序ー31話
両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。
そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。
この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。
そしてエリカは出かけて行った。
『では僕は、100円ショップで日用品でも揃えながら図書館に向かうとするか!』
久々の単独行動と言ってもジェットが後ろから着いてきている。
慌しかった日々が過ぎて、気づかなかった時間の流れがどっと重くのしかかってくるような気分になった。
『暇を持て余すってよく聞くけど、こんな心境なんだな・・・』と通りを行き交う車をぼっと見ながら歩いていた。
「石塚君! 石塚君だよね!?」
名前を呼ばれた方向に振り返って女性の声を追った。
『あれー どこかで見たような女子…あれはもしかしたら加藤じゃないのか!?』
その女性は中学時代の男子学生にとってのマドンナ的存在であった加藤であった。
『半年会っていない間に大人ぽくなったな〜』というのが咄嗟の印象である。
「あっ、加藤だよね!? 久々だね!」
「そうよ!石塚くんは元気だった??」
「うん、まあね。君は?」
「私ね、高校に行ってから色々あってねー 彼氏と別れちゃったの・・・」と恥ずかしそうな表情に変わった。
「えっ 高島と??」
「そう・・・だから、せっかくの夏休みなんだけど1人なのよねー・・・」
「そうなんだ? でも、家はこの近くじゃなかったよね?」
「うん、暇だから図書館にでも行こうかと思ってきたのよ。」
「へえー 奇遇だね!僕も今行くところなんだ!」
「えー そうなの!じゃ、一緒に行きましょうよ!!」
加藤は、ヒデにとって中学時代の憧れの女子であった。
中坊ながら大人っぽくて体育着の上から見える胸の輪郭が彼をドキドキさせていたのだった。
黒髪のアイドル風ロングヘアーが似合う上品な顔立ちで大きな目がキラキラ輝いていた。
「最初見た時は、石塚君ぽかったけど、大人になったというかカッコよく見えたから別人かなとも思ったんだけど、声をかけてみたの。」
「あっ そうだったんだ? ありがとう!」とはにかんだ。
『そうか、やっぱり僕は成長したんだな』と彼女の言葉はドキドキしながらも嬉しかった。
中学時代のヒデであれば、そう言われても無言であったため会話はそこで強制終了となっていたのだが、
「そういう、加藤も、前よりももっと綺麗になったよ!」とか歯が浮くようなことを言ってしまったのであった。
『あれ、僕大丈夫か??そんなキャラだっけ? これも成長したってことなのか??』
「図書館ってよく行くの??」
「いいや、今日が初めて。今日から夏休みだから調べ物があってね。」
「君はよく行くの?」
「そうね、うちで勉強する気分にならないから、週末はよく図書館に行って勉強してるのよ。中にカフェもあるでしょ? 便利だしね。良かったら一緒にランチしない??」
「へえーそうなんだね。加藤の高校は私立の進学校だから勉強大変なんでしょ? 僕もどうせ昼は1人だからいいよ。そうしよう!」
「そうね、親もうるさいのよねー。じゃ、12時にカフェで待ち合わせね!」
「わかった!」
と、図書館に入って2人は別れた。
『えー 憧れの女子と普通に会話ができてるじゃん!! 僕、どうした??』
しかし、心臓はバクバクと今にも破裂しそうな鼓動が発生していた。
『しかし、わざわざ声を掛けてくれて、ランチに誘ってくれるなんて・・・これってもしかしたら脈アリなのか??』
館内でも余韻が残り気持ちがザワついてしまっていたのだが、いつの間にか欧州コーナーに行って無意識で目的の下調べをしている自分を発見できた。
そして窓から外を眺めてみると、ジェットは入り口付近に大人なしく座っているのが見えていた。
『やっぱり、スペインのアンダルシアっていうところに行ってみたいな!! でもスイスやスロバキアみたいなまるでハイジが出てきそうなところも魅力があっていいよな〜 そんなフォークロアカルチャーの町はまるで異世界の冒険者がいるような中世風の雰囲気が好きなんだけど、アンダルシアの青い空にホワイトに塗られた家々が並ぶ風景もやっぱり捨て難いしな〜 まあ、最初の夏休みだし、まずはサマーバカンスぼくエリカとヤシの木が並ぶビーチリゾートにでも行くっていう方がいいのかな!?』
と、ヒデなりの行き先候補が決まったのであった。
昼になったので、最上階のカフェに行ってみるとすでに加藤が立って待っていた。
「あっ ごめん! 待たせちゃったなか?」
「大丈夫よ!今来たところだから。 ここのカフェ意外と安くて美味しいのよ! 私はナポリタンとコーヒーにするけど、石塚君は?」
「そうだね、僕もプロのオススメみたいだからそうしようかな?」
「絶対正解よ!」と言ってにっこり笑っている。
2人はトレーを持って窓際の席に座った。




