序ー36話
両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。
そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。
この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。
その白いガラス張りのビーチレストランはビーチの真ん前に建っていた。
『しかし、こんな海の真ん前にあるレストランなんて日本では考えられないなー…
そうか!地中海は波があまりないからなのか!?』と思いながら入っていくと、
中も白い椅子と白いテーブルでコーディネートされた真白な空間であった。
「そうか!? ここはビーチレストランだから魚がメインだよね!?」
「そうよね!ヒデは魚ダメだもんね!」
「でも、あのファミリーが食べてるようなカラマリ?って言うのかな?イカのフリッター
あれは美味しそうだな!!」と言って、前に座っている女性の料理を指さした。
「確かに!!じゃ、あのフリッターの盛り合わせとサラダを取りましょうよ!」
「そうだね!それとガス入りウォーターのアクア・コン・ガスがいいな!」
「海自体の雰囲気はさほど日本とは違いがないように感じるんだけど・・・
やっぱり、このいかにもリゾートっていう演出が上手いんだよね〜!! これってなかなか日本人にはできないんだろうね〜」
とフリッターを摘みながらヒデが真面目に分析中のようだ。
「このフリッター美味しいわね!! でもしょうがないわよ! 日本には日本ならではの美しさがあるから!」
エリカは違いがわかる女風に言い出し、「だから、最近インバウンドで海外から旅行者がたくさん来るんしょう!? 外国の人から見ると逆に変わってて魅力的に写るのよ。」
「僕はヨーロッパの方が魅力的に感じるんだけど、こっちの人からすると日本は違うということが魅力になって僕の逆版になるのかな? まるでテーマパークのアトラクションのように珍しいもの好きっていうのか怖いもの見たさっていう感じなんじゃないのか!?」
「そうだと思うわ。私はそもそもどちらにも属さないからそう思うわよ! でも、ここのゆったりとした雰囲気はいいと思うわ!長く居たいって思えてくるわね。」
「まあ、明日はまたここアンダルシアと違ったカタロニアだから比べてみようよ! スペインって今でさえ1つの国になってるけど、昔はいくつかの国に分かれていてバルセロナがある地域はアラゴン・カタルーニャ連合王国って言う1つの国だったらしいよ。っていうのは図書館で調べたんだけどね。」と自慢げに言うと笑った。
「なるほど。でも、このアンダルシアってどこかしらアラブの影響を感じるわ!」
「へえー エリカそんなことわかるんだ?? そうだよ!ここはグラナダ王国っていうアラブ系に支配された時期もあったんだってよ。」
「もちろんよ!! そういった知識はそもそもインプットされているから。」
「そうなんだね!? 便利だな〜 しかし羨ましいよなー 君の頭どうなってるんだろう?? そうそう、食べ終わったら、この海岸線を路線バスが走っているから、ガイドブックでも有名なトレーモリーノスあたりまで行ってみようよ!! ビーチリゾートってものを堪能できそうだから!」
と言う具合に、今日1日はビーチで楽しむことにしたのであった。
そして、夜は予約しておいたフラメンコレストランで食事をしてから、部屋で仮眠し明け方前にバルセロナに向かう予定となっていた。
「ピーピーピーピー」
午前4時のアラームが鳴った。
「あっ 時間になったわよ!」とエリカが先に目を覚ました。
ヒデも移動で疲れた身体ではあるが目を擦りながらベッドから起き上がった。
彼の頭の中ではまだフラメンコの余韻が残っているのだが、
「ヨシ!じゃ、準備して出発しよう!!」と気合が入った。
2人は着替えが済むとジェットを抱き上げ人がいないまだ暗いビーチへと向かって行った。
そして「シェイプシフター・トランスファー!」とエリカが号令を掛け、また長距離飛行用のスピーダーに変形した。
「さあ、また、行くわよ! バルセロナまでだったら一っ飛びね! ヒデ、つかまっていてね!」とエリカが元気に言うと、地中海へ向けて低空で飛び立っていった。
海岸線を通って飛び続け、遠くにようやくバルセロナの街が見えるとバルセロナ港あたりから内陸に入っていった。
人影が見当たらない静まり返ったドックヤードに降りてジェットを元に戻した。
「さっき上空から市内を見たら、あのサグラダファミリアを中心に街が正方形のまるで碁盤の目のように区画整理がされた町並みになっていたわね。」
「そうだね、驚いたよ!!僕、すごくこの街には興味があるんだ!」
「楽しみね!!」
2人は地下鉄が動き出した頃にバルセロネータから乗り換えながらダイアゴナルに着いた。
地上に上がると、
「へえー ここはアンダルシアと違ってまた全然違うベージュ色の街なんだね!」
「そうね、やっぱりそもそも違う国だったって言うのがなんとなくわかるわ。」
「ねえ、エリカ。」
「何?」
「僕はこうして君とこんな旅行ができるのが凄く嬉しいよ!ありがとう!」
「いきなり何言っているの!?」と恥ずかしそうである。
アントニオ・ガウディの作品はカサ・バトリョーからスタートしカサ・ミラを見ながらついにサグラダ・ファミリアに到着した。
「やっぱりすっごいねー!!」
「そうね!まさに芸術建築って感じね!!」
そして教会内部に入った。
「中もすごいねー まるで母の胎内のような・・・」
「そうね、こういう異世界ってありそうね!」
「へえー これ尖塔の部分は階段で登れるみたいだよ、行ってみようよ!」
2人は螺旋状に作られた手作り風の狭い階段を登っていった。
塔の隙間からバルセロナの街を見下ろせるのだ。
「これがバルセロナね!!」
「向こうにロンドンのガーキンみたいな丸っぽい高いビルが見えるね!」
「ほんとだ!」
「僕はこんな街に住んでみたいなー」
「そうね、楽しそうね!」
「こうやって2人で同じものを見て同じ経験をできるのって素晴らしいね!」
ヒデは、この冒険旅行に何故か幸せを感じていたのだった。
「次は最後のグエルパークだよ!」
「そうね、行きましょう!」
「このグエルパークもすっごくわかるよ!! この世界観!まるで直線が存在しないような世界。」
「室内も曲線で構成されているから、また母の胎内のような感じがするわね!?」
「これって、、造られた当時は住宅だったらしいよ。すごい発想だよね!」
「こんな世界に住むとなんでもない日常が楽しくなるかもね!」とエリカも嬉しそうだ。
「流石に結構疲れてきたね!僕らかなり歩いたから・・・ じゃ、ホテル街があるチノ地区まで戻ろうか!?」
と再度地下鉄で移動することにした。




