星の落ちた日。
終天編。開始。
「すごいねえ。本当に有名人なんだって実感する。それに、綺麗」
製本された雑誌を見ての感想。祝寝達とリビングに。
「載ってみたかった?」
「ううん。主婦って肩書きしか持ってないし」
祝寝、己黄、海鶴は雑誌掲載をしていない。どころか、インタビューさえ行われていない。一般人である祝寝を掲載すると、我もと蹴速に結婚申し込みが殺到してしまう。それは面倒だ。もちろん、一般人でも認められれば、サクセスストーリーの仲間入り、と言う筋書きは悪くない。だが、祝寝を巻き込む程のメリットでも、ない。故にそれなりの肩書き持ちを選んだ。
己黄、海鶴に関しては、判断を迷った。人魚とのつながりは公表するべきだし、公的に同盟を結ぶのも検討している。仔細は、まだ詰めている段階だが。しかし、それと海鶴個人を公表するべきかは、別問題だ。海鶴の心労を増やすのは、蹴速の不評を買う。やめておこう。
海王に関しては、こちらの人魚に誤解を与える可能性が有った。海神、海竜の他のモノと思われる。そして、有り得ない事だが、向こうの海王を狙われるのも困る。ボディガードは付いていない。向こうの海の一族のみだ。
そして、河歯牙は現状維持。今のポジションで都合が良い。
月刊・世界の剣士に載っているヤマトナンバー特集の時の三十鬼と、写真写りを見比べてみたり、季刊・世界の火力に載っている仮要明の若さを楽しんだり。何かが起きればそれを起点として、面白可笑しく過ごす事も出来る。
安定した、と言っておく。ミヤザキの大地はかつて、魔神の知恵さえ貸してもらい復活した。そして現在の魔力結晶の安定供給につながっている。そして、過去を繰り返さないよう、大地の監視も怠っていない。何がしかの兆候を掴め。発生次第、結晶化を止める。現在、飛行兵に十分に行き渡る分量を備蓄している。無駄遣いをしなければ、魔力の循環を待つ事も出来るはずだ。
繰り返すと、コウチに見放される。半ばナインラインの管理代行のような役割を担っているミヤザキ代表、巨鬼 咲黄。危ない橋を渡っている自覚は有る。それでも行く。魔力技術はダイコウチ随一と自負しているのだ。磨かずどうする。
そんな日々を送っていると。
星が降った。
「兵は生きている?」
「はっ。直撃を受けた者はゼロ。落ちた星の余波で怪我を負った者、3名。しかし、全員骨折程度。現在は治癒を受け、全快しております」
「では、周辺観察に移れ。異常を見逃すな。無論、被害の大きい場所の報告も忘れるな」
コウチに駐留していたミヤザキ飛行兵部隊は3名家の指示を受け、2班に分かれてコウチ兵と連携し、異変状況、被害状況を探り始めた。
3名家は緊急会議を開く。
「超騎士は?」
「突然、降って来た、と」
超騎士が完全に集中した結界は、雨が降り始める時さえ認識出来る。普段の結界は、異物の判別に機能を割いているとは言え。超騎士が突然、と言った以上、尋常な自然災害では有るまい。
魔神の知恵を借りるべきか。誰も口に出さないが、誰もがそれを考えた。
星が降るなど、聞いた事も無いのだから。
「己黄、知ってる?」
「いや。知らぬな」
龍としての知識の中にも、星落としの経験は無い。
「やっぱり、そうやって喋ってくれた方が楽だなあ」
「うむ」
「そうか?・・うむ・・」
己黄は、神無以外の人間と話す時の喋り方を改めてみた。どうにも、親と話していた時の喋り方を無意識にしてしまっていたのだ。
だが、子も出来た。子は普通の人間の言語も扱えなければ、不便だ。己黄も子を完全な龍として育てるつもりは無い。
黄神には、人と龍を超えてもらう。いつか魔神をも超えて、真の最強になってほしい。その過程、修行の段階では、人に教えを乞う必要も有るだろう。母が、龍の言葉遣いを通していれば、子も真似してしまう。先ず、自分から。
と、言っても、やはりまだ慣れない。初めて神無と会った時は、気を張っていたが。その張り詰めた気でなければ、言葉を操りにくい。
己黄は、言語を人間から学習したのではない。龍は、人間の言葉程度なら、「真似」出来る。もう少し詳しく言えば、こちらの世界の全生物の言語を操れるだろう。更に、全生物を取り込めるし、毒は意味を成さない。龍を殺すには、ただ強い必要が有る。
情報が、要る。連絡の有った地域だけでも、ほぼダイコウチ全土。ヴァイキングとグリスは、まだ連絡が付かない。蹴速か魔王が跳べば、直ぐにでも分かるが、キが行かなければ、情報を上手く把握出来ないだろう。アカと蹴速はちょっと・・。アオミドリでも上手くやるか。
「それで、おれとキ?」
「ああ。行ってくれるか」
「おっけおっけ。梅達も頑張ってるしね。少しぐらい手伝っても良いよ」
望むなら。少しでなくとも良い。この家を維持しているのは、人間。礼をしても良い。アカ達には、蹴速と子らを連れて魔界に行く選択も出来るが、この家の方がより面白いと思っている。
アカとキは、ヴァイキングに向けて出発した。出来ればジンも欲しかったが。ジンは精神的に、少し不安定になっていた。隕石ならば、問題無い。千降ろうが消してみせる。だが、あれは隕石ではない。ジンに埋め込まれた知識の中の隕石のケースに当てはまらない。感覚が、少し鋭敏になっているジンを、蹴速無しで向かわせるのは、怖い。アカなら抑えられるだろうが。それを心配する位なら、家に居てもらった方がマシだ。今は余裕が無い。心配の種を増やしたくない。
これ以上の損害は、要らん。超騎士に頼み、上空へ堅い結界を張ってもらう。雨も防いでしまうので、常時張ると、そのためにコウチが滅ぶ。
「びびった」
「全くだ」
ヤマト。三十鬼の居ない今、最強格のナンバーツー、十言 充言。同じくナンバースリー、九重 九連。
ヤマトでも、星の被害が出ている。その対応のため本部に集合したナンバー達。
「とりあえず、落下中の石ころを斬ってみたが。すげえ硬さだった。本気で斬って、ようやくと言った所だ。下位ナンバーは、複数で当たらせる。ナンバーフォーまでは1人で斬れるはずだ」
アレは一体何なのか。怪しげだったので、九重は斬ってしまったが。有毒ならば、不味かった。魔獣を詰め込んだ玉、でもなさそうだ。
「コウチは、情報収集に飛んでいるらしい。こちらはそれを待つ。今は、被害状況の把握と救護のみだ。反撃は、後回しだ」
天災ではない気がする。ヤマトの歴史書にも、年寄りの知恵にも、このような事態は存在しない。敵が居るなら、すぐさま斬る必要が有る。次を防げないのでは、ナンバーなど置き物に過ぎない。
ミヤザキは大童だった。情報収集及び伝達が仕事のミヤザキをして、不測の事態。
せめて現在の世界を把握出来なければ、存在意義に関わる。
刀農でも鮭川でも、この突然の出来事の対応に追われていた。
そして。
「ふん。おれが出る」
「では、露払いをお願い出来ますか?」
「任せな。つええ奴は、譲ってやる」
悪い顔の三鬼 華虎。最早、中つ国の支配者として安定して収まっている神朗。その下に、謎の集団が中つ国に突然現れたと報告が有った。
そしてその者達は、警備兵をことごとく殺した。
威厳に関わる。死んでもらうしかない。
「出るぞ!構えい!」
大々的に出陣。神朗と華虎が意図的にそろえた若き中つ国の戦士達を率い、二神の、神朗の力を見せ付ける。不本意ながらも、利用する。
街中心部。物珍しげに歩む敵。遠巻きに監視する兵達。
「監視兵は、遠距離を除いて下がらせろ。巻き込んでしまう」
神朗の指示は早い。次の段階に進む前に、飛ぶ。華虎は嬉しんだ。
これは、二神の戦だ。神化を使う者が下す命令の特徴。
前言通り、華虎が前に出る。若者の中にも神化を使える者は居る。だが、神朗には数段劣る。これから強くなるものを使い潰すのは、もったいなさ過ぎる。
「よお。お前ら、誰だ?」
こちらを向く敵。
そして、攻撃が来た。
「おれは。誰だって聞いたんだぜ」
紙一重で躱した華虎は、鞘でブン殴った。
だが、効いていない。敵に怒りの表情が見えない。
「お前に話しは無い。人間は、控えておれ」
突き出した掌から、圧力が。
紙一重でなく、全力で回避した。この力は。
まだ生き残っていたのか。コウチに反抗する神族。
「そこの。一体、何故人間などをのさばらせておる。神族会議は、怠けておるのか」
「・・・」
違う。こいつ・・?
「一先ず、確保せよ」
神朗から華虎へ指示。人前なので、命令口調だ。
「了解」
抜いた、と同時に敵の首が斬られていた。
あ、と神朗はびっくりしてしまった。確保って言ったのに。
華虎には予感が有った。
斬れない予感が。
そして、それは、
当たっていた。
「下がれ、と。言った」
今度こそ、敵に意気が灯った。
やべえ。
神朗より、神無より濃い神気。
「伝令をお願いします!コウチへ、救援を!」
「華虎の言った通りに」
即座に兵が駆け出した。
神朗は、華虎の見立てを全面的に信じられる。
と言うより。神朗自身が、神気を感じ取ってしまった。
強いかどうかはともかく、神性の高さは、未だかつて、無い
「人間などを相手取っては、手が汚れてしまうが。虫は、駆除せねばなるまいか」
神気が膨れ上がった。




