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異世界花嫁お召し替え


騎士団の出迎えを受け、城門を潜ると立派な城下町が広がっていた。

まるで古い洋画の世界だ。

街並みがとにかく自分の日常離れした景色で思わずきょろきょろと辺りを見回してしまう。

綺麗に舗装された石造りの道は真っ直ぐに街の奥にある城へと続いていた。

「すごい、まるでお伽話みたい」

感嘆の溜息を零すとアレンが小さく笑った。

はしゃいでしまったのが恥ずかしくて思わず口元を手で隠す。

海外旅行なんて贅沢したことがなかったので、この異国情緒あふれる空気感にとてもわくわくしてしまう。

建物一つとっても現代の日本とは違うのだ。

石造りや木造で建てられたそれらは草原にいた時より、自分が見知らぬ土地に来てしまったことを実感させた。

「チハナ様が気に入ってくれたようで何よりですな」

隣を歩いていた騎士が嬉しそうに言う。

彼は騎士団の団長を名乗ってとても丁寧に挨拶してくれた。名をオリバーというそうだ。

アレンとイースの上司に当たる人なんだろうけれど、確かに屈強な見た目でとても強そうに見える。

「とてもきれいな街並みで驚いてます」

「いやー光栄なことです。花嫁様に褒められるとは我が国も捨てたもんじゃない」

「オリバー団長、何目線なんスか」

イースの呆れたような声にあっはっはと豪快にオリバーは笑ってみせる。団長というのでもっと厳格そうな人が出てくるとおもったが、朗らかで取っ付きやすそうな人物のようだ。

城下町の雰囲気を見てもとくに荒れた様子はない。ここは平和な国なんだろうか。

悪逆非道な王様が治さめている国ならもっと街は荒れているのではないかと思う。勝手なイメージだけれど、少しだけ胸を撫で下ろす。

「あの、今の王様になってからどれくらいになるんでしょうか?」

「先王が隠居されてからですのでまだ三十年程でしょうか。他国との戦争も今はなく、平和が続いていますよ」

アレンの答えにうんうんと頷く。

戦争がないのは素直に嬉しい。

平和が一番だ。

そうこうしているうちにあっという間に城へと到着した。

出迎えた人達に連れられて城の中へと進んでいく。後ろにはアレンとイース、オリバーがついて歩いてくれていた。

豪奢な深紅の絨毯を不釣り合いな通勤用のパンプスが踏みしめる度に緊張で胃のあたりがしくりと痛んだ。

一年前の入社面接の時のような緊張感が襲いかかってきている。

怖い。

いや、この先に居るのはあの時の人事課の職員や専務なんて比ではない。王様だ、国王陛下だ。日本でいうなら天皇だ。

一庶民である自分にこんな機会は絶対に巡ってこないと思って生きていたので、ぐるぐると不安が渦巻く。

礼儀作法を間違えて牢屋行きとか言われたらどうしよう。魔法でうまく逃げ切れるだろうか。

「チハナ様、まずはこちらです」

「はいっ?」

名前を呼ばれて顔を上げれば、客間のような部屋の扉が開かれていた。

そしてそこには二人の綺麗な女性が立っている。服装から見るに城仕えの女性のようで、目が合うと微笑まれしっかりのお辞儀をされた。

つられてこちらも礼を返す。

「花嫁様、まずは湯浴みとお召し替えを」

「え」

「陛下の御前に行かれるのですから、身支度をお手伝いさせてくださいませ」

「へ?」

優しく二人に手を引かれ室内へと招かれる。

「イースさん!アレンさん!」

慌てて後ろの二人に助けを求めたが、二人共ゆるゆると首を振るだけだった。

「一晩野宿して大変だったろ。綺麗にしてもらうといいぞ」

「その二人は優秀な女中です。我々はすぐそこで待機していますのでごゆっくりと」

「そんなぁ!」

無慈悲に閉められた扉に向かって目一杯叫んだが、一度閉められた扉はもう開くことがなかった。

代わりに背後から物凄い圧を感じる。

「さあ花嫁様」

「お召し物をこちらに」

「ひっ」

悲鳴を喉の奥で飲み込むと再度両脇を固められ、二人の手によってそのままずるずると部屋の奥へと連行されてしまったのであった。



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