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ガチャとRTA持ちだけど、早く帰って昼寝したい  作者: parade
第3章/『全国大会と、深すぎる場所』

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第28話 競技と災害の分岐点

「律、どうする!」

 大和の声に、俺は一瞬だけ目を閉じた。

 視界の中で、線が無数に枝分かれしている。優勝だけ狙う線。寝かしつけだけ狙う線。両方狙う線。観客の避難を優先する線。どれも一長一短で、どれも確実じゃない。

 RTAで大事なのは、迷う時間そのものがロスだと知っていることだ。

「方針変更。優先度一位、観客の安全。二位、寝かしつけ。三位、優勝。この順で切り捨てる」

「賞金が最初に死んだ!」

「ソファは諦めた。走るぞ」



 王の間の尖塔へ最短で向かいながら、俺は考えを整理して喋った。

「揺れの本体は姉さんの覚醒予兆だ。完全に起きたら空洞ごと崩れる。でも協会はまだ『ちょっと大きい地震』程度の認識のはずだ。避難発令は遅れる」

「なら、避難を先に始めさせないと」と陽菜。

「そこで詩織。片眼鏡で運営本部の位置は分かるか」

「スタンド最上段、中継ブースの隣。……でも、うちらが『地下に古代の管理者が眠ってて起きかけてます』って言って、信じると思う?」

「思わない。だから、信じさせられる奴に言わせる」

「誰よ」

「五十年この島を観測してきた家の跡取り」

 俺は空洞の反対側、吊り橋の上の白い制服を見た。如月冬夜も、こっちを見ていた。

 直接戦闘は禁止。でも、会話は禁止されてない。俺は大きく息を吸って、空洞の反響を使って叫んだ。

「如月ぃ! 視えてんだろ、下のやつ! 覚醒予兆だ! お前んとこの観測記録と照合しろ!」

 場内がざわめいた。実況が『な、なにやら両校が接触!?』と騒いでいる。

 如月は数秒固まって――それから、腕の端末を叩き始めた。千里眼で視た情報と、家の記録の照合。奴の顔色が、遠目にも分かるくらい変わった。

 吊り橋の上から、如月が叫び返してきた。

「――照合した! 五十年前の《大隆起》直前の波形と一致! 周期から逆算して、完全覚醒まで、最短四十分!」

「協会に言え! お前の家の名前で! 観客の避難、今すぐだ!」

「言う! ……おい遊佐! お前はどうする気だ!」

「寝かしつけてくる!」

「……はぁ!? おい、待て、それどういう――」

 説明してる時間はない。俺たちは尖塔の登り口に取り付いた。


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