第22話 開会式と、視線の刺さる音
会場の孤島・竜骨島は、島そのものが巨大ダンジョンだった。
半世紀前に出現した国内最大級の海上ダンジョンを、協会が競技用に管理・整備したものらしい。港に降りた瞬間、俺の視界が勝手に走り出した。
――『RTA』:超大規模ダンジョンを検出。スキャン中……階層数、推定五十以上。
――未知領域:地下深部に《計測不能》の空洞を検出。
「計測不能、ね」
管理者の姉とやらは、RTAでも測れない深さで眠っているらしい。まあいい。まずは大会だ。三百万だ。ソファだ。
▽
開会式は派手だった。全国から三十二校。スタンドには観客とカメラ。俺たちが入場した瞬間、場内が変にざわついた。
「見ろよ、あれが例の」「深層接続を四人で止めたって高校だろ」「一年生だけらしいぞ」「眉唾じゃねえの」
値踏みする視線が刺さる。大和は手を振って応え、陽菜は緊張で同じ側の手足が出ていて、詩織はいつも通りの無表情。俺は欠伸を噛み殺していた。昨夜、移動の疲れでよく寝られなかった。
「――随分と余裕だな、特別枠」
声をかけてきたのは、白い制服の集団だった。先頭の男は俺と同年代なのに、歩き方に一切の無駄がない。
「聖鐘学園、如月冬夜。今大会の優勝候補、って言えば分かるか」
「遊佐律。昼寝がしたい」
「……は?」
「こっちの話。で、何か用?」
如月は俺を上から下まで眺めて、ふっと笑った。
「深層接続の解決、協会の報告書を読んだ。四人で、装備も並で、三十日制限の未知深層を二十五日で踏破。……最初は誤記かと思ったが」
「誤記だったら楽だったな」
「俺のスキルは『千里眼』だ。この島の全ルート、全湧きポイント、既に頭に入ってる。情報戦じゃ誰にも負けたことがない」
視界の隅で、RTAの線がちらりと揺れた。似てる。こいつの見てる世界は、たぶん俺のと少し似てる。
「だから分かる。お前の目、俺と同じ側の目だ。――決勝で当たろう。どっちの《目》が速いか、白黒つけたい」
言うだけ言って、白い集団は去っていった。
「なんか、ライバルっぽい人来たね!」陽菜が楽しそうに言う。
「約束はしてないからな。俺は準決勝で負けても構わん」
「その手抜き宣言、フラグって言うのよ」と詩織。




