暗黒大陸上陸。
恐らく、最大の征服。暗黒大陸と東。
暗黒大陸行きのメンバーは。有我、キ、マキ、獣沓、合沓、初三千世界、続三千世界、ジン。
東行きは、神無、アカ、マアカ、モモ、特盛、シロ、マシロ。
家の待機メンバーは、蹴速、梅、海鶴、己黄、超騎士、身重の人間全員、クロ、マクロ、アオミドリ、マオミドリ、亜意。
どちらのチームにも、1人でどうとでも出来る戦力を持たせた。家には蹴速を残す。
神無の目論見としては、有我より早く征服を完了する。実務に於いて、梅に次ぐ実力であると証明して見せよう。
今度は、遠征に特盛も連れて行ってもらえる。
必ず、実力を出す。己の、全てを。有我に、梅に、皆に今まで面倒を見てもらっていたのは、使える者なのだと、思って欲しい。
モモも行く。ずっと戦いから遠ざかっていた。カンを取り戻さなくては。
悲しいのも辛いのも、嫌だ。だけれど。幼子達を見た。この腕の中に、抱いてもみた。あの柔らかさを失うのは、もっと嫌だ。
守る。魔王の力が有るのだ。戦えるはず。
魔王アカは、誇りを燃やしていた。魔神シロ、にではなく、大魔王を名乗る初三千世界に歯が立たなかった。そして、仲間たるモモを矢面に立たせてしまった。
相手が蹴速なら、魔神なら、譲りもしよう。だが、大魔王、だと。
そんなものに、負けっぱなしで、いられるか!
シロは船上で酒を傾けながら、色々な声を聞いていた。読心によって。
面白い。アカに、複雑な思考回路を、持たせたつもりはなかった。モモの、戦闘を求める心も予定外。
これは、面白い。
分からぬものよ。
我が子、マシロにしても。予想より伸びが悪い。今の時点で、既に蹴速を超えていると予想していたが。
それでも、孤動する命。蹴速を、我を超えずとも、何かを心待ちにしてしまう。自らより、弱き者に、期待する。それは、いつぞやの邪神であり、邪神に横取りされた龍であった。己黄は、これから長き長き年月を費やせば、と言った所か。漬物みたいなものだ。祝寝は、何故あの年齢で美味い漬物が作れるのか・・。人間にも、やはり期待出来るものが有るか。
マシロは、想っていた。父、蹴速を。
ただの人間。普通の人間。魔力を感じない、脆弱な存在だろうに、全物最強の母に勝った事が有る。震えてしまう。母には勝てない。魔神の血を継いでいようと、戦う気も起きない。絶対頭オカシイ、お父様。
相応しい、と言う考え方が有る。シロに蹴速。有我に三十鬼。マシロに蹴速。
どうだろう?
シロとしては、より弱い子が生まれるだろうからオススメは出来んなー、と思っていた。だからと言って、その辺の馬の骨にやる気も無いが。
マアカは船上訓練に励んでいた。何やら船員に、蹴速の好きそうな酒、と注文して困らせている魔神を横目に。
お母さんと一緒に戦える。マキもマオミドリも、もうやっている。おれも、ついに初陣だ。ドキドキする。
今、マアカは、飛び跳ねたかった。実際、家を出る時も今も、飛び回っている。
敵影を確認次第、アカに知らせる手はずだが。
飛ぶ鳥を見る。あれは敵かな。どうかなあ。
そうだ、焼き鳥にしよう。それで、向かってきたら敵だ!
賢いマアカは、お腹を膨らませて、満足だった。
うーむ。
特盛は、一部始終を見ていた。それなりの大きさの鳥。特盛も船員を守ろうと動いていたが。マアカが片付けた。
どうなんだ。マアカは、あれで良いのか。危険じゃないのか。
「おい」
「大丈夫。多分ね」
「そりゃ、本当にただの子供ってわけじゃねえけどよ。実戦経験は、おれ以下だぞ」
「おれ達も、ああだった。魔神様の命令は有った。でも、基本的には、皆、好き勝手やってたよ。マアカも、それで良い」
「ふうん」
魔王流の育て方か。分かんね。分かんねえけど、目の前なら、助けられる。東行きの間は、さり気なく近くに居よう。
アカは、何となく特盛を読心していた。
ありがとう。
「稽古。見てあげよっか」
「ん?良いのか。おれは嬉しいけど、梅さんに気ぃ使ってんのか」
「んーん。特盛君も強くなったら、おれの遊び相手になれるでしょ」
「へっ。いつか。お前より強くなってやる」
「良いね」
盛り上がっている親達に、子供なんだから、と、祝寝の真似をするマアカだった。
「初三千世界!海中で船を守れ!続三千世界は船上を見ていろ!」
「はーい!」
こくり
笑顔で答える初三千世界と、頷く続三千世界。
戦場であった。
それは暗黒大陸に乗り込むと同時。
「マキ、おれから離れるな」
「はい。しかし、騒がしい土地ですね」
「ああ。前は、ここまででもなかったがな」
「おっかしいよねえ」
キとジンは来た事が有る。だが、覚えの無い事態。
魔獣が、大挙して押し寄せてくる。
船には、アインシェンの海兵とヤマト下位ナンバーも乗り込んでいる。生半な相手ならば、造作も無く屠れるが、油断はしたくない。
「化け物だな」
「どちらが?」
「無論、コウチだ」
ヤマトのナンバー。二十七巻数不津鳴と、数名。下位ナンバーと言えど、有我と遠くない実力者達。豪火戦艦邪馬刀を駆って暗黒大陸征服に供している。
初三千世界とか言う者。敵の攻撃を避けない。にも関わらず、傷付かない。それを使いこなす一一人。
獣沓は子と共に、斬場刀を積み込める船に居た。この事態は、全く想定していなかったわけではない。
賢獣シーラ。彼女が、何かしたのか。もしや、兆獣王に知恵を貸した・・・。シーラの事は有我にも伝えてある。知己ゆえ、そして利用価値ゆえに飼い殺しを勧めたが。これは、普通に殺されるかも。
「母よ。おれ達は、どう動く」
「動かない。有我様の御命令有るまでは」
「なるほど」
貨物船に近付く魔獣を狩って行く。続三千世界がある程度は掃除しているが、流石に全ての船はカバーしきれないようだ。だが、有我からの指示はまだ無い。
有我は、獣沓が泳げるのを知っている。だが、海中に入れば、初三千世界に同士討ちされるかも。
判断。
「二十七巻数。ナンバーを各船に散らして守れる?」
「自信は有ります。見る所、フ・ズィの魔獣と然程の差は有りませぬ。我らならば、行けます」
「良し。無理はするな。死ねば、守り手が減る。行け!」
「承知!行くぞ!!」
此処で働くはヤマトのためであり、ナンバーの証明。不津鳴以下は、船から船へ飛び移った。その幅は数十メートルだが、その程度飛べぬ者は居ない。
「獣沓、合沓は動けるね?上陸するよ」
「はい。行けます」
「分かりました」
有我は獣沓を先導し、波間を蹴立てた。陸上で引き付け、皆殺す。
「獣沓、吼えろ」
おおおおおおおおん
魔獣と言う魔獣が寄り集まってくる。
そして斬るは、一一人。
ジンは、有我を見ていた。流石に強い。今の所、ジンは自分の役を果たしていた。待機。絶対的な火力であるジンは、使いどころを間違えなければ、戦況をどうとでもひっくり返せる。だが、適当に使えば、通常戦力でしかない。故に有我は、ジンに待機命令を与えていた。キ、マキと共に。
キは、既に全兵に「合力」を与えていた。そして戦況を伺う。今の所、マキを出しても構わない程度の魔獣しか出ていない。兆獣王とか言うもの。それがどのレベルなのか、で話が変わる。兆獣王以下の魔獣しか、居ないはずなのだから。
賢獣シーラ。かつて怪物が現れた時、魔獣を取りまとめ結束させた立役者。その者が知恵を貸しているか。
有我は、そろそろだと思った。
魔獣が、引いていく。
現れた強者。
そう。ザコの群れで疲れさせ、トドメ。正攻法だ。
だから読める。この強敵は、倒される前提ではない。即ち、倒しさえすれば敵は総崩れ。簡単な話だ。
「君が兆獣王?」
返事は、攻撃だった。
速い!
爪の襲撃を受けた有我の剣が、毀れた。
「ほう」
特盛との稽古で使っているものでは、ない。正真正銘、一一人が戦場に持って行く剣だ。それを、一合で。
分け身。だが、
見極められた。またも剣で受ける。そして、毀れる。
やれやれ。
この剣は、量産が効かない。もったいないなあ。全く。
オ
有我の発する気迫に、応える兆獣王。
「君がこの世の何者であっても。良いよ、君」
殺してあげよう。
すらり
腰の後ろに回してあった、予備を取り出す。これで両手に1本ずつ。
ご
有我の踏み込みの音、それが大気に発生する前に、剣と爪は噛み合った。
有我の連続突き。2秒に63度突き、内5度が兆獣王を穿った。兆獣王の爪は、有我を数度掠めた。だが、左手の剣によって有我の体に触れる事は無かった。
兆獣王。獣沓の倍はある、大型魔獣。にも関わらず速く、強い。有我の斬った傷が、もう塞がっていく。恐らく、魔力により自己治癒速度も速い。
本当に面倒だなあ。
有我は、2刀を収めた。そして、新しく取り出す。
紅い刀身。
「感謝して欲しいね。魔神にも使わなかった剣なんだよ」
あの時は、強度を優先した。ために、振るっていたのは開山登花だった。折れる事なく、保ってくれた。
有我は速さに任せて、回り込む、と見せて、正面から入った。
兆獣王の爪を躱し、腹を斬る。どうにも内臓までは到達していないようだが。
治癒が、始まらない。
兆獣王は、腹を触って、不思議がっている。
気付いているのか。賢い。直ぐに終わらせた方が良いな。
有我は、最後の剣を取り出し、受けにも気を配りつつ、紅い剣で斬って行った。出血が止まらない兆獣王は、20分で倒れた。
倒れた兆獣王の首を、最後の剣で斬り落とす。これで、間違い無く死んだ。
有我は、地力が上がったのを感じた。
強かった。素手、生身だったら、勝てなかった。
今回使った剣のメーカーには、誉れをくれてやろう。
紅い刀身。剣一一人薄紅。刀身の元から魔力加工を積み重ね、魔力そのものを斬る目的で造られた、コウチ対魔族用最強剣。人材と時間を消費し過ぎるので、一一人にも2本しかない。
最後の剣。原天河。特殊な性能は無い。ただ、使える剣。無名のメーカー製だが、試し斬りに合格した新星だ。これからが楽しみ。
最初の剣。剣一一人。ただ強く硬く、そして斬れる。それだけを目指して造った、一一人お抱えの剣。やはり製造に時間がかかるのが難点。数はそこまでない。
2本目。川静か。空気を斬り裂く、ではなく、溶け込むようにして敵、懐に飛び込む剣。剛性はそれほどない、代わりに軽く薄く、速い剣。
一応、船には積み込んで置いた、黄金虫、蛇、甘栗渋皮などの出番は無さそうだ。剣一一人 青鏡は出さなくて正解だろう。下手をすれば折られている。
さあ、全滅させよう。
獣沓を呼び寄せ、合沓と共に船に帰る。マキの実戦経験を増やす機会にして良い。そしてジンには、逃走する魔獣の追撃をお願い。キは、賢獣シーラの居所が分かるか、試してもらう。
「シーラは、同じ場所には居ないでしょう。バレていますから」
「うむ。居場所を知っている魔獣も、居なさそうだ」
「ふむ」
どうする。生かしておくと、面倒な事になりそうだが。
「帰って、歯牙に視てもらおうか」
「有我が、それで良いなら、良いんじゃない?おれ達も、また来れば良いし」
「うん。今回は、目に付く魔獣を殺すだけで帰ろうか」
初三千世界にキが協力しに行く。マキも一緒に。水中での動きもまた訓練。船上の続三千世界は、ヤマトのナンバーの動きを見習っていた。生まれ持った肉体能力は、化け物だが、技能は無いのだ。
3日。近隣の魔獣を殺し尽くした後で、総員で帰還。
暗黒大陸を征服するに当たり、どうやら住む必要が有る。さて、どうする。徐々に侵略し、人間の住める土地を増やしていくしかない。
だが、3名家を離すのは。
話し合いが、必要だ。




