第23話 予選ステージは、周回済みです
本戦一回戦のルールはシンプルだった。
島の第一区画・沿岸洞窟エリアで、制限時間六時間、指定された『紋章石』を三つ集めて帰還する。三十二校中、上位十六校が通過。
「六時間で三つ、か。妥当な難度ね」詩織が地図を広げる。
「妥当じゃない」俺は首を振った。「湧きの密度と紋章石の配置的に、たぶん運営の想定は『強豪で四時間半』。それより――」
視界には、もう線が引けていた。昨夜のうちに港の周辺と洞窟入口の情報は歩いて拾ってある。RTAは情報を食わせるほど強くなる。
「うちの目標、五十分」
「「「五十分!?」」」
▽
開始の号砲と同時に、各校が洞窟へ散った。
俺たちは走らなかった。歩いた。ただし、一歩も無駄のない道を。
「第一の紋章石、この先の水路の分岐、右の壁の裏。他の学校は正面の大広間に釣られる配置になってる」
「なんで分かんの!?」と大和。
「配置した奴の気持ちを考えた。競技用ダンジョンの宝配置は人間の作為だ。人間の作為はパターンだ。パターンは、RTAの餌だ」
「言ってることが職人のそれなのよ」
一つ目、開始十二分で回収。二つ目は水中洞窟の奥で、これは大和が『勇者(仮)の大剣』を杭にして最短の水路をこじ開けた。二十九分。
三つ目の間際で、通路の崩落に巻き込まれかけている他校の生徒を見つけた。瓦礫に足を挟まれて動けない。仲間とはぐれたらしい。
――『RTA』:救助込みルート、再算出済み。ロス、推定六分。
もう聞くまでもない。俺のRTAは、いつからか最初から「助ける前提」で線を引くようになっていた。
「陽菜、頼む」
「うん!」
瓦礫を大和がどけ、陽菜の回復が光る。助けた生徒が呆然と言った。
「あんたら、なんで……敵だろ、競技の」
「敵でも、ほっとくと夢見が悪い」
三つ目の紋章石を回収して帰還ゲートをくぐったとき、タイマーは五十八分を指していた。救助ロス込み。上出来だ。
運営本部が、しばらく計測ミスを疑ったらしい。二位の聖鐘学園が三時間十一分。場内は俺たちの名前で沸いて、俺はその喧騒の中、控え室のベンチで十五分の仮眠を取った。よく寝た。




