28.偽装船団(3)
某バ○ダイの技術力はすごい(みたい)ですね。
その技術力でドールやフィギュアを作ったら素敵なものができそうです。
いずれ凄いアンドロイドを作ってくれないかと期待します。
プロミオンは此処までの加速で十分に速度を稼いでいたので、射線が通るよう岩塊を迂回するルートに乗せてからは加速を止め、偽装タンカーにだけ狙いを定めて艦砲を斉射した。
「撃て」
はい、とアリスが口に出すよりも早く、光が飛んだ。
ラーグリフのデータサポートを受けてプロミオンの命中精度は本来の能力以上に引き上げられているが、それでもレオンは更に慎重に、最低限の発射数にとどめた。
前方射角固定の砲門から光の束が伸び、肉眼にも見えてきた標的に吸い込まれる。
「タンカーに命中三、ひとつ貫通しました。発射装置には当たっていませんが、エネルギーラインで繋がれていたからでしょう、余波で姿勢が乱れました」
レオンの狙い通りに爆発は小さく抑えられて、うまいこと証拠物件の方は健在だ。
「じゃあ、ザッパーの照準はおそらくズレただろうな。上出来だ! 砲撃停止」
砲撃の停止と共に、プロミオンはメインベクターコイルを逆転させて減速を開始する。が、船団との距離まででは到底減速しきれないので、姿勢を変えながらも距離を置いて一旦通過する。
レオンが向かい合って右手を振り上げると、アリスがそれに合わせてハイタッチした。そういう所はぴったり息が合う。
「やりましたね!」
惑星ノアや宇宙港からの発信は相変わらずモニタリングできており、健在なのは間違いない。
「ああ、うまくいったな!」
§
やがて減速を終えたプロミオンは船首を向けなおし、破損したザッパーを正面に捉えつつ相対速度を絞ってゆっくりと近づく。光学センサーに映る偽装タンカーはまだ幾らか煤を吐いたまま、ダメージコントロールに苦労していると見えた。
同じ宇宙船乗りとしては身につまされる光景のはずだが、今回は全く相手を心配する気にはなれない。ブリッジで、どんな切り出し方で通信しようかと思案しながら、レオンは背もたれを少し倒す。ここまでずっと緊張の連続だったので 、一旦気持ちを切り替えて落ち着く必要があると思えて目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をした。
「やつら、素直にザッパーを明け渡してくれるかな?」
「彼らにしてみれば、いわば敵陣の真っただ中で孤立しているわけですから、こちらの指示に従う可能性は十分にあります」
とんでもないことをしにやって来た奴らとはいえ、乗組員にとっては命令故だろうし、彼らにはもう何もできないし、個人的には余計な殺生は控えたいとも思う。首謀者は許したくないけどね。
「まずは優しく呼びかけてみようか」
「こちらはランツフォート家の騎士レオン・ウィリアムズであることを明示した上で、投降を勧めましょう。得体の知れない誰かでは、投降しようとは思いませんからね。それに、レオンの名を売るチャンスです」
「そういうものか。ま、名前は売れなくてもいいけど」
「名を売るのは、抑止力を高めるためですよ。警護役の責務とも言えるかもしれません」
「抑止力か……」
「ついでに、チヤホヤされる事もあるでしょうけれど」
「チヤホヤ……」
そんな経験の少ないレオンは、ふとノアの晩餐会で綺麗どころが自分を取り巻いた光景を脳裏に再現した。
……。
あれは、いいものだ。
「なんですかそのにやけた顔は。切り落としますよ?」
「怖えな。別にいいじゃねーか、思い出すくらい」
なんとかなったという思いが共にあって、二人は久しぶりに笑顔になった。
その後、ザッパーの存在が目視可能なまでに接近したところでプロミオンは更に減速し、オープンチャンネルで投降を呼びかけた。返事はなかなか帰ってこなかったが、もう一度同じ伝文を送って今しばらくは待つことにした。
「通信封鎖でもしているのかな? もう少し近づいてみよう。加速してくれ」
「わかりました」
アリスがそう返事をしてベクターコイルから伝わる微音がやや変化したかと思うと、前方で派手な光球が幾つも弾けた。
「これは……艦砲射撃です!」
ザッパーは見る間に爆ぜる閃光にかき消され、隠匿のために寄り添っていた岩塊までもが破壊されてゆく。レオンの指示を待たずにプロミオンは対ビームシールドを展開して、砲撃元と思われる座標へ船首を向ける。が、シールドを展開するよりもわずかに早く、一閃のビームが姿勢制御中のプロミオンの右舷を掠めた。
掠めただけのビームはプロミオンが大気圏内飛行時に展開する安定翼を消し飛ばし、右舷兵装ブロックの表面装甲をまだらに焼き上げた。引き起こされた断続的な激しい横揺れはブリッジをも揺さぶり、ただ腰掛けていただけのレオンをキャプテンシートから乱暴に投げ出そうとする。
「うわっ!」
ダメージコントロールが自動で働き、船内各所の隔壁が閉じられると共に、二人しかいない船内にアラートが鳴り響く。プロミオンの船体にダメージを受けての警報音を聞いたのは、レオンはこれが初めてだった。アリスが身をもって受け止めてくれたおかげでレオンはブリッジ内を転げまわらずに済み、そのまま支えてもらいながら、とりあえず出来るだけ距離を取ることを指示した。
「すでに回避機動をとりつつ全速後退中です」
「すまん、ありがと」
砲撃元へ船首を向けるのは、投影面積を最小化するためだ。そして前面に対ビームシールドを展開する。そうすることで、ど真ん中への直撃でもなければ、シールドによる偏向減殺効果で一撃轟沈だけは免れるだろう。
「牽制のためにラーグリフから砲撃を開始しました。自衛措置ですので、ご了承ください」
「ああ、わかった」
「ただ、ラーグリフからも正確には敵を捉えていません。予測ポイントに撃ち込んでいますが、今のところ手応えはありませんね」
レオンはまだ、アリスに抱きかかえられたままだった。
「プロミオンの被害は?」
「右安定翼が破損消失しましたが、宇宙空間航行能力にはほとんど影響ありません。右舷兵装ブロック表層の損傷により、プロミオンの対艦砲撃力はざっと二割減です。索敵・観測能力も同程度低下しています。火災やブロックの脱落はありません」
プロミオンはラーグリフと同様に、長期間の無補給航行を想定して実体弾頭の装備を最低限度にとどめており、今回に限っては、それが功を奏して誘爆などを免れたようだ。
「一発かすめただけで、か……」
「解析途中ですが、かなりの出力の砲撃でした」
もしもあの時加速していなかったら、より正確に撃ち抜かれていたかもしれない。今頃になってレオンはドキドキしてきた。そういえば、自分とは別の鼓動が後頭部から伝わってくる。……アリスはつくづくよくできた儀体だ。
「敵からの砲撃はもうありません。捕捉できませんでしたので、分析も進んでいません」
「わかった。ラーグリフは深追いはしないで、こっちに合流するようにしてくれ」
プロファイルデータのない敵を察知するのは難しいですが、
油断大敵、ですね。




