48話・手編みのクラバット
「ねぇ、ジェーン。それはきみが余の為に用意してくれたプレゼントだと思ってもいいのかな?」
「そうよ。わたしの手編みなの。気に入ってくれたら嬉しいわ」
毎年、ルイの誕生日には花束と共に、焼き菓子を自ら焼いて贈ってきた。でも、今年は別の物を贈ることにしたのだ。きっかけは義理の弟スティールだった。スティールの誕生日はルイよりも三ヶ月早い。スティールの誕生日には、彼からの要望でハンカチにパール家の紋章をワンポイントで刺繍した物を渡した。すると物凄く喜ばれて一瞬、ルイの姿が被って見えた。
それでルイにも無性に何か凝った物を贈りたくなり、銀色のレース糸で編んだクラバットを贈ることを決めたのだ。その晩からコツコツと丁寧に編んで来た。刺繍や編み物は得意のわたしでも結構な時間を要したものだ。でも出来栄えはそう悪くないと思っている。
「開けてみていい?」
「もちろんよ」
わたしの快諾にルイはリボンを解いて、箱を開けた。そこに収まっているのはわたしが三ヶ月という時間をかけた逸品だと胸を張っていえる。それを見てルイは目を輝かせた。
「きみの手編みのクラバットか。嬉しいよ」
ルイはそれを箱から取り出して頬にあてた。美しい彼が自分の作品を喜んでいる。それに満足した気持ちが沸きあがり気分が高揚してきた。ルイは自分が今までつけていたクラバッドをおもむろに外した。
「ジェーン。きみの手でこれをつけてくれないか?」
「いいわよ」
誕生日を迎えて初めての彼のオネダリに気前良く応じ、彼の首にレース編みのクラバッドを巻いているとあることを思い出した。前世の記憶が少しだけ頭を覗かせたのだ。結婚まで考えていた彼氏にバレンタインデーに贈ったネクタイをこうして贈ったことがあったなと。ネクタイを贈ることは「あなたに首ったけ」と、意味があったのだけど彼は分かってくれていただろうか?
手が止まった事でルイが訝るようにこちらを見ているのに気が付いて、再び手を動かせば不機嫌そうに聞かれた。
「まさかきみ、スティールの誕生日にも同じ物を贈ってないよね?」
「スティール? スティールには、彼のハンカチの角に刺繍をいれてあげただけよ。それがどうしたの?」
「それなら良いんだ。じゃあ、これはきみが余の為だけに編んでくれた物だね?」
「もちろんよ。ギルバードにだって、そんな手の凝ったプレゼントを贈ったことはないんだから」
あなただけよ。と、言えばルイが大喜びで抱きついてきた。こんな所は幼い頃のルイと変わらない。それなのに抱きつかれて落ち着かない気持ちにさせられる。
「本当にありがとう。ジェーン。こんなに嬉しいプレゼントはないよ」
単なる幼馴染の抱擁のはずなのに彼の顔が近い。と、思ったら、唇に何かが触れていた。突然の出来事にわたしは目を白黒させ、彼の顔が離れてからも気持ちが平静になるまでにしばらく時間を要した。




