東奇譚。
東には、魔獣が居なかった。
「あれえ?」
「ふむ」
魔獣が、と言ったが。正確に言おう。動物も植物も、無い。大きな砂原だ。
「サソリでも居るかどうか、だな」
「居れば、生き物が住める。居なければ」
「ヤバい。撤退した方が良かろう」
3名家、有我、神無、梅には地球上の知識が有る。砂漠とは言え、全く無生物の土地など、滅多に無い。有るとすれば、管理された人工の砂場。もしくは、毒性の超強い場所。どちらも、危険だ。
先発として、アカ、マアカ、マシロを出す。
「死ににくいから選ばれたわけだけど。無理はしないように!」
「はい!」
「はい!」
「良し!」
このメンバーだけでも、コウチ以外のダイコウチは平らげる事が出来る。決して弱くはないが。数は力だ。数万の術者が命をかければ、アカでも大ダメージを負う。かも知れない。そんな人数、ダイコウチ全てからかき集めても、居ないのだが。
3人は、飛びながら偵察。アカが高空。マアカが真ん中。マシロが低空。
マシロは戯れに、地面に魔力を撃ち込んでみたり。竜が生まれるかと、アカは心配したが、そんな事もなかった。竜が居たのか、生まれたのか、区別を付けるのは難しい。良かった。
さて。1時間飛んできたが、まだ動物も植物も目にしていない。これは、一体。
通常、船に飛んできたように、鳥が色々運んだりする。どうしても、植物くらい生えているはずだ。そして、虫も。鳥の死骸でも有れば、必ず生まれるはずなのだが。
おかしい。
そろそろ帰り、神無に報告を。このまま進むのは、不気味だ。
「何か、居る!」
中空を飛んでいたマアカの報告。
アカは、見た。
人間・・・?
「どうしましょう」
「話を聞こう」
アカの先導。マアカとマシロを後に付かせる。
人間、1人。手前に降り立ち、挨拶。
「こんにちわ!君は誰?」
「こんにちわ。僕は、民」
「民?仲間は居る?」
「居るよ。遠くに」
「ふうん。連れてってあげようか」
「ううん。君こそ、連れてってあげようか?」
人間とアカの周囲の地面から、人が生えてきた。人はアカを掴み、連れ去る。移動手段は、同じく地面から生えた、馬。
それなりの速度で、走り去った。
そしてぽつねんと、その場に留まっている2人。
「どうしよっか」
「うーん」
マアカは、まさか母が、無力にも連れ去られた等とは思っていない。思惑有っての事だろう。マシロは、最も自分が輝く解決策を考えていた。同じく、アカが敵わない敵だとは、一切思っていない。囮にでもなったのかな。
アカは、以前、連れ去られてくれ、と神無に言われた事を覚えていた。あの時は、読心によって、そんな面倒な事はしなくて済んだ。だが、今回の相手は、読めない。視えない。仕方ないなあ。
打ち合わせをせず、ついて行ったが、子供達は神無に連絡するだろうか。それとも、2人で助けに来るだろうか。
前なら、自分が大活躍して、神無に蹴速に褒められるのが嬉しかった。でも、今は。あの子達が、どう動くか。どんなに頑張るか、が、すごく気になる。楽しい。面白い。これが、子を持つ、と言う感覚なのか。
アカは、ある程度の広さで探査を行っていた。だが、反応が無い。ずっと思っていたのだが。この土地、魔力が、無い。まるで、地球のようだ。
およそ、この世は、竜が巡る。それに付いて、魔力も巡る。どんなに大地が枯れようと、竜が、海竜が、恵みをもたらしてくれる。
ならば、この地は、この世から切り離されているのか。
また、大げさな話になってきたなー。
アカは、首謀者とその周囲を捕えて、とっとと終わらせようと決めた。長話は、家族とだけしたい。
帰って来ない。
1時間経過し、2時間経ち。
「何かを、見つけたんでしょうか」
「恐らく。1時間で折り返し。2時間経過した今、船に戻っていなければ、おかしい。調査に入ったのかも知れん」
「ええ」
神無と特盛の話。さて。果報は寝て待つか。アカが居れば、どうとでもするだろう。
モモとシロは、まだまだティーパーティーを楽しんでいた。
「これもどうぞ!」
「おお!」
モモが次々と生み出す、自らの技巧、祝寝からの教え、クロの初三千世界の知恵、それらの集大成たる飲み物に茶菓子。
「美味い!」
「嬉しいです!」
ここだけ、幸せ時間であった。
コトリ
「ん?」
何も無い宙空から、小石。船の上に、小石だと。
手に取った特盛は、詳細に観察する。
へんなのいたよ。調べる。帰りはおそくなるかも。マアカとマシロには、伝えれてない。おれのお菓子は食べないでおいてください。
「神無さん」
「なんだ?」
「見てください」
神無は見た。石ころ表面に刻まれた、大事な情報と欲望ダダ漏れの内容。間違い無くアカによるものだ。ゲートで、石ころだけを運んだか。やるな。
「これは、アカの功績だな」
「ええ。おれ達は、どうします」
「待機だ。アカは自由に動けるようだ。連絡を待つ」
「了解です」
兵には、船の周囲の監視を密にさせる。ただし、上陸はさせない。
アカから助けを求める声が有った場合は、砂場を全て掘り起こしてでも助ける。神化を使えば、出来る。
シロは、見守っている。




