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パラアマン王国伝  作者: 村野夜市


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アルテミシアの不思議なペンダントに導かれて、三人は、小屋を出た。

そのまま、裏手に回っていく。

小屋の裏には、ベリーの木の茂みがあった。


「わお。

 ベリーだ。」


ベリーが大好物な拾い子は、思わず叫んでから、慌てて自分の口を押えた。

今は、アルテミシアが秘術を使っているのだから。

静かにしなければならない。


それにしても、ベリーは、きらきらな実をたくさんつけている。

とても美味しそうだった。


「こっちだ、って、言ってるんだけどさ。」


アルテミシアは困った顔をして振り返った。

後のふたりは、無意識に堪えていた息を、はあ、と吐いた。

アルテミシアが口をきいたので、安心して口をきいてもよさそうだった。


「こっち?」


ルクスはベリーの茂みを指差して聞き返した。

その茂みは、とても大きくて、おまけに小枝が混みあっていて、まるでちょっとした壁のようだった。


「このむこうには、行けないぞ?」


左右見渡してみても、ベリーの壁は、しばらく続いている。


「あっち、回り込むか?」


ベリーの壁の途切れる辺りを見渡して、ルクスは言った。


「うん。でも、このベリー美味しいよ?」


その声に振り返ってみると、拾い子は、その辺りのベリーを早速摘んで、もぐもぐと頬張っていた。


「あーあ。こらこら。口の端、たれてる。」


アルテミシアは手拭を取って、口元を拭いてやる。

拾い子は、されるがままになってから、にこっと笑った。


「ふたりも食べたら?」


「晩ごはんの前に、そんなの食べたら、ミーロンの釣ってきたお魚、食べられなくなるよ?」


アルテミシアは小言のように言うけど。


「それなら、僕のお魚は、ルクスにあげるよ。

 ルクスはたくさん食べられるものね?」


そうにこにこと返してきた。


「そっか。

 君は、お魚、あんまり得意じゃなかったっけ?」


アルテミシアは、思い出したように言った。

すると、拾い子は、へへっ、と首をすくめた。


「だけど、ルクスは大好物でしょ?

 僕もね、ベリーは大好きなんだあ。」


話しながらも、ベリーをむしりとっては口に放り込んでいる。

またぞろべたべたになった口元を、アルテミシアはもう一度拭いてやった。


「まあ、仕方ないっか。

 だけど、それなら後で、ここのベリーを摘んで帰ろうよ。

 夕ご飯にしたらいいよ。」


「そっか。

 そうだね。

 分かった。」


拾い子はそう言うと、つまみ食いをするのを止めた。


「小屋の中に籠、あったね?

 あれ、取ってこよう、っと。」


あわてて駆けだそうとする襟首を、後ろからアルテミシアは掴んだ。


「ちょっと待った。

 今は、水が先。」


「あ。そうだった。」


「まったくもう。ベリーのことになると、見境なしなんだから。」


「みさかいなし?って、なに?」


「他のこと全部忘れちゃうこと!」


「ああ、じゃあ、僕、みさかいなし、だ。」


にこにこと認めている。

そんなに喜ぶことじゃないんだけどな、とアルテミシアは思ったけれど、もう黙っていた。


「で、さ。

 ベリーの木たちはね、こっちに道があるよ、って言ってるんだよ?」


ほんのなにかのついでのように、拾い子は言った。


「は???」


いきなりな発言に、ルクスとアルテミシアは目を丸くした。


「なに、それ?

 あんた、ベリーの木と話せるの?」


「うーん、話せる、のとはちょっと違う。

 けど、こっちに道がある、って…歌って…」


拾い子は、何やらひとりごとのように呟きながら、とてとてと歩き出した。


すると、灌木の茂みに隠れて、さっきの場所からは分からなかった小径が、すっと茂みを貫いているのを見つけた。


「なんと!」


アルテミシアのペンダントも、その小径のむこうをさしている。

思わず、駆けだした。


「こっちだ!

 行くよ!」


おう!!と、ルクスと拾い子も、アルテミシアの後について駆けだした。


小径を抜けると、滾々と湧く小さな泉を見つけた。

泉の傍には、水を溜めておく木の槽もあって、水がなみなみと溜まっていた。


「わお。」


三人は同時に叫んだ。

ルクスは、桶を振り回し、拾い子は柄杓を振り回し、アルテミシアは両手を振り上げて、水槽の周りを三人並んで、奇妙な踊りを踊った。

笑いが込み上げてきて仕方がない。

互いの肩や背中をバシバシと叩きあう。

一人前に任務を達成した喜びだった。


「おう。これなら、どざばーっ、だぜ?」


ルクスは水槽に桶を突っ込んで水をたっぷり汲み上げた。


ほう、と後のふたりは、桶に並々と入った水を見て、感心した声をもらした。


「さって。

 帰るか。」


「そうだよ。

 ちゃんと水を持って帰るまでが任務なんだから。

 こぼさずに持ってよ?」


「へいへい。

 ここは俺の出番だぜ。」


ルクスは張り切って桶を抱えた。


来るときには、ベリーのつまみ食いで寄り道をしたり、道を探したりしていたので、遠いような気もしたけれど、実は、泉は、小屋のすぐ近くだった。

なるほど。

小屋を使う人々は、普通に、いつもそこを水汲み場にしていたのだろう。

なので、帰りはあっという間だった。


小屋に戻った三人は、水瓶に桶の水を移すと、そのまま籠を取って、ベリー摘みに行った。

そして、たっぷり、籠いっぱい、ベリーを摘んだ。






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