序ー33話
両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。
そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。
この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。
「あっ お帰り!」
「ただいま! 早かったね! コスプレ衣装見つかった?」
「見つかったわよ! ヒデにも見せてあげるわね! ちょっと待って!」と言って嬉しそうにバスルームに入って行った。
机に座ってしばらく待っていると出てくる気配を感じて振り返ると、
「ジャーン!! どお??」
『やば!! カワイイー!!!』ヒデの心臓はドキドキと激しく打ち飛び出しそうな勢いであった。
エリカはホワイトレースのフリルが付いたブラックレオタードのバニーガールコスチュームに編みタイツにチョーカー そしてウサギ耳を付けていたのだった。
「エリカ、それ やばいよ!! やばすぎて僕はみんなに見せたくなーい!! でも チョーカワイイ!!」
「気に入ってくれた??」
「もちろん、家の中ではそれでいてもらいたいぐらいだけど、そうなると・・・」
「そうなると 何??」
ヒデは下を向き顔を赤らめてしまった。
「ヒデったら カワイイ〜!! それって私の魅力にノックアウトって感じね!!」と悦に行っている。
「やっぱり、バニーガールを嫌いな男子はいないのよね! あのイベントに部長もバニーで出るらしいの」
「へえー 部長のバニーも見てみたいな!」
「あら、だって、ヒデも会場に来るでしょ!?」
「あっ そうなの?そう言うことになってるんだ!? みんなで応援に行くんだね!? じゃ楽しみにしておくよ!!」
そして「そういえば、ヨーロッパのどこに行きたいか決まった?」とエリカから聞かれてしまった。
「そうそう、図書館でも色々と資料を見て悩んだんだけど、行きたいところは幾つかあってね。でも、君と行く初めての海外だから、まずはスペインのアンダルシアがいいかなって。どうかな??」と言って、ガイドブックにも載っている観光写真をエリカに見せた。
「へえー いいところね!! でも、スピーダーの一回の飛行距離には限界があるから、色々な場所を経由して行かないとならないの。6時間の場合は2箇所は必要ね!」
「なるほど〜 そういうことなんだね!?」
と言って、ヒデは世界地図を出してきた。
「あんまり目立つと不味いんだろうから・・・距離的に考えるとクイーンシャーロット島あたりとニューファンドランド島あたりがいいのかな?? ねえ、エリカ、地上に降りたらどのぐらいの待機時間が必要なのかな?」
「そうね、2時間飛んでまた活性化させるから30分あればいいかしら。 それと空気の抵抗をモロ受けるから天気が穏やかな日じゃないと大変かな。」
「わかった、じゃ、天気予報を見ながら計画立ててみるね! 僕、小さい時から引っ越しが多かったから、大きな登山用のリュックがあるんだ。それに2人用の荷物を入れて僕が背負うよ。」
「わかったわ、じゃ準備はよろしくね!!」
「なんか楽しくなってきたな! 計画を立てるって楽しいね!」
登山用の90Lのリュックと言えば、かなり大きなリュックになるのだが、2週間ほどの2人旅行となると容量が足りないぐらいだ。しかしながら、逆にその期間に必要な荷物を取捨選択してパッキングするのはヒデにとっては楽しみであった。限られたリュックの空間に収まるように絶対必要なものと持って行きたいが必須ではないものを区分けし厳選し、無駄な空間を空けずにパッキングするという工夫に楽しみを感じていたからである。
「ねえ、エリカ、明日から2週間は天気予報によると高気圧が来ていていい天気が続きそうだよ! そろそろ決行する??」
「明日から2週間ね! その後コスプレイベントがあるからタイミング的にもいいわね! 目立たないように夜の飛行になるけどいいかしら?」とやっと出発日が決まったのであった。
そして、ついに出発日が来た!
「いやー 夜の飛行は気持ちいいねー!!」と星空の下スピーダーの後部座席でエリカに捕まりながらヒデは太平洋を見下ろしているのだった。いつものスピーダーはバイク型であるが、今回は長距離移動用の空気抵抗を受けないクローズドタイプに変わっていたのだった。
「これって、確かにこの体勢を2時間以上継続するのはキツイかも!?」
「私に2時間抱きついているのってどんな気分??」とエリカは笑って聞いてきた。
「いい気持ちだよ!安心するっていうか。」
「実は私もあなたがくっついてくれていると安心するわ。」
エリカはいつも通りの服装だがヒデはデニムパンツにパーカーそしてその上にウィンドブレーカーも着込んでいた。真夏ではあるが夜の海上は気温が低いのだ。
2人が乗るスピーダーは星空の下 猛スピードで飛んでいった。
「そろそろクイーンシャーロット島が見えてくるわよ!」
そこは赤毛のアンの物語で有名ではあるが、イメージに反して太古の大自然に包まれた神秘的な島であった。
目立たないように原生林が生い茂る深い森の上空をゆっくり飛び着地地点を探している。
「あっ、あの湖の辺りだったらいいかも!」と湖面に輝く月を見ながら降り立った。
「ヒデ、疲れた??」
「大丈夫だよ、エリカは?」
「私は大丈夫よ。しかし、静かね!ここ。」




