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第17話 下層・夜の階層と、眠れない律
下層は永遠の夜だった。偽物の月、鳴かない虫、温度のない風。
そして、この階層に入ってから、あの夢の声が近くなった。
――深イ。モウ、スグ。オイデ。
「りっちゃん、三日寝てないでしょ」
野営の焚き火で、陽菜が隣に座った。ごまかそうとしたが、幼なじみに睡眠のごまかしは利かない。
「声がな。近いんだ。寝ると、引きずり込まれそうになる」
「……最深部の何かが、りっちゃんを呼んでる?」
「鍵を呼んでるんだろ。開けてほしくてさ」
▽
「怖い?」
陽菜がまっすぐ聞いてきた。俺は少し考えた。
「怖いっていうか。開けた先で面倒が始まるのが嫌だ。俺はただ、昼寝がしたいだけなのに」
「なら、こうしよ」陽菜が指を立てた。「終わったら、打ち上げ。部室で、みんなでお昼寝会。あたし、ブランケット持ってく」
「……なんだそれ」
「ゴールの用意。りっちゃん、ゴールが決まってると速いから」
視界の隅で、RTAのタイマーがわずかに輝いた気がした。ゴール設定:完了、とでも言うように。
その夜、俺は久しぶりに、声の聞こえない眠りに落ちた。
残り、七日。




