第24話 夜の浜辺と、如月冬夜の千里眼
二回戦、三回戦も、俺たちは危なげなく通過した。
準々決勝を終えた夜。俺は宿舎を抜け出して、浜辺を歩いていた。理由は単純で、地下の《姉》の様子を探るためだ。夜のほうが、RTAのノイズが少ない。
波打ち際に立って、意識を深く沈める。
――地下深部:《計測不能》空洞。反応、微弱ながら活動中。周期的な脈動を検出。
「脈動……心拍か? それとも」
「――寝息、じゃないのか」
振り向くと、如月冬夜が立っていた。白い制服が月明かりで灰色に見えた。
「……いつから居た」
「最初からだ。千里眼は視るだけじゃない、視られてることにも敏い」
如月は俺の隣に並んで、同じように海を見た。
「単刀直入に言う。お前も気づいてるんだろ。この島の地下の、《何か》に」
▽
俺は少し迷って、頷いた。隠しても、こいつの目には見えてるんだろう。
「うちの千里眼は代々、この島を観測してきた。聖鐘学園はそのための学校だ。地下のアレは五十年前から眠ってる。だが最近――寝返りの周期が、速くなってる」
「寝返り」
「地震だよ。小さいのが増えてる。協会は隠してるが、この大会自体、半分は調査目的だ。全国のスキル持ちを島に集めて、反応を見てる」
「で、俺が一番反応した、と」
「察しが良くて助かる。……なあ、遊佐。お前のスキル、本当は何なんだ。深層接続の報告書、肝心なところが全部黒塗りだった」
言うべきか、少し考えた。こいつの目的が読めない。ただ、こいつの千里眼が本物なら、隠し通すのも非効率だ。それに――決勝で当たる前に腹を探り合うのは、もっと面倒くさい。
「鍵、らしい。古い施設の管理者を起こしたり、寝かしつけたりする」
「……はっ。寝かしつけ、か」如月は本気で笑った。「いいな、それ。うちの家系が五十年観測して分からなかった答えが『寝かしつけ』」
「笑うなよ。世界の危機はだいたい寝不足が原因なんだ。俺の経験上」
「その経験、歪みすぎだろ」
波の音の間に、遠くかすかに、地鳴りが混ざった。如月の表情が消えた。
「――決勝は明後日。コースは最終発表までは伏せられてるが、千里眼にはもう視えてる。決勝の舞台は島の中枢、《竜骨大空洞》。……アレが眠ってる場所の、真上だ」
最悪の予感ほど、よく当たる。




