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ガチャとRTA持ちだけど、早く帰って昼寝したい  作者: parade
第3章/『全国大会と、深すぎる場所』

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35/36

第35話 50メートルの全国決勝

 同時に飛び出した。

 初速は互角。いや、わずかに如月が前だ。千里眼は自分の身体の使い方まで視えるのか、フォームに一切の無駄がない。速い。純粋に、速い。

 十メートル。二十メートル。俺の一歩後ろ足が、一つ目の亀裂の手前で、半歩分だけ외に逃げる。如月は――まっすぐ踏んだ。

 こつん、と小さな音。如月の足元が、ほんのわずかに沈む。コンマ二秒。

「っ!?」

「言ったろ」

 俺は二つ目、三つ目の亀裂を躱しながら、並んだ。

「人間の作為はパターンだ。でも、災害はパターンの外なんだよ。お前の千里眼は完成された地図を視る目だ。俺のは――たった今壊れた道を、引き直す目だ」

 四十メートル。完全に並走。台座まで、あと十。

 如月が笑った。負け惜しみじゃない、心底楽しそうな顔で。

「――ああ、くそ。いい目だ!」

 最後の一歩。二人同時に、腕を伸ばした。



『しゃ、写真判定ぇぇぇ!!』

 場内のモニターに、超スロー映像が映し出された。

 二本の腕。二つの指先。王冠までの、最後の数センチ。

 俺の指が、わずかに――わずかに、先に触れて。

 その勢いのまま王冠が台座から転がり落ちて、床でバウンドして、追いすがった如月の額に、ごいんと直撃した。

『優勝ぅぅぅ!! あおば高校ぉぉぉ!! なお如月選手は王冠の直撃を受けた模様ぉぉ!!』

 場内、大爆笑と大歓声。額を押さえてうずくまる如月に、俺は手を差し出した。

「悪い。最後、雑だった」

「……っは、はは。いいさ。負けは負けだ。……ちゃんと、指先で負けた。悔いはねえよ。次は勝つけどな」

 如月が俺の手を取って立ち上がる。スタンドの大歓声の中、大和と陽菜と詩織が駆け寄ってきて、俺は三人にまとめて揉みくちゃにされた。

「優勝!! 全国優勝だぞ律ぅ!!」

「りっちゃんが走って勝つとか、一番びっくりだよ!!」

「賞金三百万。……ソファ、買えるわね」

「あ」

 そうだった。忘れてた。

 優先度三位に切り捨てたはずの優勝が、最後に勝手に転がり込んできた。ガチャの神様は、たまにこういう帳尻の合わせ方をする。


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