第19話 最深部の主は、よく寝ていた
扉の先は、白い部屋だった。
中央に、大きな寝台。そこに横たわっていたのは、竜でも魔王でもなく――少女の姿をした、半透明の存在だった。
「……アナタガ、鍵」
少女が身を起こす。夢で聞いた声、そのものだった。
「ワタシハ、コノ試練場ノ管理者。長イ長イ休眠ノ途中。ダケド装置ガ壊レテ、休眠ガ《暴走》ニ変ワッタ。三十日後、ワタシノ夢ガ溢レテ、地上ヲ呑ム」
「モンスターの氾濫って、あんたの……寝相か」
「有リ体ニ言エバ」
脱力した。都市を三つ消した大災害の正体が、壊れた安眠装置。
「鍵ノ力デ、装置ヲ直セル。『可能性ヲ引ク力』デ部品ヲ、『最短ヲ視ル力』デ手順ヲ。……オ願イ。ワタシハ、タダ、静カニ眠リタイダケ」
▽
俺は少女を見た。理不尽に暴れる存在じゃない。ただ、眠りたいだけの存在。
――こいつ、俺だ。
「大和、詩織、陽菜。手伝ってくれ。こいつの安眠、俺たちで直す」
「お前がそんなに乗り気なの初めて見た」
「同志だからな」
ガチャを回す。天井交換所に、いつの間にか『安眠装置の部品』の列が増えていた。木の棒も、かじりかけのパンも、全部が部品に換わっていく。RTAが修理手順を光の線で描く。
最後の部品をはめた瞬間、白い部屋に、柔らかな寝息の音が満ちた。




