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新しい、神砕き。

 八神の1人、地居に聞いた話では、やはり神砕きに類する扱いの剣。つまり、製造は不可能。良い剣だ、と言う話の流れで聞き出したのだが、祖先がどうやってか、手に入れた物。入手手段は、不明らしい。


「そう言うわけだ」


「はいはい。分かりましたよ」


 歯牙の仕事は、2つ。新たな神砕きの行方。賢獣シーラの行方。


「んーーーぬーーうーーるー・・」


 相も変わらず。この声は、どうにかならんのか。


「視えた!」


「ふむ」


「やっぱさあ。その、山脈?の、八神からかっぱらった方が早いよ」


「つまり、遅い手段は、有るわけだな」


「聞くー?聞いちゃうかー。・・・あのねえ、初三千世界のとこの、床板をもらってね、加工すれば良いよ。蹴速君でも折れない、無敵の剣が創れるよ」


「それは、難しいのだな」


「うん。蹴速君でも折れない。つまり、加工出来る技術者なんて、居ないよ。シロか初三千世界に、テキットーに作ってもらおっか?」


「神無には、言うな。他の手段は無いのか」


「んー。青星って場所に有るのかな。何か、船の殻。それを同じように加工すりゃ良いよ」


「ふむ・・」


「やっぱり、冗談じゃなく堅いけどね」


 やはり。


 要らぬ。


 「神無が望んでいる神砕き」とは、そうではない。だから、歯牙も、八神から奪えと言っている。


 だが、蹴速がそうしなかった以上。その選択も消える。


 さて。


 梅は、その後、シーラ関連の話を詰め、有我とも話し合う。


 帰還後、大事に包み込んだ荷物を抱えていた己黄と海鶴。2人は、暇になった蹴速を連れ、神無の部屋へ。


「出来たぞー」


「うむ!!!」


「なんと!!!」


 神砕きは完成した。


 受け取った神無の手には、確かに神性をまとった神剣。


「これは・・・・見事!!有難う己黄!」


「己黄が、振り絞ってくれた。海鶴も力を貸してくれた。2人の作った剣よ」


「そうか・・!!」


 思うように動かぬ体を動かし、己黄を抱き締める。


 人の間の風習など、己黄に思う所はない。だが、神無が、暖かい。良い気持ちだった。


「海鶴。お前も手伝ってくれたのか。感謝にえぬ!」


 己黄の側に控える海鶴。そっと微笑んでくれた。


 神に与えられるのではない。友に、家族にもらった剣。


 格は、落ちたが。


 核は、入った。この剣は、明確に、俺のものだ。蹴速が探し、己黄と海鶴が作った。


 これ以上に俺に相応しい剣など、無い。


 力の入らぬ状態とは言え。神無の握力で、しっかりと握り締めて尚、余裕を感じさせる。全く、損傷の予感が無い。触った感じ、木に似ているが。違うな。


 神無も、3名家の人間は全員、剣と言う剣を握った事が有る。どれが合うのか。どれなら、全力以上で振り切れるのか。


 例えば、有我なら2刀を好んで用いる。故に、軽い剣。もしくは、癖の少ない剣を主に求める。己の意に逆らわない、素直な剣が良い。だが、戦況戦場獲物に応じて、何でも使いこなす。その気になれば、斬場刀すら特盛より優雅に振るうだろう。あれは、元々は3名家のための剣なのだから。


 一一人有我が扱えぬ剣は、3名家の倉には存在を許されない。扱えない、とは、試し切りの段階でへし折れるような、ナマクラの事だ。まあ、その試し切りの条件が、岩を100たび、木を100度、斬って折れない、なので、そこそこ厳しい。それも、3名家の腕力で、戦場と同じく全力で挑むため、剣一一人などの有名メーカーでさえ、失敗を繰り返している。岩の硬さ、木の堅さ、両方を切って初めて戦場に耐える。


 梅は、より切れ味の良いものを求めている。一撃で、初見で即座に斬り殺すのが、最上の展開。蹴速並みと言わずとも、気を纏った人間、魔力を纏った魔族は、簡単には斬れない。警戒していない会戦直後を狙う。剛性は、全く要らない。今の梅に攻撃を当てられるのは、恐らく家族だけだ。剣を受けに使う事は有り得ない。


 神無は。剛力に身を任せる。ただ、斬る。通常時は、それでも剣術を操るが。二神の二神足る所以ゆえん、神化。それに最も適した剣。神砕き。


 だが、神砕きは失われた。神無の技量が、神切を遥かに上回っていれば。同じ結果にはならなかったはずだ。


 無茶苦茶。死んだ神切の年齢を、神無は上回っていない。どこまで、過剰な自信か。


 だが、神無なのだ。3名家、ナンバーツー、二神神無。ならば。たかが1人の敵とやり合って、一々得物を失っては、使い物にならん。


 この剣。早く振ってみたい。俺のために、俺のために。


「面白い剣ぞ。期待しながら、体を治せ」


「そうさせてもらおう」


 にこやか、と言うには、少しばかり威を発してしまっている。気が乗ってしまった神無。まだ、体を動かすだけで痛みが走るのに。それでも、痺れ、思うように動かない体は、己黄を抱き締められた。良くやった。流石、俺の体。鍛えた甲斐が有る。


 もう1つの懸案、賢獣シーラ。兆獣王を屠った今、大した脅威ではないはずだが。ダイコウチに歯向かったものを生かしておくのは、スッキリしない。絶滅させる。


「ウロチョロしてんね。これを捉えるのは、難しいと思うよ。私が行けばともかく」


さかしい。仕事は、どうなんだ」


「いつも通り。ゲート使ってもらって、パッと行ってパッと帰って来ようか」


 仮にシーラを倒そうと、歯牙の日常には一切影響が無い。仕事をおろそかにしては、家での立場が危うい。家事を丹念にこなすやる気など、無い。


 水中のシーラを殺害出来るのは、魔王。余裕しゃくしゃくだろう。


「確認を取る必要は有るが。攻撃にアカ。護衛に超騎士。移動にキ。この3人を付ければ、十分か?」


「アカだけでも過剰な戦力だけどね。ま、3人居れば、話し相手にも困らない」


 快く了承してくれた3名に、丁寧に礼を述べる梅。これは、確実にコウチの仕事。本来、3名家が行わなければならない。


 梅は、どこまでも固かった。


 その後。話を詰めるために神無の部屋に向かい、新しい神砕きを見せてもらって、少し自分の存在価値を疑う梅だった。

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