6/36
第6話 最速より、間に合うほうがいい
狼の群れに大和が正面から突っ込み、俺は横から回り込んだ。
「詩織、硬直の瞬間だけ教えろ。ガチャ回す時間を作る」
「三秒後、まとめて隙。……今!」
俺は石を全部つぎ込んで、ぶん回した。当たれ。頼むから当たれ。
――SR『爆ぜる火薬瓶』獲得。
――SR『時間差の落雷符』獲得。
――R『足止めの粘着網』獲得。
外れじゃない。今日はガチャの神様がこっち向いてる。俺は網で群れを縛り、火薬瓶を投げ、落雷符を置いて後退した。
数秒後、七階の巣が光と轟音で埋まった。
▽
「陽菜、立てるか」
俺は転んだ陽菜に手を伸ばした。膝を擦りむいて、ちょっと涙目になっている。
「……りっちゃん、逃げなかったの? 記録、大事なんじゃ」
「記録より、置いてくほうが後で面倒。夢見が悪いと昼寝の質が落ちる」
陽菜がふっと笑って、俺の手を取った。回復スキルが淡く光って、擦り傷が消える。
「ありがと。あと、その言い訳へたくそ」
「うるさい」
RTAのタイマーは止まったままだった。それでも不思議と、悪い気はしなかった。




