序ー6話
両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。
そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。
この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。
「石塚くん、なんか2人だけになっちゃったわね!?」
「そうだね・・・」と女の子と2人だけで少し緊張した面持ちになってしまった。
女子と2人だけというのはヒデにとっては今までにはありえないシチュエーションで奇跡の時間でもあるのだ。
「ねえ、私、あなたの隣りの席なのに全然話そうとしてくれないでしょ。ハーフだから? それとも女性嫌い?」とダイレクトに聞いてきたのだった。
嫌いというよりは逆に密かに好意を持っているヒデではあったが、異性と話すということに慣れておらず逆に粗相をして嫌われたくないという理由で自分からは接触することを避けていたのであった。
「いや、そんなことはないよ!でも、いつも男子連中が君のところに寄ってきてるからお邪魔かなと思って。」
「そうなのよね〜 ごめんごめん! それじゃ、ご近所のようだしお近づきの印に近所のカフェでお茶でもしない??」
『えっ 女子と2人だけで?? マジ?? それもこんな美人の女の子と??』と思うと緊張のあまり言葉が出なくなってしまった。
その表情の変化を察したエリカは、
「ははー 君はきっと女の子慣れしていないんだな。」と言って薄笑いを浮かべている。
「大丈夫よ!取って食わないから!さあ、行きましょう!」と言って、
手を引っ張って駅チカのファミレスに強引に誘導して行ったのだった。
「ファミレスだったら、2人だけでも怪しくないでしょ?」と言うと窓際のダイナー席に座った。
ヒデは、エリカに嫌われたくない一心で借りてきた猫のように強引な彼女についてきてしまったのだった。
「私、パフェ大好きなの! 苺パフェにしようかな。石塚くんは何にする? ここは私が誘ったから奢りよ。」
「えっ、それは悪いよ!」
「あっ、やっと喋ってくれた!」と手を叩いて喜んでいる。
「じゃ、僕もチョコレートパフェにするよ。」
オーダーが済むと、
「ねえ、石塚くんは何て名前なの? 私はエリカよ。」
「えっ、僕はヒデアキ、みんなにはヒデって言われているよ。」
「へえー、ヒデね。じゃこれからヒデって呼ぶわね。私はエリカって呼んでね!」
『えっ、マジかよ 下の名前で呼び合うってどういうこと?』とさらに緊張してしまったのだ。
「じゃ、ヒデ、ヒデはどんなアニメが好きなの?」
「アニメ?」
『いきなりアニメの話?? まあ、話しやすい話題だけど・・・』
「そうだね、僕は異世界ものとかかな。君は?」
「へえー 私もよ!冒険者とかによく出てくる強い女性剣士に憧れているの!」
「えっ、奇遇だね!僕もだよ!!」と興奮して積極的になっている自分に我ながら驚いたのだった。
「だから西洋剣術も習っているのよ! ロングソードを持って振り回すのって気持ちいいのよ!」と笑顔が溢れていた。
「へえー、マジ?すごいね!!君がやるとカッコ良さそうだね!!」とヒデも興味津々になっていた。
そう言われてみると、エリカは日本人が白人になったような体型で大きめの目も相まってまるでアニメに出てくるヒロインキャラクターそっくりなのだ。
そしていわゆる白人のようにグラマラスではないが体型的にはバランスが取れた日本人のワクにハマる。しかし顔は小さめ、足も長めで、いわゆるいいとこ取りをしているカワイイセクシー系の女の子であった。
身長は165cmぐらいの細身に見える。かといって日本人の女の子によくありがちなガリガリではなく、足腰はがっしりとした筋肉質なのだ。
「僕は西洋の中世みたいな世界に憧れがあるんだ。」と下を向いて小さな声で言った。
「私もよ!! 趣味が合うわね!! 騎士が着ているプレートアーマーってカッコいいわよね!!」
「うん、そうだね!! すごく美しいよね! 僕も西洋剣術やってみたいな・・・」とボソッと言ってしまった。
「えっ、ヒデも興味あるのね!? じゃ、私が特別に教えてあげましょうか!!?」と言いながらヒデの目を覗き込んでいる。
「えっ、君に??」と言って驚きのあまりエリカの顔を見たのだが彼女の目の輝きにやられてすぐに下を向いてしまった。
「ヒデって、本当に女の子に抵抗があるのね!? でも、慣れてないだけだと思うわ。」
「うん、そうなんだよ。僕は孤児みたいなもんだから・・・中学までは友達もいなくて・・・」
「今はいるじゃない!? あとは女子に慣れるだけよ!大丈夫、カンタン! 取り敢えず私で慣れればいいんじゃない!?」と、なぜか心配してくれているようなのである。
「えっ」顔が思わず赤くなってしまった。
「わかったわ!! 私が週末に剣技を教えてあげるわ! 私がいつも自己鍛錬している場所があるの。」
「そうなんだ!? わかった。ありがとう。じゃ、よろしく頼むよ・・・」と驚くことに了承してしまったのだった。
そして、2人は連絡先を交換してファミレスを出た。
「じゃ、ヒデ、今日は楽しかったわ! 私ちょっと買い物があるからここでバイバイね。」と言って颯爽と去って行ったのだった。
その場に残されたヒデは、この信じられない美少女との急展開に意識が朦朧としており、今起こったことが信じられないといった状況であった。
『マジ?? これってエリカさんと2人だけで訓練をするってことだよな?? チョーヤバくないか!? だって憧れの女の子だよ。』と浮かれて放心状態なのであった。
すると、同時にまるで子供のような態度の情けなさで急に恥ずかしくなったのであった。
『しかし、奢ってもらったのにお礼も言えなかったじゃん!! ほんと、僕って情けない・・・こんなダサいのをどうにかしないとな!』
しかしながらエリカと話している時間はとても楽しいひと時であった。
『そうだな、せっかく彼女が言ってくれたんで、ちょっと彼女の好意に甘えさせてもらって少なくとも女子と普通の会話ができるまでにはなりたいしな。これからは自分でも意識して積極的に行こう!!』と気持ちを切り替えたのであった。
しばらく彼女との余韻を噛み締めるためにその場所に佇んでいたヒデであったが我に返り家路についた。
マンション前まで来て自動ドアを前に何かの気配を感じて後ろを振り返ると、
なんと、またあの大きな漆黒の猫がいたのであった。
『また、あの猫か!? しかも もう1匹も! なんか喧嘩してるんじゃないか!!』
甲高い鳴き声の方向を見ると奥にもう1匹同じような漆黒の猫がいて、お互い威嚇しあって激しくゴロゴロと鳴いていた。
2匹とも凄い剣幕で今にも襲い掛かりそうな勢いである。
『やば!黒猫2匹!? 縁起悪いし厄介そうだから早く入ろう!』と思い、すぐさまマンションの中に入っていったのだった。




