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山でも変わらず。

 楽しかった。そんな敵に、海上であった出来事を紹介。


「それは、こちらの人員だ。申し訳無い」


「終わった事よ。こっちこそ、勝手に殺して悪かったな」


 蹴速の本心からの謝罪とは、言い難い。ただ、目の前の敵には、礼を尽くしたい。


 面白い戦いだった。蹴速は、本心から戦いに感謝している。


 蹴速より背の高い男を抱いて、蹴速は都市部を歩く。


「で、何処行ったら良い?」


「本部へ。頼めるか」


 直ぐ近くらしい。


「お安い御用よ」


 その、本部前には、集合した強そうな者共。流石に上空での戦闘に気付いていたらしい。


「えええ、と。八神はちしんが、もう5人になっちゃった感じ?」


「の、ようね。地居が動けない、あの2人が死んだ」


「で、どう視た?」


「無理無理。最高状態の地居でも、敵を1人も減らせてない。勝てんわ、これ」


「やってみなければ!分からん!」


「やってみるか」


 蹴速も会話に参加した。今は機嫌が良い。稽古、と言う事にしよう。


「やれば、分かるろう。おれも、お前らを殺すよりは、使いたい。コウチの手足になって欲しいんよ」


「好き勝手言いやがる」


「おお。おれが強い、お前らが弱い。お前らが弱いのが、悪いな」


「ちい・・」


 それでも、暴発する者は居なかった。面白い話だが、この場で蹴速より出来ていない人間は居ないらしい。


「飛べるか」


「おれは・・」


「じゃあ、戦っても良い場所は有るか」


「有る!」


 好戦的、とは言え、蹴速よりはマシな男は先に立ち、歩き行く。


 おいおい。おれを、置いてってどうする。


「行って来る。亜意、話を頼む」


「あいよ」


 蹴速と男が戻って来たのは、15分後。


「兄貴、おれは、どうやって兄貴の役に立てば!」


「お前は、お前の努力をしたら良い。今まで通り。でも、今はおれを知ったな。おれをイメージせえ。そして、おれより強いお前自身をイメージしろ。お前は、必ず、そうなる」


「応!!!」


 蹴速には弟が出来たようだ。


「おい。あれを家族に引き込むとか言うなよ」


「うん?・・・うん・・・」


「おい」


 亜意は己黄を傍らに置き、4名を相手に話しをまとめていた。マオミドリも居るが、アオミドリの姿は無い。


「ん?」


 キョロキョロする蹴速に答えるマオミドリ。


「お母さんなら、梅さんの案内に」


「あたしが指示した。梅との連絡が取れたんでな。陸路が明確に有るとは言え、誘導が居た方が楽だからな」


「そうか。アオミドリは働かせっぱなしやな。亜意もありがとう」


「亜意様から、お話は伺った。しかし、話を詰めるのは、梅様が来てから、と」


「おお」


「いつか。コウチに行っても良いか」


 地居。


「ああ。体が癒えたら来い」


 地居の肩を抱く蹴速。


 亜意は、ヘンな家族が増えないか、若干心配だった。


 梅の本隊が来るまで。観光と稽古を繰り返し、コウチの蹴速の名は売れまくった。


「蹴速。今の動き、もう1度頼む」


「同感だ、兄貴!」


「おお!」


 複数を相手取った戦闘。可能な限り手加減をしつつ、誰の目にも分かるよう動きを見せる。稽古なのだから。


 相手役は、八神の3人。確かに、あの女の言った通り、速い奴が居た。


 速い。蹴速の感覚でも、かなり。有我に並ぶんじゃないか。ただ、速いだけで、怖くはないが。そこは、これから鍛えれば良い。


 分け身まで、使いこなした。やる。


 蹴速も数百の己を現し翻弄。これも、見学している人間に分かりやすいように。


 こう言った技も、こちらの世界で習得したものだ。有我や三十鬼に見せてもらって覚えた。


 技、とは試行錯誤の集大成。その者の努力の結晶。技を見せてもらうのは、とても気持ちの良いものだ。


 蹴速は、それを一見で我が物とするので、かなり台無しだが。


 梅達の到着。


 それに合わせて、歓迎の式典が開かれていた。


「見事」


 まさか、蹴速の独力では有るまい。アオミドリか亜意か。


 梅は、的確に蹴速を、家族を見ていた。


 そして、その通り、空の玉座の横に蹴速と亜意。


「待たせた。随分、良い働きだ」


「難しい事は亜意任せよ」


「片は蹴速が付けた」


「羨ましい役割分担だ」


 梅は早速、コウチ兵の寝泊りする場所を、山脈側の人間と協議、用意。と言っても、亜意の指示でほとんど終わっていた。


 全く、私の恋敵は、頼もしい。


 兵の護衛をやってくれていたアオミドリが戻ってくる。


「本当にアオミドリは働きっぱなしやったな。すごく、助かった」


「ううん。僕、蹴速君のためなら、どれだけだって頑張れるんだ」


 しおらしく、全力で演技。働きたくない、努力など以ての外。しかし、蹴速は譲れない。全力で行く。


 蹴速を獲る。


 蹴速は、アオミドリの本気に反応。


「アオミドリとは、あんまり稽古出来てないな。明日からやるか」


 んんん?


 アオミドリの期待した反応は、ベッドでの相対だが・・・。


 これから、進展するのかな?


 進展も何も、既にそう言う関係に有る2人。蹴速は、アオミドリは当然寝屋に入り込んで来ると思っているから、殊更に誘ったりしない。


 このままなら、アオミドリの1人相撲だが。


「おい。お前は、状況、戦況に応じた戦闘方法を学べてない。蹴速と一緒にアチコチ出てくんだな」


 亜意。


 一応、褒美、ではないが。


「ありがとう亜意!」


「バカが」


 まだ、蹴速の返事を聞いてないのに、礼を言う奴があるか。


「デートのお誘いか?行こう」


 分からん。分からんが、アオミドリとの時間は、取りたいと思っていたのだ、今。好都合。


「ここで時間をかけて良いのか?」


「ああ。付け焼刃と言え、固めておきたい。山と海で、挟撃されるのは怖いのだ。支配下に置いてから、海だ」


「なるほどな」


 あの2人は、山脈の者と名乗った。海は、支配下ではないのだろう。どちらかを先に獲り、反攻を抑える。


 そう考え、こちらに来たが。どうやら正しい。海岸は別勢力。


 梅はここで時間を使う。


 アオミドリだけと、デート。更には船にも時折帰り、海鶴、超騎士ともくつろげる時間を。


 そして。亜意のゲートで、海鶴、超騎士を招く。アオミドリ、マオミドリは船の警護へ。


「海までは、歩いて3日。飛べば数時間やと」


「なるほどな。海には、4日後。蹴速、今回と同じ段取りで頼めるか」


「問題無いぜ」


 海にも面白い奴らが居れば、幸いだが。


「山脈と海岸は別勢力。それで、共存していたのだから、そう手強い事も有るまいが。一応、注意はしてくれ」


「ああ。ありがとうな」


 手強くない、のは、もちろん蹴速基準だ。梅が、コウチ兵が相手取ったなら、分が悪かった。しかし、今回は、問題無い。何故なら、蹴速がやる気で、梅も蹴速に任せているからだ。


 船に戻ったアオミドリ、マオミドリは船の甲板で昼寝にいそしむ。


「ねえ。こんな事してて良いの?」


「良いの良いの」


 この周辺には、超騎士が結界を残している。家のと同じ、船の乗組員以外が近寄ると、「鳴る」。マオミドリもそれは知っているが。居残りのコウチ兵は、訓練を大真面目にやっている。少々、居心地が悪い。


 おっと。お仕事だ。


「行こう!」


「うん!」


 海岸側の森から出てきた魔獣を即座に屠るマオミドリ。同じく、群れなして襲い来る怪鳥を次々解体していくアオミドリ。終わったなら、後始末を兵に任せ、寝る。次に起きるのは、襲撃かご飯かだ。


「張り切って船を壊すか、寝てて襲撃を見過ごすか」


「それでも良い。おれが全員連れて帰っても良い。アオミドリは、十分頑張ったわ」


 代えの船を持って来ても良い。船の1隻くらい運べる。


 亜意は、少しアオミドリを心配していた。以前のミドリなら。魔神に言われるまま、仕事に精を出していた。絶対的な忠誠、ではなく、それ以外の生き方を知らなかった。


 今のアオミドリは、蹴速との出会いで、世界の広さを知った。魔神を蹴り飛ばす者。


 アオミドリの価値観は、根底から破壊し尽くされた。


 永遠の無変化が、一瞬で終わった。


 だから。昼寝で寝汗をかく仕事をしている。


「聞くだけなら、ひどい話ですが」


 それまでの常識が一変して、戸惑わない自信は、超騎士にだって無い。初めて蹴速と会った時。その蹴速より強い魔神と会った時。何時だって。ドキドキしていた。鎧兜で覆われて分からないだろうが、超騎士も、驚きもするし、わななきもする。


「兄貴。おれも行く」


 場所が変わっても、何処にでも馬鹿は居る。今の今まで敵していたものを、ほいほい使うわけが。


「おお」


 亜意と梅は、蹴速の答えを知っていた。


 自分が使うと言った。だから、使う。当たり前で、普通。常識的な感覚と、蹴速は心から思っていた。自分は、極普通の、極めて平凡な感性しか持っていない、と。


 祝寝なら。きっと、自分の百倍は結果を出す。あいつが、敵でなくて。嫁で助かった。

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