表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガチャとRTA持ちだけど、早く帰って昼寝したい  作者: parade
第3章/『全国大会と、深すぎる場所』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/36

第33話 姉さんの長い夢

 帰ろうとしたとき、声がした。

 ――マッテ。

 寝台の上の彼女は、目を閉じたまま、でも確かにこちらへ意識を向けていた。寝言と会話の中間みたいな、ふわふわした声だった。


 ――枕ノ、匂イ。妹ノ気配ガスル。アノ子ニ、会ッタノネ。

「ああ。あんたの妹の安眠装置、直したのは俺たちだ」

 ――ソウ。……アリガトウ。ズット、心配ダッタ。装置ガ壊レタ音ハ、聞コエテイタノニ、ワタシハ自分ノ悪夢デ手一杯デ。

 姉は、それから途切れ途切れに、寝言みたいに語った。

 二人は太古の《試練場》の管理者姉妹であること。試練場は、いつか来る「大きな厄災」に備えて、資格ある者を選び、力を託すための施設であること。姉妹は装置の中で眠りながら、何千年も資格者を待ち続けたこと。

 ――デモ、誰モ来ナカッタ。何百年モ、何千年モ。ソレデ、ワタシノ夢ハ少シズツ、悪イ方ヘ。

「五十年前の大隆起も、あんたの悪夢か」

 ――ゴメンナサイ。寝相ガ、悪クテ。

「島一個作る寝相があるか」



 ――ネエ、鍵ノ人。

「なんだ」

 ――アナタ、不思議。試練場ノ鍵ハ、本来、力ヲ求メル者ニ宿ル。覇者、英雄、王。ソウイウ魂ニ。……ナノニアナタハ、何ニモ、求メテイナイ。

「昼寝は求めてる」

 ――フフ。ソウ。ダカラ、カモシレナイ。

 姉の声が、少し笑った。

 ――『眠リ』ヲ本当ニ大切ニデキル者ニシカ、分カラナイコトガアル。誰カノ眠リヲ守ルコトハ、ソノ人ノ明日ヲ守ルコト。アナタハ、ソレヲ知ッテル。誰ニ教ワッタワケデモナク。……鍵ガアナタヲ選ンダ理由、ワタシハ分カル気ガスル。

 柄にもなく、返す言葉に詰まった。陽菜がにやにやしながら俺を見ていて、非常にやりにくい。

 ――枕、本当ニ借リテイイノ? アナタノ、宝物デショウ。

「……いい。それ、疲労全回復って書いてあるけどな、ほんとの効能は多分違う。『よく眠れる』ってだけだ。よく眠れる理由は性能じゃなくて――安心して寝ていい場所がある、って思えるからだ。俺は、もう枕がなくても寝られる。部室があるから」

 ――……ソウ。イイ場所ヲ、見ツケタノネ。

 姉の輪郭が、満足そうに寝台へ沈んでいく。

 ――オ礼ニ、一ツダケ教エル。試練場ハ、世界ニ、アト五ツ。ソシテ厄災ハ……モウ、目ヲ覚マシ始メテル。イツカ、鍵ノ力ガ本当ニ必要ニナル日ガ来ル。……ソノ日マデ、ドウカ、タクサン眠ッテ。タクサン、力ヲ蓄エテ。

「あんたの『いつか』が、俺の卒業後だと助かる」

 ――フフ……オヤスミナサイ、鍵ノ人。イイ、夢ヲ。

 声が、寝息に溶けた。

 帰りの階段は、なぜか行きの十分の一の長さになっていた。寝起きのいい人の夢は、出口も親切らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ