国王陛下の謁見
国王陛下との謁見は先程の部屋より更に豪華な客間のような部屋で行われた。
てっきり『謁見の間』のような国王陛下が階段の上に鎮座する部屋を想像していたので、少しばかり拍子抜けしたところもある。
しかしテーブル一つ挟んだ場所に国王陛下が座っているのは心臓に悪いことに変わりはなかった。
自分の向かいに国王陛下、その隣のソファーに同じ歳くらいの男性が座っている。
この人が王太子殿下なのだろうか。
更に国王陛下の背後に護衛らしき騎士とは別に、如何にもといった白いローブを着た男性も立っている。
多分、絶対、城のお抱えの魔術師か何かだ。
「花嫁殿、急に連れ去るように連れてきてしまってすまなかった。名はチハナでよろしかったか?」
「いえいえ!私こそ保護して頂きありがとうございました。はい、チハナと言います」
陛下の言葉に慌てて頭を下げる。
王族に対する礼儀作法がまるでわからない。
粗相をしないようにと言葉を選びたいが、そうすると返事が遅れてそれも失礼にあたるのではないかとパニックを起こしそうになる。
するとこちらの様子を察したのか陛下が笑ってみせた。
「そう畏まらんでくれ。立場でいえば花嫁殿の方が上なのだ」
「そんな…」
にわかに信じられないことを言われ盛大に眉を顰めてしまう。王様より偉い人なんで神様くらいしかいないのではないだろうか。
「我がパルヴァイス王国は花嫁殿を歓迎する。よく我が国に罷り越してくださった。我が国が世界を救う花嫁殿の助けをできることを光栄に思う」
「ん?!」
緊張しすぎで硬直した身体だったが聞き捨てならない言葉を拾った。思わず声を出してしまったが確認のため恐る恐る口を開く。
「世界を救う?誰がです?」
「もちろん花嫁殿が」
聞き間違いではなかった。
「も、申し訳ありません。お話の規模が大きすぎてちょっと…」
ちょっとどころではなく混乱しているのだけれど。
「それでは!」
「っ?」
急に大きな声が室内に響く。
陛下の後ろで芝居がかったようにお辞儀をしたローブの男性は目が合うとにっこりと笑んだ。
「僭越ながら私から説明させて頂いてもよろしいでしょうか?陛下」
「そうさな。こういったことはお前の方が向いているだろう、ミシェル」
ローブの人はミシェルと言うらしい。
陛下の許しを得たミシェルはずいっとこちらに一歩踏み出してきた。そしてまた恭しく一礼する。
「初めまして花嫁殿。城付きの魔術師をしております、ミシェルです。以後お見知り置きを」
やっぱり魔術師だった。
隠すつもりがないのかこれが城での制服なのか、その辺りはよくわからないが魔術師についての知識があると厄介なのではと思い黙って礼を返すにとどめた。
「それでは少しばかり長くなりますがご拝聴ください。まずはこのセミラウスという我々の住む世界のお話から」
歌うように始まったミシェルの言葉にしっかり耳を傾けるべく姿勢を正した。
そして、長い昔話が始まる。




