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ドロイドサイリウム ー 漆黒の猫 序の章  作者: 三海怜


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序ー2話

両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。


そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。


この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。

そして、めでたく自立の時が来た。

叔母の家の6畳一間にあった荷物をまとめ、隣町にいる親戚の叔父さんが車を借りて引っ越しを手伝ってくれたのだ。


「ヒデアキ、よかったな!若くして独立するのはいいことだよ。俺は羨ましいよ!

もし、なんか困ったことがあったらなんでも言ってくれよな!」

この叔父さんは親戚の中でも一番若く今時な親切な人だった。


『ここが僕の初めてのお城なんだ!! とは言っても、荷物は布団に学習机、服が少々しかないけどな・・・

居候していた家の叔母さんには手切れ金的な入学祝いをもらったから、それで家のものを足すとするか!?  まず何がいるんだろう??』


部屋は6畳一間にミニキッチンとユニットバスが付いている一般的なワンルームタイプである。

「そうだ!ネットで見たパイプベッドで2階建てになっていて下にデスクが置けるやつ!

6畳の狭い空間でも広く使える優れ物。あれを買おう!!」

と独り言を言っている。


そして春休み中についに彼のお城は完成したのだった。

ブラックのパイプベッドフレームでベッドへは階段で上るタイプ。その下のスペースには机を入れてダイニング代わりにというシンプルな男の空間的な感じだ。


「まだ、空間に余裕があるな・・・」

6畳の窓側にベッドを置いたため、キッチン側の部屋半分の空間がまだ空いているのである。

「狭い6畳でも工夫すればこんなにも広く使えるんだな・・・なんか得した気分じゃん!そうだ、そのうちキャンプで使うような折り畳みのリクライニングチェアーを買って寛げるようにしようかな!?」と夢が広がる。


「あっ、忘れてた!安い2層式でいいんで洗濯機と電子レンジ、スティックタイプの掃除機も必要じゃないか!?それに、今までは家のもので済んでいたけど100均で調理器具や食器類も買わないとな!!

チェッ、これでもらったお金は全てなくなっちゃうな・・・

まあ、でも、一応家財道具一式が揃うからヨシとしようか。」


ヒデはまるで自分の王国でもつくるかのような気分になり人生上一番の幸せを噛み締めていた。

「さてさて、初めての夕食は・・・料理はできないからな〜 まあ、近くのコンビニで買おうか!」


そして、必要物資も一通り揃いやっと王国が出来上がった頃に入学式を迎えた。

この高校は昔からの進学校のため男子生徒の制服は詰襟の学ランである。女子生徒はブレザーであった。

彼は皮の黒い指定鞄を持って自分の王国を出た。高校までは徒歩約20分である。

そのマンションは駅前の繁華街にあるため、まずは駅を経由し反対側の高校に向かうのだが、駅からは同じ制服の学生がちらほら見えていた。


新興住宅地のため駅を離れると造成途中の土地が多く、区画整理された道路を通らず直線の最短距離を歩くと短縮できるのだ。しかしながら昨夜の雨で地面がぬかるんでいた。『靴が汚れるとまずいな!』と初日の今日は正規の道路を通って正門に向かうことにした。正門の両脇には桜並木があり丁度満開を迎え桜の花びらが空を舞う印象的な風景となっていた。


講堂での絵に描いたような入学式が終わり、中庭の広場に掲示してある大きな立て看板に目をやるとそれはクラス編成の名簿であった。Aクラスから始まりHクラスまである。

『僕はどのクラスなんだろう?』とAクラスから名前を確認していくと、なんと最後のHクラスに名前があった。

そして新入生で混み合う中、Hクラスの下駄箱に向かい靴を入れ上履きに履き替えた。学年ごとに上履きのつま先の色が違うのだ。


Hクラスの教室に入ってみると、すでにほとんどの学生が着席している状態であった。彼の席は運良く窓側の後方にあり学生たちの視線を受けつつ少し緊張した面持ちで席についた。 


すると、右側少し前にいる学生が振り返り、「おはよう!同じクラスだね!ヨロシク!」と小声で声をかけてきたのであった。『あっ、あの合格発表日に会った陽キャな彼だ!』とすぐにわかり「おっ、同じなんだね?おはよう!宜しく!」と軽く挨拶を交わした。そして、そのあとは始まりの時間まで無言の時が流れていた。


始業のチャイムが鳴り担任であろう先生が教室に入ってきた。中年のガタイがいい男性の先生である。

すると、その時走ってするりと入ってきた女子学生がいた。

その時「うウォー!」と学生たちから声が上がった。

『えっ 外人?』と思える色白のブロンドの髪の毛がサラサラと流れていた。

その学生はそそくさと無言でヒデの右隣の席に着いたのであるが、外人と思ったのだが白人のとハーフであろうか?とても綺麗な容姿の女子であった。


「皆さん、入学おめでとう!俺は担任の榊原だ。そして教科担任は体育。見てわかるだろ?」笑いが溢れた。

どうやら体育会系の気さくな先生のようだ。


「まずは、君たちにお決まりの自己紹介をしてもらおうと思う。他の学生に名前を覚えてもらういいチャンスなので印象に残るようにお願いしたい。俺にも覚えられるようにな!」 そして出席番号順に前から教卓に立っての自己紹介が始まった。


インキャのヒデは、『どうするか?なんて言おう??』と考え込んでおり、緊張のあまり他の学生たちの話を聞いているどころではなかった。そして、ついに隣の女子学生の番になってしまった。

「私は、野崎エリカと申します。父が外国人のためいわゆるハーフにあたります。皆さんはエリカと呼んでくださいね。うーん、得意なことはスポーツ全般で趣味はアニメとゲーム。日本のアニメは最高です!宜しくお願いします!」と終わってしまった。

その後にヒデが自己紹介したのだが、頭の中が白くなり全くもって何を言ったのか覚えていなかった。


「終わったな!改めて、俺は須藤。石塚くんだよな? 宜しくな!」

彼はナチュラルな茶髪のサラサラヘアーでティアドロップ型のメガネをしており、地なのか?肌がこんがりと日焼けをしているように見え爽やか系の陽キャ男子であった。


「ああ、僕は石塚だよ。宜しく!しかし同じクラスになるなんて奇遇だね。」

2回目の対面であったのでうまく喋れた。

「おい、浅井!」

近くにいた男子学生が近づいてきた。

「なんだよ!須藤?」

「彼は浅井って言うんだけど、同じ中学のご近所さ。こっちは石塚くん」と浅井に紹介した。

「おー 石塚君? 僕は浅井、宜しくね。」

彼は横と後ろを刈り上げた髪型で四角いメガネをした体格がいい男子だった。

「じゃ、石塚、俺たち自転車通学だから、また明日な!」と言って2人は行ってしまった。


早速、友達ができたような気がしたヒデは下駄箱でローファーに履き替えると正門まで歩き出した。

そこは入学式前の朝とは違い上級生たちのクラブ活動勧誘のためにまるで模擬店のようなお祭り騒ぎとなっていた。

テニス部、サッカー部、野球部などの体育会系はもちろん、演劇部、地学部、軽音など文化系に混じって漫研もあった。


『そうか、この学校には漫研があるのか!?』といきなりヒデの表情は明るくなった。

『漫研に入ると、同じ趣味の仲間がいるだろうから生まれて初めての友達ができるのかな!?』









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