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二神。

 先程、アカが連れ去られた場所。其処へのゲートを開き、行く。


「こんにちわ!・・・あれ」


 民、そう名乗った者は居なかった。他の、アカが手にかけた者達は居るのだが。


「行き違いになったのかい。あいつらは、君を迎えに行ったよ」


「そっかー」


 アカは、返事をくれた者を。握り潰した。


 さて。


「此処は、コウチに明け渡して、蹴速君に褒めてもらおう!」


「ええ!」


 魔神様に褒めてもらいましょう!


 モモは、死んでいる人間に、魔力を埋め込み、そして殺していく。生き返った、のではない。「殺せる」ようにしてから、再殺。


 モモは、魔力を持ったモノ全てを殺せるのだ。


 安心して死んでください。きっと、あなた達の屍の上に、私と魔神様の楽園を作ります!


 アカは、目立つ造形をした物、者を潰していく。モモは、アカに続く。


 子供達が見守る中、味方以外は、消失した。


「ふむ」


「すごーい!」


 マシロは、見習った。モモの技巧。真似る価値が有る。アカのあれは、力が足りない。真似れない。


 マアカは、手近な砂で、アカの真似を始めた。


 子供達を招き、アカは考える。周囲を綺麗に掃除するか。船に戻るか。奴らは、果たして、船を知っているのか?アカが捕らわれたのは、船からかなり飛んだ地点だ。


 良し。周囲を探索。残りが居るかどうか、調べ、その後帰る。手土産無しでは、帰りにくいな。


 確かに地面から、人が生えた。神無も、その目で見た。


「面白いな。飼えないだろうか」


「いや・・どうなんでしょうね」


 無理だろ。流石に、人知を超えすぎだろー。


 おもむろに、神無は砂場に下り立った。特盛も大慌てで斬場刀を取り、追いかける。兵には、待機のままだ。


くだれ。さすれば、コウチの尖兵としての栄誉を授けよう」


「仲間にしてあげる」


「残念だ」


 やはり、おもむろに神無は、斬った。敵は、息絶えた。


「え?こいつら、アカが言ってた奴っすよね」


「だろうな」


「な、なんで。殺せるんです?」


「俺は、二神だぞ。斬れぬ妖魔など無い」


 そうなのだ。伊達に二神、コウチナンバーツー、神族の血統ではない。


 特盛は、己より強いと言う認識でしか無かった神無を、改めて、化け物だと思った。魔王アカ。蹴速と同程度の身体能力を持つ、今の自分では絶対に勝てない化け物。それでも、殺しきれない相手を、一刀両断。


 これが、3名家か!


 アカの感じた感触を、特盛は、無論知らない。だが、アカと戦って、敵が生き残っているなど、有り得ない。アカは、殺したと言ったのだ。ならば。敵は尋常のものではない。


 それを。造作もなく、斬った。


 思っているより、遥かに大きな差が有りそうだ。


 下り立った神無は、砂地を少し歩く。神性の有る自らはともかく、特盛も苦しそうではない。出来れば、アカの居る内、治癒の使える時に、進行したかったが。船の術者で間に合うか。


 そう考えていた時、アカがゲートを開き、帰って来た。


「ただいまー!」


「ただいま、帰りました」


「へい!」


「はい!」


「おお、お帰り」


「ご苦労!聞こう」


 敵、正体不明。だが、倒せるようになった。これ以上に居るのか、不明。地面から生えた以上、奇襲を防ぐのは不可能と思われる。


「なるほどな」


 神無は、即決断した。


「帰還する。アカ、モモ、マシロ、マアカ、それにシロ。皆、ご苦労だったな。必ず報いよう」


 残念だが。兵の屍が増えるだけだ。神無も、夜襲を受ければ、生きていいられる自信は、然程さほど無い。


 撤退する。この地にコウチの旗を掲げるのは、諦める。


「良い、んですか」


 特盛は、別に神無の腹心ではない。だが、上司の同僚で、家族だ。神無が望むなら、無数の砂、全て斬場刀ですり潰す。


「構わん」


ふうう、


 神無は、大きく息を吐いた。


 やはり、敵わぬか。


 有我なら何とか出来た、とは思っていない。流石に無理だろう。しかし、結果を、コウチの撤退と言う結果を残したのは、俺なのだ。


 失敗したのだ、俺は。


「もう、帰るのか」


 シロ、ではない、誰の声だ。


 地面が盛り上がる。幾らでも湧いてくるな。


 白い服。帯剣。


 ・・・・・・その剣は!!


「お前、二神、いや神族か」


「分かるか」


「分からいでか。神砕かみくだき。二神が神化時に使える、唯一の剣」


 だが、それは、今も俺の腰に有る。


 神無は剣を触る。間違い無く、有る。こいつ、何者だ。


「名乗る程の者でもないが。手合わせ願おう。折角会えたんだ」


「2人で、申し訳無いのだけれど」


 女性体も現れた。やはり白い服。違いは有れど、似たような。同じ族か。


 それは、その服は、神無には、見覚えが有った。昔、見た。


「俺は、コウチに歯向かう全てを斬る。二神ふたがみ太郎花たろうばな八郎はちろう神無かんなだ」


「良い心がけだ」


「ええ」


 笑う2人。


 答えないか。


 神無以外の者は、下がる。神無が、1人でやりたがっている。


 アカは、おおよそを理解した。


 踏み込む、全力!


 神無の抜き打ちは、10メートル範囲内の全てを斬り裂く。しかし、受けた!


「ぬう」


「重い。良く鍛えている」


 剣は同じ。ならば、物を言うのは、使い手の技量。


 相手の剣は、速い。重みは神無と同程度としても。


「があっ!」


 神無は、渾身の気合で無理矢理相手に合わせる。しかし相手の剣は、あくまで滑らか。力任せの神無を、容易く弾く。


 神無の力を、簡単に弾くだと。


「何だ、こいつ」


 特盛の知識に、これ程の相手は、中つ国に赴いている神朗だけだ。先代の二神は、死んでいるのだから。


 もしや、一一人の分家とか。まさか。神砕きとか言う剣を使っているのだから、それは無いか。


 女の方は泣いてるし。・・・え。いや、まさか。


「なあ、おい。あれ、まさか」


「うん。神無の父親と母親だね」


 言われてみれば。神無の方が、より鋭いが。


「なんで。死んでるはずだろ」


「さあねえ」


 それは、アカにも分からない。


 分かっているのは、あれが、強かったと言う事。


 かつて、アカ自身が屠った相手なのだから。


「ふん」


 何者か知らぬが。確かに、二神の剣。俺の知らぬ分家が有ったか。


 神無は、両親の戦場を見た事が無い。向かい合っている者が、何者か。分かるはずも無かった。


 笑っている男。舐めた奴。親の顔が見てみたい。


 ただ、戦うための顔つき。二神神無。良く、ここまで成長した。


オ オ


「馬鹿が!」


オ オ オ オ


 両者、神化。先に男が。そして、1対1で神化を使う馬鹿に合わせて神無も。


 アカは特盛を抱え、モモはマシロとマアカを抱え、船に飛んだ。


 今の神無は、あるいは蹴速と同程度に動いてしまう。


ご!!


 剣が、一度打ち合っただけ。それで、50メートル半径の大地がえぐれ、海水が流入してくる。


があ!!!


 神無の剣閃、横薙よこなぎ!地平の彼方、目に見えぬ距離まで、何もかもを斬り裂く一線。しかし、敵は、避けている。


 そして、敵からの縦斬り。避ければ、船が真っ二つだ。


 正面、真っ向勝負!縦斬りを縦斬りで止める!


 斬り合いの衝撃で、船が大きく揺さぶられる。


「おいおいおいおい!・・・尻尾巻いて逃げるぞ!神無さんは、後でボートで拾う!出せ!!」


 特盛の指揮で、船団は後退する。特盛は、別に指揮権など持っていないが、3名家直属扱いだったので、指示に従ってしまった。これは、特盛が自由行動を許されていたのも大きい。


 特盛が動かしたか。頼もしいものよ。


 神無は、周囲の情報を意識的にでなく拾っている。どの程度の力で踏み込むと、地面が陥没するのか。目前の相手は、呼吸が乱れているか、いないか。この湿度で、剣をどれだけ振れば竜巻が起こるか。


 今の神無が見えないものは、無い。


 敵、腕部上昇、振り下ろしが来る。その前にこちらの切り上げを、腹に食らわせる。


 どちらも外れた。振り下ろしは、神無の真横を斬り、切り上げは敵を掠めつつ天を斬った。


 その閃風で、またも大地はり減り、大風おおかぜが砂地を巻き上げた。


 強い。こうも、俺とやり合うとは。有我が殺した中つ国神族会議の生き残りか?


 思考の合間の剣撃にも、丁寧に打ち合わされる。読まれているのか。神化状態の、俺の剣が。


 女が泣いている。


 敵が、常に背にかばっているようだが。


 舐めた話だ。俺との戦闘が、お守りの片手間とは。


 神無は、その女を狙わない。狙えば、恐らく、容易く勝てる。だが、其処には、二神の道は無い。


 二神は、コウチの敵全てを切り払う。目の前の男を置いて、敵していない女を狙うなど。有り得ん。


 男は、見極めた。


 そして、集中する。


カ ア ア ア ア ア


「ぬ う 」


 神無も応える。全集中、全力。殺す。


 男は、喜んでいた。


 斬り開く。この世界を、未来を。目前の娘は、間違い無く二神だと知った。


 神無の敵は、消え失せた。だが、神砕きが。


「どうなった!?」


「神無が勝った。でも、剣は折れちゃったよ」


「そ、そうか。・・でも、命が有れば。良かった」


 神化は、まだ数分は行ける。女は、まだ生きている。


「大きくなったのね」


「なんだ。誰だ、お前は」


 神無は、後ずさった。触れては、いけない気がした。敵、の感覚ではない。なんだ、俺は、こいつを、知っているのか。


「お前は、なんだ!!」


「私は、あなたの敵。あなたは、二神。なら、どうすれば良いか。分かるでしょう」


 神無は、唇を震わせながら、女を斬った。今の神無の斬撃なら、人体如き、真っ二つではなく消滅させてしまう。


 なんなのだ、こいつは!


 変な感じだ。この、暖かさは、何だ。何者なのだ。


 死は、平等に訪れ、平等に奪う。神無が奪ったものも、奪われたものも、決して戻りはしない。3名家の人間は、それを知り尽くしている。


 だから、神無には、親が戻って来た等と言う、妄想を想像出来る余地は、無かった。


 死ねば、終わるのだ。


「ぐ、う」


 神化が、切れた。膝を着く。


 神砕きが、折れた。俺も、恐らく戦が終わるまで、戦えない。


 終わった。


 特盛が、ボートを漕いでやって来る。神無を引き上げに。


「大丈夫ですか!」


 ボートを付け、特盛が駆けてくる。


「・・・ああ」


 敵は斬った。そして、生き残った。これが、大丈夫でなくて、何なのだ。


 だから、泣くな、俺。


 神無は、顔を伏せず隠しもせず、泣いていた。


 怪我で、二神が泣くわけが無い。神無さんは、どうしたんだ?


「特盛。すまんな」


「はい。いえ。全然オッケーです」


 特盛は、良く分からない返答をし、分からないなりに、神無を抱き上げ、ボートへ移す。


 ボートを船に向かい漕ぎ出し、陸を見る。先程、神無を抱いた際も見たが。何か、天災でも起きたような荒れ様だった。


 斬場刀で、同じ事が出来たか?いや、おれに。出来るのか?


 船はコウチへ帰る。魔神に褒めてもらうモモ、アカに付きまとうマアカ、マシロ、気の抜けた神無、神無を見る特盛。皆で帰る。


 死人の国。死者の楽園。生者の行き着く先。様々な呼ばれ方をする、その地から。

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