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回想

「食べなきゃ死んじゃうよ、ねえ…………」

 少年は、脱け殻のようになった妹にスープを飲ませようと、スープの入ったスプーンを妹の口にあてたが、口は固く閉ざされており、スプーンの先端さえ入らなかった。

 妹は、両親の死体を見てからずっとこんな感じで、なにも口にせず部屋の隅に人形のようにじっとしていたものだから、痩せこけて、以前は子どもらしくふっくらとした頬も彫刻刀で削ぎとられたようにげっそりとしている。

 部屋のなかには、いつもは閉めてあるカーテンによって遮られていた日光がさしこみ、妹の髪の毛をきらきらと煌めかせていた。いつもならその美しさは妹への愛を心の底からわかせてくれるものだったが、今となってはその美しさは、穴が開いているように感じさせるほど虚ろで光の一粒も宿っていない瞳の闇に殺されてしまっている。

 部屋の入り口付近でもう二人の妹が、ぽつんと立っていた。

「____〇〇〇〇、このままじゃ、しんじゃう」

「こんなこと、どうして…………『    』はこんなこと、言ってなかったのに…………」

 頭のなかは真っ白であった。ただ、現実を受け入れようとする度に真っ白だった頭のなかは黒や紺や青や赤といった色がどんどんと体を蝕む癌細胞のように染みだし、正気ではいられなくなってくるということだけは感じていた。

 少年は立ち上がり、部屋の入り口付近で石のように固まっている妹達をおいて地下室に行こうと歩き出した。何故なら、そこには死の手前まで来ている妹を助けられるかもしれない物があるからだ。

「駄目だよっ…………!そ、それに頼っちゃ…………。」





 ____それは同時に今の状況をもっとねじ曲げて、今の苦しみから逃げることだということを誰もが承知していた。





「…………〇〇〇〇が死んでもいいの?」

 少年がそういうと、もう二人の妹は静かに首を横にふった。

「もう、これしかないんだ…………。」

 この言葉を紡いだときから、少年と二人の妹は知っていた。この先の道を______









 懐かしい、記憶を夢を見てるような感覚で思い出した。いいや、これはもう夢の中であるのかもしれない。何度もここには来ているが、生ぬるい水のなかに使っているような感触しかしない謎の場所だった。

 重いまぶたを開けると、少女は手の中にあった『モノ』に語りかけた。

「……お願い。」

『またやるの?君は更に化け物になるんだよ?』

 少女は『モノ』を強く握りしめた。

「それでもいい。それでもいいの。」

 少女は目の前に現れたドアを開き、その先の世界へ身を投げるように飛び込んだ。よくわからない不気味な感触のなかを落ちていくなか、あの人のことだけを想い、身が焦がされるような痛みに襲われることを覚悟して。







『______待ってね_______」







 また こうして ゆがんだとしても これで いいの…………………… 


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