第26話 決勝開幕、ルールは「王の間へ」
決勝当日の竜骨大空洞は、想像の三倍でかかった。
天井までの高さは目測で百メートル超。壁面には観客席がすり鉢状に彫り込まれ、超満員。空洞の中央には競技エリアが広がっている。岩の尖塔、吊り橋、地底湖、崩れかけた古代の回廊。まるで空洞そのものが一つの箱庭ダンジョンだ。
その全景を、無数のカメラと中継用の飛行ドローンが舐めるように撮っている。
『さぁぁぁ始まりました、全国学園ダンジョン攻略大会・決勝ぉぉぉ!!』
実況の声がスタンドを揺らした。
『対戦カードは、優勝候補筆頭・聖鐘学園! 対するは今大会最大の台風の目、特別招待枠から勝ち上がった無名の四人、私立あおば高校ダンジョン部ぅ!!』
無名言うな。まあ無名だけど。
▽
決勝ルールの発表が始まった。
『競技エリア最深部、《王の間》に安置された竜骨の王冠。これを先に取得し、スタートゲートまで持ち帰った学校が優勝! 制限時間、三時間!』
空洞の奥、ひときわ高い尖塔の上に、金色に光る台座が見えた。あそこが王の間か。
『なお、両校の直接戦闘は禁止! ただし、進路妨害・トラップの利用・アイテムによる干渉は許可されています! 頭脳と、速さと、チームワークの勝負です!』
俺は視界のスキャンを走らせた。開始前でもエリアの外観情報だけで、線はある程度引ける。
――『RTA』:競技エリア解析中。王の間への候補ルート、三系統を検出。
――同時に:地下深部への接続反応を検出。位置……《王の間》直下。
「……おい、マジか」
思わず声が出た。詩織が振り向く。
「どうしたの」
「接続点の位置が分かった。王の間の真下だ。優勝のゴールと、寝かしつけの入口が、同じ場所にある」
「それ、いい報せ? 悪い報せ?」
「両方だ。道は一本で済む。ただし――」
俺は対岸のスタートゲートに目をやった。白い制服の五人。その先頭で、如月冬夜がこっちを見ていた。目が合う。奴の口が動いた。声は聞こえないのに、なぜか読めた。
――視エテルンダロ、オ前ニモ。
あいつも気づいてる。王の間の下の、《何か》に。
「陽菜、大和、詩織。予定変更なし、ただし補足だ。王の間まで最速で行く。優勝も寝かしつけも、入口は同じだった」
「分かりやすくて助かる!」と大和。
「一番ややこしい奴が同じ場所に向かってるけどね」と詩織。
『それでは――決勝、スタート!!』
号砲が、空洞に反響した。




