序ー24話
両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。
そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。
この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。
そして合宿遠征当日となった。
部員はJR駅前での待ち合わせである。
「おはよう!」とすでに真面目な工藤斉藤組は到着していた。
エリカが合流し、少し間を置いてヒデも到着した。
須藤と浅井、それに清水と阿部の4人は最寄りの駅から来るため駅ホームで待ち合わせとなっているようだ。
「あれ、浜田先輩は? やっぱり田中部長は来られないんでしょ?」と野崎が聞くと、
「浜田先輩は、田中部長のコスプレイベントの手伝い兼カメラマンなんだって。まるで下僕みたいよね!あの2人って不思議な関係ね!」と工藤斉藤も怪訝そうな表情である。
「だから、今回の合宿は私ら2人に任せるっていうのよ〜
一応 概要をみんなにメールで送ったわよ!見てくれた?」
「うん、ありがとう!!見たよ。」
「そう? 男子5人、女子3人だから、そもそも2部屋予約済みだから、もちろん男女に分かれるわ。
で、朝食はバイキング、昼はどこか外で、夜は一応豪勢なディナー付きの1泊旅行よ。で、駅からはバスね。
会議室も借りようかと思ったんだけど、有料だったから、男子の部屋でミーティングすることにしたわ!いい?」
「わかった、段取り色々とありがとう!大変だね!あいつらちゃんとやるかね!?」と一応ヒデが2人の苦労を労っている。
そして、珍しく無事に合計8人が合流した。
特急に乗ってからは約1時間半で日光駅に到着する予定だ。
車両内は左右2・2の席のため、はみ出された野崎はなぜか流れで石塚と同席になったのだった。
「そうなるよね〜。だって、須藤・浅井、阿部・清水はセットみたいじゃない? 野崎さんは窓側がいいんじゃない?」とヒデはカップルに見えないように配慮しながらエリカを思い遣った。
「石塚いいなー!! 野崎さんの隣で!! 俺が一緒に座りたかったけど浅井がいるからなー」
「俺は別にいいぞー!!」と浅井がわざと反応した。
「じゃ、そのうち代わろうぜ!」とニヤけ顔になった。
「私、この田園風景っていうのかな? こういう自然の風景って好きなの! 今住んでいるところでは見られないじゃない?」
「そうだね、僕も好きだよ!やっぱり自然はいいよね〜」
などど、2人は仲良しカップルに見えないように当たり障りがない話題でとりあえず時間を過ごすことにしたのだった。
しばらくリラックスしていると須藤が来た。
「じゃ、石塚、交代しようぜ!! 野崎さん宜しくね!」
「あ、わかったよ! じゃ、僕は浅井と座るよ。」
「野崎さん、温泉はもしかして初めて?」と会話はウキウキである。
「そうよ、」
「温泉はいいよ〜 俺は露天風呂が大好きなんだ。」
という具合で、日光までエリカを独り占めしている状態であった。
2人の会話を聞きながら、ヒデはもどかしい気持ちではあったが、僕らがカップルだということが知られないことが最優先だからなと言い聞かせたのだった。
『やっぱり、エリカが他の男と親しげに話していると気持ちが落ち着かないな・・・僕らの関係は短い間でこんなにも深くなってしまったのか・・・』と改めて気がついたのだ。
そして、一行は駅弁を食べながらまるで中学生の如くエリカを囲んで盛り上がりをみせているため、逆に工藤斉藤コンビは男子たちに向けて軽蔑の眼差しを送っていた。
日光駅に到着し、今度は奥日光湯本温泉までのバスに乗り込んだ。
今度はいつの間にか阿部が野崎の隣に座っていたのだった。
「おっ エリカちゃん!宜しく!! 日光合宿楽しみだね!!」と言って、またもや須藤のように会話を始めた。
『今度は阿部か! どいつもこいつもエリカに惹かれているんだな〜 まあ、今日はいいか大目に見よう・・・』
いろは坂は急なワインディングでバスの巨体が手慣れた運転手によりまるでゴーカートにようにS時の連続をリズミカルに曲がっていった。
横目で見ていると、エリカもこの急な坂の連続には驚いているようである。
「エリカちゃん、すごい坂だね!!怖かったら俺に抱きついていいからね!」と阿部が言っているのが聞こえた。
ヒデは、『あいつ、アホじゃん、エリカがこんな坂で怖がるはずないじゃん!!』と内心思っていたのである。
いろは坂が終わり、噂の中禅寺湖が見えてきた。
「あ、これが中禅寺湖ね!? 風情があって綺麗な湖ね!」と野崎が言っているのが聞こえた。
どうやら、エリカは阿部の口説きを相手にせず車窓からの眺めを堪能しているようだ。
そして、視界は一気に開け戦場ヶ原が見えてきた。
「白樺の森って綺麗ね〜」と見入っているようだ。
という流れで、阿部の積極的なアプローチの甲斐もなく目的地である湯の湖に無事到着してしまった。
「みんな、着いたぞ!!」
「へー すっごく良さそうなホテルじゃん!! 工藤斉藤やるな!!」
その反応を聞いた工藤斉藤コンビは鼻高々にチェックインを済ませた。
「はいはい!皆さーん! 401が男子、402が女子だからね〜!!
部屋に着いたら、準備して15時に男子部屋の401に集合ね!! ミーティングするから。」
401の女子部屋では、
「野崎さんて男子達に人気ね!! やっぱり美人は得よね!」と早速工藤に言われた。
「いえいえ、そんなことないわよ。私、あんまり男子に興味ないから。少しうざいだけよ。」
「そんなものなのかしら? それはそうと、部長にお願いされたメイドコスプレってどうするの?
あのイベントってそろそろじゃない?」
「そうなのよねー 実は困ってるのよ。衣装をどうするかって・・・」
「コスプレ衣装なら私たち詳しいわよ!」
「えっ あなた達もやるの??」
「レイヤーじゃないけど、見るのは好きよ!だって2・5次元って夢があって楽しいじゃない!?」
「そうなんだ、じゃ、おすすめを教えてもらえると嬉しいわ!!」と急に笑顔になった。
「ついでに、野崎さんにお願いがあるの。」
「えっ 何?」
「メイドコスプレの衣装を見繕う代わりに、私たちのマンガのヒロインのコスプレもしてもらいたいのよ! 2人で話したんだけど、浜田先輩がコミケに出すとか言ってるじゃない!? まあ、経験としてはいいと思うんだけど、でも、やるやら真剣にやりたいのよ!やっぱり2・5次元のヒロインがブースにいた方が分かり易いし人も集まると思わない!?」と、いつになく工藤斉藤の表情は真剣であった。
「この前、見せてもらったマンガのあの主人公の女の子ね?」
「そうそう! あの姫って野崎さんがやると絶対に似合うとおもうの!!」
「あの姫、かっこいいわよね!! うーん、そこまで言うのなら、私でいいのならお手伝いするわ!」
という流れになってきたのだった。




