序ー10話
両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。
そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。
この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。
「てことは、人類は存在するのね?」
「あのシティでアンドロイド達の反乱が起こった時に人類は真っ先に抹殺されたんだ。アンドロイド達が勢力を持つ前にすでに愚かな人類は核戦争をおこしてほとんどの人類は死んでいるんだがね。しかしながら、その時たまたまシティ内にいなかったグループが存在し難を逃れた数十人の人類は地下に潜伏したんだよ。もっともここでは彼らはヒューマンと呼ばれているけどね。」
「なるほど、そういうことがあったのね!?」
ヒデは何が何だか理解が追いつかないようである。
「で、その人類達はどこにいるわけ?」
「我々もアンドロイド達に実験で造られたわけで、造ったはいいが失敗作の如く森に捨てられたのよ。これは恨んでも恨みきれない屈辱よ!! 知能がある我々『人キメラ』は集まってこうして共存しているんだけど、多くのケモノキメラも森に住んでいるの。だからヒューマンにとってはアンドロイドどころか、その前にケモノ達にも襲われるわけ。それで、私らがある意味ここで餌に近づくケモノを排除してあげてるってわけよ。」
「なるほど、ということは・・・そのヒューマンはこの近くにいるのね?」
「察しがいいわね。この建物の地下にいるのよ! まあ、あなた達も同胞達と一緒の方が居心地がいいだろうから、特別に案内してあげるわよ!」
「それ、ほんとう??」
「ええ、そうよ!でも、あなた達を助けてあげたんだから、そのうち何らかの礼は欲しいわよね? ねえ、メデューサ?」
「そうね! 期待して待っているわよ! じゃなきゃ襲っちゃうかも!?」と言って不気味に笑っている。
「食事が出来上がる前にヒューマン達の世界に案内してくるわね。」とエンジェルは言うと、『コイコイ』という仕草をして2人を誘導した。
「じゃ、宜しく頼むわ! 色々とありがとうね!」とエリカは他の人キメラ達にも礼を言うと、ヒデの手を握ってエンジェルの後を追った。
教会の祭壇にあたるステージの上に上がると、ちょうど祭壇の下にハッチのようなものが見えた。
地下に通じるという頭がないと、それが蓋であるとは全く思えないようなものである。
「ここよ!」と言いながら重いハッチをゆっくりと引き上げた。
するとその下には階段が下方向に伸びていた。
「この階段を下がっていくと地下通路に出るわ。そして、その通路をドンドン進んでいくと門番が守る重厚な扉があるの。その先がヒューマンの国よ! それじゃ、いってらっしゃい!」と手を振った。
「わかった。エンジェル、ありがとう!! このお礼は何かしらするわね。じゃ、とりあえず行ってみるわ!
ヒデ、行きましょう!」と言うと、手を引っ張りながら階段を降りていったのだった、その後に猫の形に戻ったジェットも続いている。
「何が何だか・・・今頭の整理をしているから・・・しかし、エリカ、まず君はいったい何者なの??」ヒデの疑問はまずそこから始まるのであった。
「まあ、そうよね。ヒデの部屋からは災難続きだもんね、ごめんね混乱させて!きちんと説明するわ。」と薄暗い地下通路を歩きながらエリカは説明を始めたのだった。
「私とこのジェットはニコイチなの。と言っても、ジェットが先にヒデの世界に来ていて長年オブザーバーをしていたんだけど、ある時歴史の流れが変わってしまって貴方が将来の重要人物になってしまったの。
だから私は急にガーディアンとしてあなたの世界に送られてきたってわけ。あなたを未来のアンドロイド達から守るミッションということで! ここまでは大丈夫?」
「う、うん、未来から?… まあ何とか。」
「それで、ジェットが敵の漆黒の猫に遭遇して、あなたが未来のアンドロイド達に狙われていることがわかったの。身を守るためにあの時急にヒデの世界を離れたってわけ。これはさっき起こったことだからいいわよね?」
「うん、わかった。」
「そして、ここの世界は、私たちの未来世界とはまた違った世界で、アンドロイド達が牛耳っている世界のようなの。パラレルワールドみたいなものと思ってもらえれば分かりやすいかも。ここでは人類は滅ぼされ、一握りのヒューマンだけがこの先の地下で生きながらえているということなの。さっき会った奇妙な人達はアンドロイド達の実験で配合された一種のキメラで、今のところ敵ではないみたいね。そして、私たちは今からその生き残りのヒューマンに会いに行くところなのよ。」
「エリカ、わかったよ。でも、その後僕らはどうなるわけ??」
「そうね・・・それは私もまだわからないけど、とりあえず、あなたを殺そうとしているアサシンからは逃げられて危機は回避できたってことになるわね。だから、この先のことは彼らに会ってみたあとの行き当たりばったりになるってことかしら。」
ヒデは「なるほど・・・」と言うと不安を隠せずに下を向いてしまった。
「こんなこと、あなたの世界では普通起こらないから凄くショックを受けてるのは理解できるわ。でも、ヒデは将来人類を救うことになってるから頑張って生き延びて欲しいの! というか、そうなるようにあなたを覚醒していくのも私のミッションの一つなんだけどね。
そうそう、言い忘れたけど、私みたいなガーディアンは守護対象であるあなたとは一心同体だから何でも相談してよね!」
「わかった。それは心強いよ・・・ありがとう」と恥ずかしそうである。
『まあ。でも、元の世界でせっかく高校に入学したとはいえ、独り身だし、たとえ僕がいなくなったとしても誰も気に病む人はいないわけだし・・・』と思うと、重大だと思っていた今日のこの奇妙な出来事が、全くというと嘘になるが、不思議と気にならなくなってきたのであった。
「あっ、見えてきたわね!」とエレナが地下道の先を指差した。
何かの明かりに照らされた頑丈な門を4人の衛兵が守っている姿が見えてきた。




