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第5話 最適解しか歩けない病
六階は霧の迷宮だった。視界ゼロ。並の探索者が一番脱落する階層だ。
だが俺の視界には、変わらず光の線が走っている。
――『RTA』:霧内でも最短ルートを維持。目標タイム更新中。
「なんで律くん、霧の中でも真っ直ぐ歩けるの!?」陽菜が俺の裾を掴んでついてくる。
「線が見えるから。あと寄り道すると記録が伸びて嫌」
「病気でしょそれ」
病気かもしれない。RTAが走り出すと、遅い道を歩くのが生理的に無理になる。近道があるのに遠回りするなんて、体が拒否する。おかげで昼寝の余白が増えるので文句はない。
▽
だが霧の中央で問題が起きた。地図にない落とし穴。俺たちは下の階層――七階に落ちた。
「うわっ、想定外!」大和が受け身を取り損ねる。
落ちた先は敵の巣だった。狼型モンスターの群れ。数、十以上。RTAのタイマーが警告色に染まる。
――ルート崩壊。再算出中……推奨行動:全力離脱。
「離脱ルート出た。でも――」
群れの後ろで、陽菜が転んで動けずにいた。逃げれば俺は助かる。記録的にはそれが最速。
でも、視界のタイマーを、俺は初めて自分で止めた。
「……大和。突っ込むぞ」
「おうっ、そう来なくっちゃ!」




