序ー35話
両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。
そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。
この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。
『酔っ払って無防備なエリカも可愛いな・・・』と意識が薄れていく中、ヒデは夢心地になっていった。
毎日同じベッドで2人は添い寝しているはずなのに、環境が変わるとやけに意識して興奮している自分がいたのだ。
半ば閉じている瞼越しにボーッと綺麗なエリカを眺めていたのだが、仰向けだったエリカが、うつ伏せになろうとしたのか?向きを変えながらヒデに覆い被さってきたのであった。
通常はポニーテールで縛っている髪がほつれて顔を覆っている。
彼女の胸の柔らかさと体温の温かさが感じられ耳元には寝息を感じた。
たまにエリカからは軽くキスされた時にも恥ずかしくて自分からは絶対にできないヒデであったのだが・・・
彼女の寝顔を見ているうちに、どうしても唇を合わせたい誘惑に駆られてしまったのだった。
『しかし、不思議だな・・・僕はこうやってエリカに対して愛おしいという気持ちが昂っているのに、彼女ときたら・・・僕を好きだと言ってくれて、危険からも自分の命を犠牲にしてまで守ってくれるのだが・・・なんて表現したらいいのか?なぜかビビッとくる電流みたいな熱い思いは感じないんだよなー・・・例えて言うなら僕に忠誠を誓うアンドロイドっていうのかはたまた尽くしてくれるメイドと言ったらいいのか・・・ そうか! メイドなのか・・・』
ヒデはそんなイメージをしていたら何故か気持ちの昂りを抑えきれなくなってきてしまった。
『眠ったフリをして口付けするのはアリなのかな??』
『アリだろうな・・・』
彼女の目線を感じては絶対できないことであったのだ。
彼は隣にあるエリカの顔に向かって少しづつ顔を寄せていった。
そして、人形のように眠るエリカの目が開かないことを確かめながら、ゆっくりと犯行に及んでしまったのだった。
彼女の唇は温かった。
それに気づいたエリカは「うーん・・・」と言いながら向きを変えて、覆い被さった状態から、また仰向けになり離れたのであった。
『ヨシ!気づかれなかったな!?』と思うと、なぜか征服したような満足感が体にみなぎり眠りに落ちて行った。
カーテン越しに陽の光が差し部屋が暑くなっていた。
なぜか開いている窓から海風がそよぎヒデはふと目を覚ました。
『あっ そうか、ここはスペインなんだ!』 周りを見回してみると、ジェットが窓枠に座りこちらを見ていた。
そして、いつもなら早起きのエリカがまだ寝ているのだ。
『そうだ、僕らは一応カップルなんだからいいんだよな!!』と自分に言い聞かせて、昨晩やってみて抵抗力がついたキスを再度試すことにしたのだった。
ヒデは、未だ眠っているエリカの顔を見つめると思い切ってキスをした。
そして「おはよう!」と声を掛けた。
「あっ 朝なのね?? おはよう!! 私、かなり酔っ払っちゃったみたいね・・・」と言いながらキスには気づかなかったのか少し怠そうな酔っ払いの表情であった。
「サングリアってジュースみたいなものかなって思ってたんだけど、やっぱり少しでもアルコールが入っているとダメだね〜」とヒデも頭を掻いている。
「あっ 私やっちゃったわね〜!!ガーディアンとしたことが・・・無防備に爆睡しちゃったわ!! でもよかった!! ジェットが見守ってくれてたのね〜 私、不覚だったわ! ガーディアン失格だわ!」
「そんなに焦らなくても大丈夫だよ。僕らはこうして無事なんだから。じゃ下にブレックファースト食べに行こうよ!!」と1人焦っているエリカの気を逸らすために先立ってホテルのカフェテリアに降りていった。
「これからのスケジュールだけど、今日はフェンヒローラの駅からバスが出ているから、それであの白い町のミハス・プエブロに行って、明日はちょっと飛んでカタロニアのバルセロナに行きたいんだ!」
「じゃあ明日は移動するのね?」
「まずい?」
「大丈夫よ! バルセロナってあの有名な建築士のアントニオ・ガウディの建物がある町でしょ?」
「そうだよ!図書館で調べてみてあれは絶対にみたいと思っていたんだ!! すごい芸術だよね〜!!」
エリカはいつになく積極的なヒデに驚くと同時に嬉しい気持ちになった。なぜなら、今までは他人が決めたレールに乗るだけだったからだ。
「私もよ!!あのなかなか完成しないサグラダ・ファミリアっていうカワイイ教会には絶対行ってみたいわ!!」
と珍しくエリカの言葉にも力がこもっている。
そして、バスで白塗りの街ミハス・コスタに着いた。
「へえー 海を見下ろせる山の上にあるんだね!?」
「まあ よく絵葉書にある光景はあそこだね!! 行ってみようよ!」
「ええ、行きましょう!」と手を繋いで歩いて行った。
「ねえ、エリカ、2人の記念写真撮ってもいいかな?」
「ええ、もちろんいいわよ!」
ヒデは、その白塗りの街をバックに2人の旅行記念写真を自撮りながら嬉しそうである。
「そうそう、さっき通ったところに眺めがいいカフェがあってチュロスを食べられるみたいだから行ってみようよ!」
2人は観光地を満喫した後、バスでフェンヒローラに戻り、今度は海沿いのミハス・コスタに足を伸ばした。
ハイウェイ沿いに綺麗なビーチが続くヨーロッパ屈指のビーチリゾートでありハイウェイの山側にはスペインらしいカラーリングのリゾートマンションが立ち並んでいる。
「あっ あそこにビーチレストランがあるね! 行ってみようよ!!」




