連鎖
―少年は憎しみを知って、初めて〝死〟へと近づいた。―
―少年は憎しみを知って、初めて〝死〟へと近づいた。―
同じ夢を見た。
傷だらけの海が、鏡の中から出てくる夢だ。
繰り返し、憎い…憎い…と呟く海の声は、大きくなったり、小さくなったりしている。
その声に連鎖していくように、部屋の鏡には徐々にひびが入っていく。
そして、決まって全ての鏡が割れた所で、夢が覚めるのだ。
夢から覚めた僕は、荒い息を吐いては、体中の大量の汗を拭き、息を整える。
夢の中の海の顔は、酷くぼやけていて、いつもあまりよく見えない。
だけど鏡が割れる前、僕は急に悲しくなる。
だって、あの時の海は…。
僕には、泣いていたように見えた。
あの、体育用具室の事件があってからは、五十嵐君達を含め、クラス全員が僕に話しかけて来なくなった。
それは、担任の村上先生も例外ではない。
皆、腫れ物に触るように、からかう事も近寄る事も、まるっきりしなくなった。
どうやら生徒達の間では、僕に対する現実味の無い噂が広まっているらしい。
僕が宇宙人だとか、僕に特殊な能力があるとか、そういうような感じだ。
あれは、本当に僕の力だったのだろうか。
あの時、嫌だと強く願った瞬間、あんな事が起きてしまったのは、僕の願いが叶っただけだったのだろうか。
僕は一体、何なのだろう。
思い当たる事が無い訳ではない。
だからこそ、余計に怖い…。
だが、もし僕の願いを叶えられるのが、海だけだとしたら…。これは海に出会った事と、何か関係しているのだろうか。
僕には海に、確認しなければならない事が沢山ある。
あの事件で起きた事もそうだ。
僕は、海をもっと知りたい。いや、知るべきだ。
それが、例え踏み込んではいけない道だったとしても…。
だけど、あの日の事件以来、海が鏡の部屋に現れる事は無くなった。




