第8話 深層は、地図の外
八階からは誰も見たことのない領域だった。RTAの光の線も、ここでは薄い。既知のルートがないと、俺の最速も鈍る。
「初見はさすがに手探りか……」
「じゃあ、みんなで進むしかないね」陽菜が横に並んだ。
▽
八階は落下の縦穴地帯。大和が『勇者(仮)の大剣』を壁に突き立てて足場を作り、俺たちは順に降りた。
九階は鏡の回廊。無数の分身が襲ってくる。
「本物はどれ!?」
「詩織!」
「片眼鏡で見える――右から三番目だけ影がある。それが本体」
詩織の解析が冴える。俺は最短で本体に肉薄し、大和がとどめを刺した。速い。四人だと、一人の何倍も速い。
RTAのタイマーが、ひとりで走っていた頃より、いい記録を刻んでいた。
「なあ律」と大和。「お前、最初『早く帰りたい』って言ってたよな」
「今も言ってる」
「でも今、ちょっと楽しそうだぞ」
「……気のせいだ」
気のせいだ。たぶん。九階の階段が、目の前にあった。その先が、十階。誰も届かなかった場所。
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## 第9話 第十階層主、最速討伐
十階は闇の玉座だった。
そこにいたのは、影でできた巨大な騎士。第十階層主《終の門番》。歴代の先輩たちを跳ね返してきた壁だ。
――『RTA』:初見ボス。パターン解析を開始します。目標、初見最速。
「解析、追いつくか……?」
「あたしが時間を稼ぐ」陽菜が祈杖を掲げた。「みんなが動けるように、絶対に回復を切らさない」
「俺が斬り込む!」大和が前に出る。
「弱点は装甲の継ぎ目。攻撃の三パターン目に必ず露出する」詩織が読み上げる。
▽
門番の剣が振り下ろされる。RTAが軌道を線で描く。俺は半歩で避け、大和が受け、陽菜の光が全員を包む。
一パターン。二パターン。そして――三パターン目。継ぎ目が開いた。
「今だ。石、全部いく」
俺は貯めた石を、最後の一個まで注ぎ込んだ。天井到達。確定演出。虹色の光が渦を巻く。
――SSR『一撃必殺の反則剣』を獲得しました。
「はは、出来すぎだろ」
みんなが作ってくれた隙に、ガチャが引き当てた最大火力を、RTAが最適な一点に叩き込む。
外れスキル二つが、たった今、伝説になった。
影の騎士が、音もなく崩れ落ちた。
「「「討伐ぅぅぅ――!!」」」




