神々との戦い。その2。
「抜け」
「それは、あたしが決める事だ」
右手と右の膝を地面に付け、血反吐を吐き捨てた亜意。
「そうか。過ぎた武器だったようだな」
神気が来た。今度食らえば、死ぬ。そして、回避方法は。無い。
ピタ
「なに・・?」
ふう
「やっと。出来たぜ」
回避方法は、無い。だから、神気を取り込んだ。
「・・・いや。お前は、神性を持っていない」
「その通り。まあ、理由は好きに考えてくれや。消え失せてからな」
神は、神族の末裔が、とも思ったが、違う。どちらかと言えば、魔族寄りの、ただの人間に過ぎない。
その通り。幼少時から戦い続け、結界の技法に習熟した友を持った、ただの人間だ。超騎士との稽古は、本当に実になった。惜しげも無く結界の技法を全て、余す事無く教えてくれた。
そのあたしが、簡単に負けちゃあなあ!
ずっと繰り返し。失敗と回復を重ね、実戦に於いて、その呼吸を体得した。超騎士め。こんな難しいなんて、聞いてねえぞ。
神気が、効かない!放出する傍から、相手の威が増している!
「ぐ・・」
ならば、直接ぶつかるまで!
キン
「・・・・・・さらばだ」
「間違い無く。強かったぜ」
鳴ったのは、鞘に収めた音。
突進して来る神の体を造作も無く斬り裂いたは。魔剣水色。
これも、教えてもらった。剣士ではない亜意のため、抜き打ちだけを極める修練。斬り合えば、負ける。ならば、魔力糸で捕らえた敵を、反撃抵抗を起こされる前に最速で屠り去る。そんな戦術。幸い、教師は豊富だった。ダイコウチを代表する剣士が、複数居る。
神気は、水色と共に取り込んだ。当然のように、水色もまた神気を吸収、成長している。
「お前も、良く我慢したな」
りん
水色が鳴った。亜意を元気付けるために。
こんな弱いのが持ち主で、わるい。
もっと。強くなるからよ。
水色は、自我を持ち、ある程度の自由行動も取れる。亜意の、自らの危機を、自身で何とか出来たはずだ。それでも、亜意の意を汲んでくれた。亜意に、全て委ねてくれた。
「あたし達は、もっと強くなれる」
りん
「美しいものですわね」
「分かるのね?あなた、見所が有るわ」
「おお!」
片割れが隙を作り、片割れが攻撃。その常套手段によって、削り勝つつもりだったが。
「本気をお出しなさい」
剣では、通らない。一見、麗しいご婦人。しかし、堅い!
合流。外すと、不味い、が。これ以上時間をかけても、突破口を見出せない。行く!
ゴ
収束している。熱量の高まりを感じる。美しい火花。この私の相手として、不足無し。
オ
無双双児の全開の共鳴砲と、単独で拮抗する威。
「へへ」
「ふふ」
「うふふ」
和やかさと親しみを込めた笑みを交し合い。相撃つ。
イィ、オ
其処に、確かに在った庭園。咲いていた花も、これから咲くはずだった花も。全て消えた。
半径800万キロメートル内の物質を塵以下に最小化した双方の攻撃は、しかし、双方を生き残らせた。
「攻撃は最大の防御。お見事です」
「そっちこそ!」
「ええ!」
お互いの攻撃が真っ向ぶつかり合った事で、それぞれの技を発生させた各々が居た場所だけは生存可能領域となったのだ。
「さあ!」
「もう一度!」
「散るまで!」
踏みしめた足は、また土を感じる。惑星規模で破壊したはずなのに。目に見える通りの世界ではないのだ。この、天とか言う場所は。
「ほら」
「ありがとう」
初三千世界は、「僕」に向かって家庭料理を出していた。
ずずず
「これは、三十鬼の味。こっちのお漬物は、祝寝」
「美味しい・・。お味噌汁に、なんでタコが入ってるのか。これ、別物だよね。美味しい、けど」
「良いんだよ。家庭料理は、何が入っていても。いや。むしろ、入れるべきなんだ。残り物を!!」
「おお!!?」
真理。ご家庭に於いて、食材をきっちり料理分使い切るなど、不可能。神でも出来ぬ事よ。だからこそ、カレーやシチューや味噌汁に、え、何これ?みたいな物が入っているのだ。焼き飯や野菜炒めでもオッケーだよ。
「僕もね、家庭に入って長いからね。愛妻料理って奴さ」
「へええええ!」
初三千世界が何も無い所から出現させたシートに座り、やはり初三千世界の生み出した料理を食す2人。
「僕は、グラタンが得意なんだ。材料を全部グラタン皿に入れて、焼く」
手本を見せる。フライパンで、材料を炒める。火力は、魔力で適当に調節し、焦がさないように。グラタン皿に材料を入れる。皿周辺の空間を、250度の温度で固定する。好きな焼き色になったら、出来上がりだ。使い終わったフライパンは、料理を食べる前に洗っておくと楽だ。後は、キッチンに空間転移させれば片付けも終わり。さあ、食べよう。
「美味しい。し。違うね」
「うん」
熱いチーズ。熱いグラタン。初三千世界は、蹴速のためにお肉の入ったグラタンを覚えた。だから、料理の本に載っているものとは、ちょっと味が違う。
「これが、君」
「うん。僕と、僕らの味。僕らの証」
生の証明とは。何らかの業績を残す事。子を産む事。
誰かの生に、影響を与える事。
「良い剣だ!!」
「そうか!!!」
神化状態での俺の剣を、受けるか!
大地を噛み締めた左足、これから大地を縫い付ける右足。己の可動限界の限りに全力で握り締めた神砕き。普通、こんな力を入れてはいけない。
そう教わった。始まりの頃だ。まだ、豆も出来ていなかった頃。有我と梅と俺が、違う家の人間と分からなかった頃。
神無。肩に力を入れてはいけない。剣を離さぬよう、しっかりと力を入れるのは、手首まで。そうすれば、剣は必ずお前の力になる。そして、打ち込んだ瞬間に全身を固定。肉体の全てを、1本の剣と化する。神化は、その先に有るのだ。
もう、どんな声だったかも思い出せない。
それから。華虎に野薔薇に、有我に梅に。蹴速にシロに、三十鬼にアカに。皆に教わった。
「これが!!!俺の剣よ!!!」
技ではない。業。
「そうか」
純粋な神化では、なかった。神化によって蓄積した身体への重い痛みが、魔力によって回復している。神気と魔力が、同居している。
剣筋も、人間のそれではない。神化は、主に大軍相手の殲滅奥義。間違っても1対1の決闘には用いない。それでも、大地に降り立った子孫が選んだ戦術。我等とのつながり。
神化を、蹴速と同じ理法で使う。即ち、
力そのものの形を掴み取る。蹴速の格闘術は、人間の合理を完全に無視している。が、それは、軽んじているのではない。超越しているのだ。
俺の剣術は、有我や三十鬼に及ばない。だが、俺とて二神。積み重ねた剣の自負は有る。今までは、神化を用いて剣を伸ばしていた。それが、確実かつ自然な技法だったからだ。
だが。まだ上に行ける。
神化状態ならばこそ可能な動きが有る。そして、それは、俺の肉体ならば、可能なのだ!
蹴速のように!
神の本気とは、常時神化状態のようなものだった。それは、そうだ。神なのだから。もし神無が、人間を相手取るように戦っていれば、時間切れで負けていたかも知れない。
強い。神には、剣術はそう存在しない。術が、先ず要らない。神気を以ってすれば、その時点で敵は無いから。故に、神化状態の剣士は、その時点では神をも圧倒するだろう。
それでも、神化で、神砕きを用いるだけでは。勝てるものではない。
神砕きは、こちらが子孫に与えた物。それを使おうと、見知ったものの域を出ない。
「知らぬな・・。何だ、この剣は」
「これが!!」
握る。強く、決して離さぬように、2度と零さぬように。
「俺達の神砕きよ!!!!」
受けが、効かない。神砕きと神化の両方が神性を持っている以上、神は容易に防御出来るはずなのだ。後は、強い方が勝つ。
見知らぬ神砕きに、見知らぬ剣法。
また、元気な跳ね返りが生まれたものよ。
「強くなったのだな」
「ああ。ご先祖様の力も大したものだったぞ!」
「口の利き方は、教われ。まあ、良い。力は、誰かに従うために有るのではない。お前がお前の道を切り開くために有るのだ。行くが良い。振るうが良い。お前の自覚は無くとも、お前の剣は、お前の周りの者を助けているようだ。頑張れ子孫」
「応!!」
結局。殺せなかったか。
読心を全く欠かしていなかった神は、ちょっと後ずさった。
「・・・・・・・・良し」
何も無い。宇宙ではない。地上でもない。かと言って空でもない。
天。
知らない場所だ。
それでも、おれは困らない。
ジンは飛ぶ。真っ直ぐ、一直線に、蹴速を目掛けて。自分が今、何処に居るかも分からずとも。
「時間を食った。蹴速、待ってるかな」
およそ。其処に在った世界の全てを破壊し尽くした後、ジンは移動を開始した。誰にも、自分と蹴速の邪魔をさせぬために。
今行く!蹴速待ってて!
ふむふむ。
シロは、蹴速の言う通りに全員の様子を見ていたが、手を出すまでもないと知った。
蹴速のおまけ程度の認識でしかなかったが。どうして中々。
ジン以外の者達の決着の付き次第、回収するか。ジンは、明確な方向表示の無いこの天に於いて、明確にこちらに向けて来ている。
面白い。蹴速と光天からも目が離せぬが。人も面白いものよ。
シロのご機嫌な様子に見とれた光天にクリーンヒットを決めた蹴速。戦いは、まだまだ続く。




