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鏡張りの部屋  作者: 市川滝
6/10

連鎖

―少年は憎しみを知って、初めて〝死〟へと近づいた。―

―少年は憎しみを知って、初めて〝死〟へと近づいた。―


同じ夢を見た。

傷だらけの海が、鏡の中から出てくる夢だ。

繰り返し、憎い…憎い…と呟く海の声は、大きくなったり、小さくなったりしている。

その声に連鎖していくように、部屋の鏡には徐々にひびが入っていく。

そして、決まって全ての鏡が割れた所で、夢が覚めるのだ。


夢から覚めた僕は、荒い息を吐いては、体中の大量の汗を拭き、息を整える。

夢の中の海の顔は、酷くぼやけていて、いつもあまりよく見えない。

だけど鏡が割れる前、僕は急に悲しくなる。

だって、あの時の海は…。

僕には、泣いていたように見えた。


あの、体育用具室の事件があってからは、五十嵐君達を含め、クラス全員が僕に話しかけて来なくなった。

それは、担任の村上先生も例外ではない。

皆、腫れ物に触るように、からかう事も近寄る事も、まるっきりしなくなった。

どうやら生徒達の間では、僕に対する現実味の無い噂が広まっているらしい。

僕が宇宙人だとか、僕に特殊な能力があるとか、そういうような感じだ。


あれは、本当に僕の力だったのだろうか。

あの時、嫌だと強く願った瞬間、あんな事が起きてしまったのは、僕の願いが叶っただけだったのだろうか。

僕は一体、何なのだろう。

思い当たる事が無い訳ではない。

だからこそ、余計に怖い…。

だが、もし僕の願いを叶えられるのが、海だけだとしたら…。これは海に出会った事と、何か関係しているのだろうか。


僕には海に、確認しなければならない事が沢山ある。

あの事件で起きた事もそうだ。

僕は、海をもっと知りたい。いや、知るべきだ。

それが、例え踏み込んではいけない道だったとしても…。

だけど、あの日の事件以来、海が鏡の部屋に現れる事は無くなった。


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