第25話 決勝前夜、作戦会議という名のお泊まり会
決勝進出、二校。うちと、聖鐘学園。
宿舎の俺たちの部屋に、四人が集まった。名目は作戦会議。実態は、陽菜が持ち込んだ菓子の袋が開いた時点でお察しだ。
「――で、状況を整理する」
俺は菓子の袋からせんべいを確保しつつ言った。
「決勝の舞台は竜骨大空洞。その真下で、管理者の姉が眠ってる。最近、眠りが浅くなってて、地震が増えてる。協会はそれを知ってて、大会にかこつけて調査中。多分うちの招待も、俺の鍵目当て」
「うわぁ、大人って汚い」と陽菜。
「で、決勝当日、全国中継のカメラの前で、大観衆が空洞の上に集まる」詩織が続けた。「……仮に決勝の最中に《姉》が目を覚ましかけたら、最悪の条件が揃うわね」
「観客ごと空洞に呑まれる、か」大和が腕を組んだ。「なあ律、大会サボって先に地下行って寝かしつけちまうのは?」
「考えた。でも計測不能の深さだ。正規の道がない。……多分、決勝コースのどこかに、下への接続点がある。管理者の妹のときと同じなら、鍵が近づけば道は開く」
「じゃあ、決勝を戦いながら、接続点を探して、開いたら降りて、寝かしつける?」
「そういうことになる」
「盛りだくさんすぎるでしょ!」
▽
ひとしきり作戦を詰めたあと、陽菜がぽつりと言った。
「ね、りっちゃん。もし決勝と寝かしつけ、両方は無理ってなったら、どうするの」
部屋が少し静かになった。三百万。ソファ。優勝。全国の頂点。それと、顔も知らない観客たちの安全。
「決まってる。大会を捨てて、地下に行く」
即答だった。自分でも意外なくらい。
「三百万、いいの?」
「ソファは来年も買える。けど、事故はやり直せない。RTAで一番やっちゃいけないのは、リセットの利かない場面でタイムを優先することだ」
言ってから、少し照れくさくなって付け足した。
「……あと、観客に子どもとかいるだろ。昼寝の途中で天井が落ちてきたら、かわいそうだ」
「基準がずっと昼寝なのよ、あなた」詩織が呆れ顔で、でも少し笑って言った。
「けど、それでこそ律だ!」大和がせんべいを掲げた。「よし、決めた。優勝も安眠も、両方獲る! 欲張っていこうぜ!」
「単純でいいなお前は……でも、まあ」
俺はせんべいをかじった。
「両方獲れるルートが、ないわけじゃない」
視界の隅、RTAのタイマーが、新しい計測名を表示していた。
――新規計測:『決勝優勝&寝かしつけ』同時RTA。難易度:過去最高。
明日は、長い一日になる。だから今夜は、もう寝る。




