


 アンに会うまでの僕は王子だからというだけのただの男の子だった。王族なんだよなという漠然としたものしかなくて、どうせどこかに縁付くコマだからなあとか思ってた。

 もちろん、貴族の役目はきっちり果たすつもりだったけど、なんだろう、どこか怠けてたんだよね。


 でもアンに会って、アンにふさわしい立派な男になりたいと思ったら、いろんなことを身につけたくなった。


 貧弱な体だとアンを守れないから頑張って走った。走るのは嫌いだったけど、今は結構頑張れる。鉄の鎧を着て10キロ走れとかどんだけと思ったけど、何とか走れるようになったよ。まだ「なんとか」程度だけど。


 魔法も少しは上達したんじゃないかな。これから学院でもっとスキルアップしたいと思ってる。とりあえず氷柱は使えるようになったから、夏になったら使ってみようと思う。きっと冷え冷えで喜んでもらえるはず。ふふふ。


 勉強もマナーも苦手だけど何とか教師の要求するレベルに達したって言われてる。アーネット王国のマナーと知識はこれからだね。こちらは0からになるから頑張らないと。


 アンとは手紙のやり取りと年に三回会ったくらい。会うたびにアンは綺麗になって、すごくドキドキした。それなのにアンは会うたびに抱き着いてくるんだよね。それが嬉しいんだけど。


 学院に入ったら、アンとは毎日会える。

 学年も一緒だし、聞いたところクラスも一緒らしい。

 僕は留学生なので二か月くらい特別な制服になるそうだ。留学生はボルト王国以外からも何人かいるって話だから、今から楽しみ。仲良くなれるといいな。


 いろいろ楽しみなことがあって期待が大きいから僕自身はそわそわしてるんだけど、小さいころから僕の世話をしてくれていた使用人たちは寂しそう。明日からは王宮の別の部署に移って働くんだって。これを機に辞めていくばあやとかにはなんだか申し訳ないと思う。

 でもそう言ったら、ばあやはやんわりと僕のほっぺをつねった。


「子供の成長を喜ばない親なんていないでしょう? 殿下は私の子どもではありませんが、子どものように慈しんで育てさせていただきました。こんなに立派になって。私の誇りですよ」


 忙しい母上に代わって僕を育ててくれた恩人の言葉は僕の涙腺をあっさりと崩した。

 15歳にもなって情けないけど、今日はたくさん泣かせてもらおう。




「それじゃ、行ってきます」


 たくさんの人に見送られて、僕は馬車に乗った。

 母上が泣いているのを見ると胸が痛むけど、心は前を向いている。


 僕はアンと一緒に生きるんだ。


 父上、母上たち、兄上たち、姉上たち、弟たちと妹たち。

 伯父上、叔父上、伯母上、叔母上、いとこたち。

 たくさんの使用人たち、ばあや。

 僕が行くと歓迎してくれた町の人たち。

 本当にありがとう。

 僕は隣の国で、この国のためにもがんばってくるよ。

 可愛いお嫁さんと、お嫁さんの国の人たちも幸せにできるように、頑張るよ。


 だから、みんな、幸せでいてください。

 神様、みんなを守ってください。


 動き出した馬車の中で、僕はただ祈った。









読んでいただいてありがとうございます。


15歳になりました。これからいよいよ学校生活です。学生のほうがイチャイチャしやすいかなあと。

なかなか甘々になりません。あらすじ詐欺でごめんなさい。

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